2021.0929

私大の入学定員充足率は99.8%で初の定員割れ-私学事業団調査

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3行でわかるこの記事のポイント

●定員割れの大学は前年から93校増えて277校に
●18歳人口と既卒生の減少に加え、コロナも影響
●小規模校の未充足傾向が再び強まる

私立学校振興・共済事業団がまとめた2021年度の入学志願動向調査によると、私立大学全体の入学定員充足率は99.8%で、事業団が充足率を算出するようになってから初めて100%を下回った。前年まで4年連続で減っていた定員割れの大学は93校増え、全体に占める割合は15.4ポイント高い46.4%となった。

*調査結果はこちら
*表やグラフはいずれも私学事業団の資料より


●志願倍率は8.9倍→7.7倍、合格率は7ポイント上がり39%

 2021年度入試の対象となった18歳人口は前年から2万6000人減って115万人(対前年指数98)だった。
 私学事業団の調査では私立大学597校(前年から4校増)の入学定員や志願者数、合格者数、入学者数などを集計し、分析している。
 志願者数は前年に続き今回も減少、12.2%の大幅減で383万5000人となった。18歳人口の減少に加え、前年までの安全志向によって既卒生が大きく減ったことも影響している。
 全体の志願倍率は前年の8.9倍から7.7倍に、合格率は6.9ポイント上昇して39.2%、歩留まり率は3.0ポイント下降して34.4%だった。受験生にとって「入りやすい入試」だったことがあらためて裏付けられた。
 全体の入学定員は0.8%の微増で49万5000人、入学者数は1.9%減の49万4000人。入学定員充足率は2.8ポイント下降して99.8%だった。定員割れした大学は184校から277校に。全体に占める割合は31.0%から46.4%、15.4ポイントの大幅増となった。

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●入学定員600人のゾーンで充足と未充足に分かれる

 下のグラフでは入学定員規模による11の区分ごとの入学定員充足率を前年度と比べている。
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 定員充足率が前年並み~微増となったのは最大規模の「3000人以上」とその次の2つの区分のみで、これら以外はすべて下がった。小規模校はここ数年、中規模・大規模校の合格者数絞り込みや受験生の安全志向を受けて充足率が徐々に上昇していたが、今回、軒並み大きく下降。最小規模の「100人未満」は10.1ポイント、「300人以上400人未満」は9.2ポイント下がった。
 99.9%の「3000人以上」を「ほぼ充足」と見なすと、定員600人を境に上の5つの区分が定員充足、下の6つの区分が未充足となっている。

●「京都、大阪、兵庫を除く近畿」は充足率が12ポイントダウン

 下のグラフでは21のエリア別の入学定員充足率を前年度と比べている。

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 充足率がほぼ前年並みとなったのは東京と京都のみで、他の全エリアで下降。中でも近畿(京都、大阪、兵庫を除く)が12.2ポイント、北陸と中国がいずれも9.3ポイントと大きく下がった。
 定員充足したのは北海道、宮城、関東(埼玉、千葉、東京、神奈川を除く)、東京、愛知、大阪、福岡の7エリアで、大都市を抱えるところが中心だ。

●「『上位校から流れてきて充足』の想定もはずれた」

 前年と比べ、志願者が30%、入学者が15%、それぞれ減少して定員割れに転じた地方大学の職員は「マーケットの縮小を痛感した」と話す。「コロナ禍の影響で大学から専門学校にシフトする受験生が多かったと聞いている。本学の場合、外国語系の専攻の募集が特に厳しかった。それでも、最後は上位校から流れてきて埋まると楽観視していた」。ところが、受験生が年内入試へと雪崩を打つ動きをつかむのが遅れ、思惑通りにいかなかったと振り返る。「次年度の募集ではかなり積極的に動いているが、コロナの影響が根強く依然として厳しい」。
 事業団の担当者は今回、全体の充足率が100%を下回り、定員割れの大学が急増した原因を、①18歳人口の減少、②既卒生の減少、③コロナ禍で来日できなくなったことによる外国人留学生の減少、④充足率90~100%に対する私学助成増額のインセンティブ-などと推測する。④は定員超過を抑制するため、補助金不交付基準引き下げに代わって2019年度に導入された制度で、充足率が95~100%の大学の場合、補助金が4%増額される。100%をめざして合格者数を抑えた結果、90%台になった大学が一定程度あったのではないかという分析だ。
 この担当者は「100%をわずかでも下回れば未充足としてカウントしている。今回の結果を見て『大学がどんどんつぶれていく』とあおるメディアには疑問を感じる」と話す一方、大学に対しては警鐘を鳴らす。「18歳人口は今後も減り続け、定員規模と進学率が変わらない場合、充足率はさらに下がっていく。地域のニーズに応える改革で生き残りに努めない大学はどんどん厳しい情勢になるだろう」。