2018.0919

次年度からの入定厳格化、0.9~1.0倍のインセンティブのみ導入

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3行でわかるこの記事のポイント

●1.0倍超過分のペナルティは当面見送り、3年後を目途に検討
●小規模大学の奮起を促すため増額対象の下限を当初例示の0.95倍から引き下げ
●「3年間の段階的厳格化は大都市圏への集中抑制に一定の効果」と評価

文部科学省と日本私立学校振興・共済事業団はこのほど、2019年度からの入学定員充足率と私学助成配分の新たなルールについて各私立大学に通知した。1.0倍を超える入学者数に応じた減額というペナルティ措置を当面見送り、0.9~1.0倍にした場合に補助金を上乗せするというインセンティブ措置のみを導入する。

*文科省の発表資料はこちら


●充足率0.95~1.0倍なら4%増額

 入学定員充足率を0.9~1.0倍に抑えた場合の補助金増額の具体的なルールは下表の通り。

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 大学の規模にかかわらず、充足率が0.95~1.0倍なら補助金を4%増額、0.9~0.94倍なら2%増額する。1.0倍を超えても、規模ごとに設けられた基準以下であればペナルティはなく、超過人数に応じた減額も行わない。ただし、今回の措置の実施状況と効果を検証したうえで、3年後を目途に1.0倍超過に対するペナルティの実施についてあらためて検討する。
 文科省は2015年に定員超過による補助金不交付基準の段階的引き下げについて通知する際、2019年度以降については「1.0倍を超える入学者数に応じて学生経費相当額を減額」「定員充足率を0.95~1.0倍にした大学に補助金を上乗せ」という方向性を示した。今回の措置では前者のペナルティ部分の実施を見送る一方、後者のインセンティブは対象となる充足率の下限を0.9倍まで引き下げる形で盛り込んだ。

●「大規模大学がめざすべきは1.1ではなく1.0」とのメッセージ

 私学事業団の調査によると、2016年度から3年間にわたる段階的な不交付基準引き下げの結果、3大都市圏の入学定員充足率は106.2%(2015年度)から103.2%(2018年度)に低下。その他の地域は95.9%から100.8%と充足に転じた。この間、3大都市圏の大・中規模大学の定員を超えた入学者数は2万7479人から1万9648人と約8000人減った。これらについて文科省は「地域による差異はあるものの、全体で見るとこれまでの施策は大都市圏を中心とする定員超過の適正化に一定の効果をもたらした」と見ている。
 一方で、大規模大学を中心とする合格者の絞り込み・追加合格によって合格者の最終決定までの期間が長期化し、受験生に精神的・経済的負担が生じている状況をふまえ、1.0倍超えに対するペナルティ導入は現時点では避けるべきだと判断した。
 新たに設けるインセンティブの対象となる充足率「0.9~1.0」は、大規模大学と小規模大学それぞれに対するメッセージと言える。大規模大学に対しては、経営優先で不交付ぎりぎりの1.1倍をめざすのではなく、教育の質担保のためにあくまでも定員通りの数をめざすべきとの考えから、1.0倍を言わば「重石」として設定。歩留まりを読み誤って多少の定員割れになっても補助金が増額になる仕組みにした。「定員を超えて受け入れることが常態化している大学に対し、厳格な定員管理を行うインセンティブを設けることで3年程度かけて収容定員充足率を抑えこみたい」(文科省の担当者)。
 一方、基準値の下限を当初の例示より低い0.9倍にしたのには、定員割れに苦しむ小規模大学に「手の届きそうな目標」を示す意図がある。担当者は「学生募集に一層努力して0.9倍を維持できれば補助金が上乗せされ、4年間平均の収容定員充足率も0.9倍となって一般補助の減額を免れる。経営状況の改善を経て、場合によってはダウンサイジングの検討もできるのではないか」と説明する。


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