ベネッセ入試結果調査①現役生中心で競争緩和の傾向が続く
学生募集・高大接続
2022.0705
学生募集・高大接続
3行でわかるこの記事のポイント
●既卒生の共通テスト志願者数は2年連続で過去最少
●共通テストの平均点ダウンで高校教員の26%が「生徒が第1志望断念」と回答
●難関国立大学の志願者数は回復、2020年度を上回った
ベネッセコーポレーションは全国の大学と高校の協力の下、2022年度入試の結果をまとめた。ベネッセ教育情報センターの分析に基づき、3回に分けて入試結果を報告する。初回は全体状況と国公立大学の一般選抜を取り上げる。
*各データは、特にことわりがない限りベネッセの調査によるもので、大学の公表数値を基にしたデータは5月中旬までに収集・確認できた情報を反映している。
*各データはベネッセの分類・集計によるもので、各大学が公表している数値とは異なる場合がある。
*ベネッセ入試結果調査②私大の合格率は入定厳格化前より上昇(Between情報サイト)
*ベネッセ入試結果調査③私大は学校推薦型、総合型とも合格者が1割増(Between情報サイト)
まず、学生募集市場の規模を表す18歳人口を見ておく。2022年度の18歳人口は約112万人で対前年指数は98.1。現在の高校2年生が受験する2024年度には107万人まで減少する。既卒生も減少し、入試の競争緩和がさらに進むと予想される。
2022年度の大学入学共通テスト志願者数は53万367人で、前年から4878人減少した。減少した人数のうち4222人が既卒生だ。共通テスト導入初年度の2021年度、既卒生の志願者数は2割の大幅減で、2022年度にかけて2年連続で過去最少になった。新課程入試初年度の2025年度も既卒生の減少が見込まれ、現役生中心の入試になっていくと予想される。
一方で2022年度入試の共通テスト受験者数は48万8384人で、前年から4270人増えた。2021年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で受験率が大きく下がったが、今回は受験率が92.1%に回復。ただし、コロナ禍前と比較すると依然、受験率は低い状況だ。
共通テストの平均点(ベネッセと駿台予備学校によるデータネット実行委員会が予想)は、文系型(5教科8科目)で前年より44点低い508点、理系型(5教科7科目)は前年より59点低い513点で、センター試験時代を含め、低い水準となった。
ベネッセが2022年3月、全国900校以上の高校を対象に実施した調査によると、共通テストの平均点低下によって、受験生には「志望変更先の検討に時間がかかった」(34%)、「可能性はあるのに第1志望をあきらめた(あきらめそうになった)」(26%)などの影響が出た。
ベネッセは2022年度入試について、全国3771の高校から49万7947人分の出願・合否結果の情報提供を受け、集約。進研模試データを加え、個人を特定できない形で分析した。ベネッセグループが集めた各大学の志願者データや次年度入試の変更点等の情報も加え、志望校選びの参考にしてもらうため高校に還元している。ここからは、これらの情報に基づき、国公立大学の一般選抜の動向を中心に紹介する。
2022年度入試における国公立大学全体の一般選抜の志願者数は42万8657人で、対前年指数は101。国立大学だけで見ると、志願者数は30万2953人で指数は102だった。
国立大学の志願者数は、数学・理科が先行して現行課程で実施された2015年度入試から減少が続き、共通テスト導入の前年から当年にかけては大幅減に。2022年度は共通テスト導入による安全志向が緩和されて増加に転じた。ただし、2014年度を100とした指数は86にとどまっている。
国公立大学を大学群別に見ると、難関国立10大学、ブロック大学は前年から志願者数が増加し、その他の国公立大学は前年並みとなった。難関国立10大学は大きく減った2021年度からの揺り戻しが大きく、2020年度を上回った。大幅減の2021年度入試と同程度にとどまった私立大学とは対照的に、難関国立大学は志願者を確保できたと言えそうだ。
*「難関国立10大」は北海道、東北、東京、東京工業、一橋、名古屋、京都、大阪、神戸、九州の10大学。
*「ブロック大」は筑波、千葉、横浜国立、新潟、金沢、岡山、広島、熊本、東京都立、大阪公立の10大学。
2022年度も国公立大学の後期日程の欠席率が上昇し、過去最高に。出願者のうち実際に受験するのは4割未満だ。年内入試を含め、合格した私立大学への進学を早々に決めて国公立大学は受験しないというケースが増えていると推測される。
こうした状況の下、国立大学の間で後期日程を縮小する動きが続いている。2023年度入試では岡山大学が全学で後期日程(2022年度の募集人員175人)を廃止。中四国、関西エリアの国公立大学志望者の併願戦略に影響を与えそうだ。
現役生の合格者数や入学者数を公表している大学のデータを見ると、前年に続いて合格者・入学者に占める現役生の割合が上昇しているケースが目立つ。