2022.0322

「デジタル×専門分野」のDX人材育成事業の採択39校が決まる

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●大学は国立18校、公立2校、私立11校を採択
●多彩な分野の中、特に農林水産関係が目立つ
●審査では教学マネジメント体制の整備を重視

文部科学省はこのほど、大学等を対象とするDX人材育成事業の採択校39校を発表した。採択校は製造、防災、環境、農、食、流通、福祉などの幅広い分野で、産業界等と連携しながら「デジタル×専門分野」の高度専門人材の育成に取り組む。
*図表は文科省の資料から引用
*発表資料はこちら


●採択校は「産業分野のニーズをふまえ、人材養成像が明確」

 文部科学省の「デジタルと専門分野の掛け合わせによる産業DXをけん引する高度専門人材育成事業」は、社会のデジタル化に対応できる資質・能力を学生に修得させ、産業の高付加価値化をリードできる人材を育成することがねらい。専門分野におけるデジタル技術の活用や専門分野特有のデータ収集・分析など、「デジタル×専門分野」を実践するカリキュラムの開発、実験・実習の高度化を促すため、DX設備等、基盤となる教育環境の整備を支援する。2021年度補正予算で46億円が計上された。
 2021年12月から2022年1月にかけて募集し、99件の申請を受け付けた。採択された39件のうち、大学は国立18校、公立2校、私立11校。

saitakuhyo.png

 選考では、全学的な取り組みを前提とした教学マネジメント体制の整備を重視。取り組みの具体的な内容と実現可能性、産業界等との連携、達成目標とその検証などについて審査した。
 審査にあたった事業委員会の所見では、採択された取り組みについて「いずれも産業分野のニーズをふまえ、人材養成像が明確」「単なるDX教育設備の導入にとどまらず、デジタルと専門分野を掛け合わせた教育カリキュラムの高度化につながる」と評している。

●新潟県立大学は「デジタル×食」の実践的スキルを養成

 採択校の取り組みを見ると製造、建築、防災、インフラ、環境といった工学分野のみならず、ビジネスや食、流通、福祉など多彩な分野にわたり、特に農林水産関係が目立つ。
 新潟県立大学(新潟市)は「デジタルと食品の高付加価値化・消費者購買行動分析の掛け合わせによる高度専門人材育成教育プログラム」で採択された。新潟県特有の雪室で貯蔵・熟成される食材や食品の味、形状、成分等の変化をIoTセンサーでデジタル化。一方、食品の価格や品質への反応等の消費者情報もデジタル技術を使って収集する。これらのデータを分析し、食品の高付加価値化につなげる実践的スキルを養成する。
 東日本国際大学(福島県いわき市)は「地域の介護福祉DXを推進できる人材育成プラットフォームの構築(生体計測・ロボット・VR/ARの導入と高度活用)」で採択された。ロボットを利用した介護の高度化が求められながら、機材の導入・活用ができる人材が不足している現状の打開をめざす。経験を通じたOJT的な側面が強かった介護現場での身体の使い方について、最新の生体指標測定技術(アイトラッキング、筋電図測定、モーションキャプチャ)を利用してプロセスのDXを図る。ロボットの導入・利用のための教育プログラムのVR/AR化、ロボット研修の高度化などを、地域と連携して進める。
 桜美林大学(東京都町田市)は「来客・店舗データ等を高度に活用する中小規模第三次産業のDX化推進人材養成プログラム」で採択された。ビジネスマネジメント学群では商店街との連携の下、買い物客のアンケート結果、定点カメラが捉えた人流、天気予報等の各種データを組み合わせた来訪者数予測とその分析結果の活用法等について教育してきた。今回の事業ではその実績を生かし、DX教育の普遍化と高度化のための基盤構築、社会人教育プログラムや中小企業支援プログラムの開発を推進。第三次産業での付加価値の高いサービスの提供をめざし、来客・店舗データ等の分析結果の利活用を事業者に促し、ユーザ視点を重視した中小事業者のDX化をけん引できる人材を育成する。


*オンライン動画学習サービス「Udemy Business」の大学向けサービスの紹介はこちら