2021.0709

入試改革の有識者会議が提言-改革総合支援事業等による取り組み促進へ

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3行でわかるこの記事のポイント

●4技能や記述式は各大学の個別試験に委ね、インセンティブを付与
●「運営費交付金」「私学助成」等、財源の明示に委員の抵抗も
●私立大学は改革総合支援事業の評価項目見直しで対応

文部科学省は7月8日、「大学入試のあり方に関する検討会議」(座長:三島良直東京工業大学前学長)の提言を公表した。外部検定の活用等による英語4技能評価や記述式問題の出題は、大学入学共通テストではなく各大学の個別試験に委ね、積極的な取り組みを促すため、私学助成等によるインセンティブが設けられる。

*「大学入試のあり方に関する検討会議」の提言はこちら
*提言関連の全資料はこちら
4技能・記述式は共通テストではなく個別試験で-有識者会議が提言へ


●「入試と教育の一体的改革」がインセンティブの対象

 6月末に開かれた検討会の会合では、提言案をもとに最終調整を行った。焦点となったのは、英語4技能評価や記述式問題の出題など、入試と教育の一体的改革に取り組む大学に対するインセンティブの部分だ。
 国立大学は「運営費交付金」、私立大学は「私学助成」と財源を明示することに、それぞれの関係者から懸念が示され、これら具体的な文言を「削るべきだ」との声も。いずれも年々、配分が厳しくなる中、一部が入試のインセンティブに回されることによって基盤部分の配分がさらに減って経営を圧迫するとの懸念がある。こうした議論に、高校側の委員からは「4技能評価等が共通テストで見送られた以上、各大学が個別試験を変えていくべきであり、それを本気でやろうと考えるならインセンティブは必要ないはず。(インセンティブのことを)書くと、『大学はやらなくてもいいと考えているのではないか』と受け取られかねない」という発言も出た。
 国立大学の第4期中期目標期間における運営費交付金の配分方法が検討中であることに触れつつ、提言案にあった「国立大学法人運営費交付金の中で優れた取り組みも促進・評価する」の「国立大学法人運営費交付金の中で」は、最終的に削除された。私立大学については「私学助成のうち、特色ある取組や大学改革を推進する支援スキームを活用し、評価項目の見直し等により」という記述が維持され、私立大学等改革総合支援事業による対応が想定されている。国公私共通の枠組みでの支援や新たな制度の創設等は検討されない方向だ。

●「ペナルティ方式ではなく良い事例を評価・促進する観点で」

 各大学の改革促進については「ペナルティを課すという方法ではなく」と明記。主体的・積極的な取り組みを促して評価すべく、好事例を公表すること、認証評価や高等教育の修学支援新制度の機関要件にかかわる情報公表の対象にすることなどが提言された。
 文科省は2020年度、検討会議の参考データにするため記述式の出題状況等に関する大学の実態調査を実施した。担当者は「あのような細かい調査を毎年実施することは難しいとしても、毎年何らかの調査を行い、好事例を拾い上げて公表することを考えている」と説明する。
 インセンティブの付与について、提言では4技能評価や記述式の出題のほか、「多様な背景を持つ学生の受け入れ、入学後の教育との連動や文理融合等の観点からの出題科目の見直し、入学時期や修学年限の多様化への対応」などがインセンティブの対象として示された。
 私立大学については2020年度の私立大学等改革総合支援事業でも「一般選抜での記述式問題の出題」「総合型・学校推薦型選抜における基礎学力把握」「文理を問わず『数学』『情報』を出題」「記述式総合問題を出題」「入試における多面的・総合的評価と入学後の教育の連動」などが評価項目になっている。全体的な項目の見直しを通じ、4技能評価や受験生の経済的事情に配慮した入試を追加する方向で検討がなされる。