2023.0919

教育改革調査~3ポリシーに基づく「教育の質向上」 の取り組みは不十分

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3行でわかるこの記事のポイント

●教育目標とカリキュラムの整合性を検証する全学委員会設置は半数以下
●学生の成長実感など、情報公表により積極的な姿勢が求められている
●独自の取り組みで先を行く大学も

文部科学省はこのほど、2021年度の大学教育の改革状況に関する調査結果を発表した。3つのポリシーに基づく教育の質向上の取り組みと、社会に対する情報公表について、「取り組みが十分とは言えない」との見解を示している。
*調査結果はこちら
*記事中のグラフは文科省の発表資料から引用


●ナンバリング、ルーブリックは取り組みが進展

文科省による大学教育改革に関する調査は毎年実施されている。2021年度は国公私立793大学を対象に、2022年10月から2023年1月にかけて実施。775大学から回答を得た(回答率98%)。
文科省は調査結果の総括で「全国的にはまだ普及していないが、進展があった事項」として、次の3つを挙げた。

◎ナンバリングの実施
2017年度:48%→2021年度:72%
◎ルーブリックによる成績評価基準の明示
2017年度:21%→2021年度:32%
◎教員の業績評価としてティーチング・ポートフォリオを導入
2017年度:26%→2021年度:38%

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●3ポリシー達成状況の点検・評価は9割でもなお「不十分」

大学教育を通して育成すべき力を学生が確実に身に付ける「学修者本位の教育」を実現するためには、3つのポリシー(アドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシー)に基づく全学的なカリキュラム・マネジメントが求められる。
今回の調査では、これがまだ道半ばであることが示された。文科省は「十分とは言えない状況」「各大学における具体的な取り組みのさらなる進展が必要」と指摘。その根拠として挙げるのは次の項目だ。

◎3つのポリシーの達成状況を点検・評価している大学は89%
◎3つのポリシーに基づく教育の成果を点検・評価するための、学位を与える課程共通の考え方や尺度を策定している大学は68%
◎学修状況の分析や教育改善を支援する体制を構築している大学は63%
◎全学的な教育目標等とカリキュラムの整合性を検証する全学的な委員会を設置している大学は約46%

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●学修時間、教員一人当たりの学生数の公表にも課題

文科省は今回の調査結果から、大学の情報公表も不十分との問題意識を持っている。具体的に挙げたのは次の項目。

◎学生の学修時間を公表している大学は51%
◎大学の教育研究活動を通じた学生の成長実感を公表している大学は39%
◎教員一人当たりの学生数を公表している大学は64%

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●鎌倉女子大学は学修時間、成長実感などをサイトで公表

文科省が全体として「不十分」と指摘する項目について、力を入れて取り組んでいる大学もある。

「学修状況の分析や教育改善を支援する体制を構築している大学」の例としては、山形大学が挙げられる。同大学の「OIREOffice of Institutional Research & Effectiveness)」はデータの収集・分析に基づく諸活動の効果検証等の情報を大学コミュニティに提供。継続的な教育改善とデータに基づく意思決定を支援し、内部質保証のPDCAを回す。

関西大学の「教学IRプロジェクト」は「全学的な教育目標等とカリキュラムの整合性を検証する全学的な委員会」にあたる。副学長をトップに入試、教務、キャリア支援等からメンバーが参加する部局横断型の教職協働組織だ。同プロジェクトはDPの達成度を検証するための学生調査を2014年に開始。全学共通でDPを測定できる指標として5つの力(考動力コンピテンシー)を抽出する際も、中心的な役割を担った。学生調査では、この5つの力に関する設問でDP の達成度を測っている。

「情報公表に力を入れている」大学の1つとしては鎌倉女子大学が挙げられる。学生を対象に実施する「学修環境・行動調査」を基に、学修時間や大学満足度、成長実感などのデータをウェブサイトで公表している。学修時間については、「授業への出席」「予習・復習・課題」「自主的な学び」などに分け、さらに「クラブ・同好会・サークル活動」「アルバイト」などにかける時間も示し、学生生活をより具体的にイメージできる情報を提供している。

千葉経済大学は2021年度から「学生の学修時間・学修行動の把握に関する実態調査」を実施。全国調査との比較を基に、自学の学生の特徴を分析した「外部報告用」の資料をウェブサイトに掲載している。   

※「学修者本位」については、『Between』本誌No.310(11月下旬発行)で取り上げる予定です。