2021.0616

ベネッセ入試結果調査①18歳人口と既卒生の減少で競争緩和に向かう

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3行でわかるこの記事のポイント

●私大は志願者数激減の一方で合格者数が増加
●志願者増が続いていた工学部含め、私大の全学部系統で志願者が減少
●コロナの影響による国公立大後期日程の受験回避で欠席率は62%に

ベネッセコーポレーションは全国の大学と高校の協力の下、2021年度入試の結果をまとめた。受験人口の減少や新入試制度の導入に加え、新型コロナウィルス感染拡大の影響がさまざまな形で出た。ベネッセ教育情報センターの分析に基づき、3回に分けて入試結果を報告する。初回は一般選抜の全体的な状況を取り上げる。

*各データは、特にことわりがない限りベネッセの調査によるもので、大学の公表数値を基にしたデータは5月中旬までに収集・確認できた情報を反映している。
*各データはベネッセの分類・集計によるもので、各大学が公表している数値とは異なる場合がある。

ベネッセ入試結果調査②私大合格者数は4年間で最多となり総じて易化
ベネッセ入試結果調査③総合型選抜の志願者数は国公立、私立とも増加


●私立大学志望者層の共通テスト受験者が激減

 学生募集市場の規模を表す18歳人口はこの6、7年、120万人前後で推移していたが、2021年度は前年から2万6000人減って115万人(対前年指数98)。以降、2024年度入試まで急激に減少する。現在の高校1年生が受験する2024年度入試では約107万人に落ち込むと予想される。
 既卒生も減少し、現役生の合格者数が増加しそうだ。結果として、今後の入試は全体的に競争緩和が予想される。

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 2021年度の大学入学共通テスト志願者数は53万5245人で、前年のセンター試験から2万2454人減少した。18歳人口減少の影響が大きいが、既卒生の減少も顕著で、前年より2割近く少ない8万1007人だった。
 共通テストの受験者数は対前年指数92に減少したが、ベネッセのデータネット集計によると、5教科7科目理系型の受験者数は指数97、5教科8科目文系型は96で、どちらも大きくは減っていない。一方、3科目以下の受験者数は指数85と大きく減少しており、共通テスト利用方式による私立大学志望者層の受験見送りが多かったと推測される。

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 ベネッセコーポレーションは2021年度入試について、全国3629の高校から48万8878人分の出願・合否結果の情報提供を受け、進研模試データを加えて分析。ベネッセグループが集めた各大学の志願者データや次年度入試の変更点等の情報も加え、志望校選びの参考にしてもらうため高校に還元している。これらの情報に基づき、国公立大学と私立大学、それぞれの一般選抜の全体的な動向を解説する。

●国公立大学-難関国立大、ブロック大では受験人口減の影響は小さい

 2021年度入試における国公立大学全体の一般選抜の志願者数は42万5415人(対前年指数97)。国立大学だけの指数は96で微減。前期日程の指数97に対し、廃止・縮小する大学が目立った後期日程は指数95だった。
 一方、公立大学は中期日程で指数93と減少する一方、後期日程は104に増加した。

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 国立大学の志願者数は減少が続いている。

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 大学グループ別の志願者数を見ると、難関国立10大学は対前年指数98でほぼ前年並み。ブロック大学で指数93に減少したのは金沢大学の後期日程廃止の影響が大きく、前期日程だけで見ると指数98でほぼ前年並みとなる。その他の国立大学は指数97だった。

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*「難関国立大学」は北海道、東北、東京、東京工業、一橋、名古屋、京都、大阪、神戸、九州の10大学。
*「ブロック大学」は筑波、千葉、横浜国立、新潟、金沢、岡山、広島、熊本、東京都立、大阪市立の10大学。

 国立大学の間ではコロナ禍への対応として、個別試験を実施せず共通テストの成績等で代替する動きも見られた。しかし、受験生は過去のデータを参考にして出願することができないため、これらの大学を敬遠する傾向が見られた。横浜国立大学の志願者数は対前年指数55、宇都宮大学は88、山口東京理科大学は74と、軒並み減少。横浜国立大学は理工学部で80人の欠員が生じ、2次募集を行った。
 国公立大学の後期日程の欠席率は年々上昇を続けており、2021年度入試では62.2%だった。新型コロナウィルス感染拡大の影響で受験生が受験回数を絞り、合格した私立大学への進学を早々に決めて国公立大学を受験しないケースが多かったと推測される。

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●私立大学-一部大学の志願者増は入試の変更や改組が要因

 2021年度の私立大学の募集人員は約27万人(対前年指数98)でほぼ前年並みだったが、志願者数は約310万人(指数85)と大きく減少した。長く続いた増加傾向から2020年度入試で14年ぶりに減少に転じ、今回も減少した。受験人口の減少に加え、コロナ禍に対する不安から出願校数を絞る受験生が多かったことも要因だ。
 入試方式別では一般方式の志願者数が対前年指数83、共通テスト利用方式は90と、いずれも大きく減少した。 

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 首都圏・近畿圏の早慶上智、MARCH、関関同立など、難関12私立大学はおおむね志願者数が減少。日東駒専、大東亜帝国、産近甲龍、摂神追桃などの中堅私立大学も多くが減少した。志願者数が増加した一部の大学は、入試の変更や改組が要因となったケースがほとんどだ。

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 早稲田、上智、青山学院など、共通テスト利用方式を新たに導入したり拡大したりする大学が多かったが、受験生にとって負担感の大きい共通テストと独自試験の併用型入試は敬遠される傾向が見られた。
 一方、私立大学全体の合格者数は約100万人(指数105)に増えた。合格者数の状況については次回、詳しく解説する。

●学部系統別-コロナ禍の影響で国際関係学、語学の志願者数が減少

 下のグラフでは、2021年度入試における国公立大学と私立大学、それぞれの学部系統別志願者数の対前年指数を示している。

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 国公立大学は薬、法、保健衛生、工の4系統で志願者が増えた。コロナ禍の影響も推測される医療系、資格志向への関心の高まり、理高文低の傾向がうかがえる。
 一方、私立大学は理系を含むすべての学部系統で志願者数が減少した。
 近年、志願者数が増加傾向にあった国際関係学系統は国公立が対前年指数75、私立が84と、ともに大幅に減少。コロナ禍を受けて多くの大学が海外留学の派遣をとりやめたことが影響した。同様の要因で、語学系統でも志願者が大きく減少した(対前年指数は国公立85、私立79)。
 社会学系統の対前年指数は国公立が94、私立は89。中でも観光学科系統は国公立が指数88、私立が72と、減少度合いが大きい。これもコロナ禍で人の移動が制限され、観光関連企業の業績や採用に影響が出たためと考えられる。
 工学系統の志願者数は国公立ではここ数年、安定的に推移し、2021年度も対前年指数101。一方の私立は2020年度までの増加傾向から一転、他の学部系統と同様大きく減少し、指数90だった。