2022.0711

ベネッセ入試結果調査②私大の合格率は入定厳格化前より上昇

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3行でわかるこの記事のポイント

●コロナ禍、新入試への移行による影響がやわらぐ
●一般方式、共通テスト利用方式とも合格者が増加
●次年度入試と新課程入試、両方をにらんだ募集戦略を

ベネッセコーポレーションが独自に収集したデータや情報に基づく2022年度入試結果シリーズ、2回目は私立大学の一般選抜を取り上げる。文系を中心に合格率の上昇が顕著で、入学定員管理厳格化以前と比べても「入りやすい入試」となっている。

*各データは、特にことわりがない限りベネッセの調査によるもので、大学の公表数値を基にしたデータは5月中旬までに収集・確認できた情報を反映している。
*各データはベネッセの分類・集計によるもので、各大学が公表している数値とは異なる場合がある。
ベネッセ入試結果調査①現役生中心で競争緩和の傾向が続く(Between情報サイト)
ベネッセ入試結果調査③私大は学校推薦型、総合型とも合格者が1割増(Between情報サイト)


●志願者は前年より増えたが2018年度を基準にした指数は87

 2022年度入試における私立大学の志願者数は287万4782人で、対前年指数は101となった。2020年度、2021年度と2年連続で志願者が減少したが、今回は前年を上回った。ただし、2018年度を100とした指数は87にとどまっている。

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 一方、合格者数は一般方式、共通テスト利用方式ともに増加し、実質倍率が低下している。

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●観光、国際関係で志願者増だがコロナ禍前の水準には戻らず

 文理別の志願者数を見ると、文系はほぼ前年並み。理系は数年来の増加傾向から2021年度は一転して大きく落ち込んだが、今回は2017年度と同程度まで回復した。

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 学問系統別では法、国際関係、歯、薬、工、農・水産の各系統で志願者数の増加が目立つ。

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 以下、いくつかの学問系統の志願動向を見ていく。
 法学系統は前年度まで2年連続で志願者が減少したが、2022年度入試では増加に転じた。

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 経済・経営・商学系統と社会学系統は志願者減が続いている。社会学系統の中でも、コロナ禍の影響で2021年度入試の志願者が大きく減った観光学系統は今回、増加したが、コロナ禍前の水準には戻っていない。

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 国際関係学系統、語学系統もコロナ禍の影響を受けて2年連続で志願者が大きく減少したが、国際関係学系統は今回、回復。ただし、こちらもコロナ禍前の水準には戻っていない。

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 減少が続いていた薬学系統の志願者は2022年度入試で増加に転じた。新型コロナウイルスのワクチン開発に関連して製薬に対する関心が高まったことも要因として考えられるが、次年度以降も志願者数が回復していくのか、注目される。

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 学部の新設・改組が続いている情報関連系統(各学問系統から抽出)のうち、情報工学の分野では志願者が大きく増え続けている。

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●「早慶上理」の理系は入定厳格化による難易度の変動が小さい

 共通テスト模試のデータに基づく各大学群の偏差値帯別合格状況を見ると、全体として、入学定員管理厳格化の下での合格者絞り込みが始まる前よりも合格率が上がっていることがわかる。
 以下、各大学群の文系について見ていく。
 「早慶上理」の2022年度入試の合格率は、一般方式では2021年度とほぼ同程度だったが、共通テスト利用方式では2021年度より上昇。偏差値65~70の層の合格率は、入定厳格化の影響が強く表れた2019年度入試では23%だったが、2022年度は36%まで上がっている。

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 「MARCH」は一般方式、共通テスト利用方式ともにほとんどの偏差値帯で合格率が上昇し、2016年度を上回っている。

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 「日東駒専」もほぼ同様の傾向だ。

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 「関関同立」の2022年度入試の合格率は、一般方式では2016年度を大きく上回り、共通テスト利用方式ではおおむね2016年度と同程度までの上昇になっている。

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 「産近甲龍」では一般方式、共通テスト利用方式ともに、2022年度入試の合格率が2016年度を上回っている。

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 理系では、「早慶上理」と「関関同立」は入定厳格化による難易度の変動が小さく、文系とは異なる傾向にある。「産近甲龍」は2021年度入試で合格率が大きく上昇したこともあり2022年度はやや低下したが、2020年度以前に比べると著しく上昇。「MARCH」「日東駒専」は、おおむね文系と同様の傾向にある。

●2025年度新課程入試では再び受験生の動きが変化か

 前回取り上げた全体状況、国公立大学の状況と合わせ、2022年度入試の一般選抜についてまとめると、①コロナ禍と新入試への移行による強い安全志向、出願校数絞り込み等の傾向は一定程度やわらいだが、コロナ禍前の状態には戻っていない、②全体として競争が緩和され、受験生から見ると大学に入りやすくなっている、ということが言える。
 現在の高校1年生が受験する2025年度入試は新教育課程の下で実施され、受験生の動きが再び大きく変化しそうだ。各大学には、直近の2023年度入試と2025年度以降の入試の両方をにらんだ募集戦略が求められる。