「THE世界大学ランキング日本版2021」学生調査 高スコアの背景
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2021.0524
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3行でわかるこの記事のポイント
●平均スコアが高い 2大学の取り組みを紹介
●創価大学は協同学習の授業手法を教員が学ぶ機会を定期的に設け、実践
●帝京大学は意欲の高い学生や成績優秀者に挑戦を促すプログラムを設定
3月に発表された「THE世界大学ランキング日本版2021」の指標の一つ「教育充実度」には、高校教員調査に加え、在籍する学生の調査結果も反映されている。今回で3回目となる学生調査の結果から、教育に対する学生満足度が高い大学がわかる。ランキングに反映された7つの設問のうち平均スコアが10位内のものが多い2大学に、その背景となっている取り組みを説明してもらった。
「THE世界大学ランキング日本版」の学生調査は、2019年度から最新の2021年度までの3回、アメリカ版、ヨーロッパ版の各ランキングとの比較検証用を含む11の設問で実施された(下表)。そのうち1~7の設問が日本版ランキングに反映されている。
7つの各設問について大学の平均スコアを見ると、7大学が4つ以上の設問でトップ10にランクインしている。その中から創価大学(5つの設問でランクイン)と帝京大学(4つの設問でランクイン)に、学生満足度の高さにつながっている取り組みについて分析・紹介してもらった。
設問1 教授陣や先生方との交流の機会
全学生に教員アドバイザーが割り当てられる。教員アドバイザーは1年次春学期の初年次セミナーを担当し、大学生としての学びの基礎や学習計画についての指導を通して学生一人ひとりとの関係を構築。成績不振に陥った場合の面談も担当する。2年次秋学期以降は専門演習の担当者が教員アドバイザーを引き継ぐ。
学生寮では教員がアドバイザーとして月1回程度、学習相談会を開くなど、教員と学生の交流が活発になされている。
設問2 協同学習(協働学習)の機会
アクティブ・ラーニング(以下、AL)の質的向上をめざし、FDに取り組んでいる。2014年度には大学教育再生加速プログラム(AP)事業の「テーマⅠ アクティブ・ラーニング」と「テーマⅡ 学修成果の可視化」の複合型に採択され、2019年度まで全学部の教員を対象にAL型授業設計の研修を実施。予習で得た知識をディスカッション等のグループワークによって深め、知識を活用する力を定着させる「LTD(Learning Through Discussion)」など、協同学習の手法を教員が学ぶ機会を定期的に設け、授業改善を促した。
その結果、AL型授業科目の割合が全体の8割近くに増加。全学生が受講しており、1人が1学期間に受講するAL型授業は平均5科目を超えている。
設問3 クリティカル・シンキングのスキルの成長が支援される機会
2014年度から「学術文章作法」を全学の1年次を対象に必修化している。入学時のプレースメントテスト(国語)をもとに約30人のクラスに分け、共通の教科書でクリティカル・シンキングや文章力を段階的に磨いている。この授業を担当する教員と大学院生がレポート作成を支援する日本語ライティングセンターも設置している。
同じく1年次必修の「初年次セミナー」でもクリティカル・シンキングや文章力の基礎を学ぶ回を設け、「学術文章作法」を補完している。
英語で授業を行う国際教養学部や、EMPプログラム(英語の授業のみで卒業できるコースの総称で、2021年度は11コースを開設)では、英語による「Academic Writing」を必修化している。
設問6 授業の挑戦/やりがい
各学部の専門科目に加え、学ぶことや生きること、働くことの意味を深く考えてもらうための多彩な科目群を設けている。これらの科目が、学生の挑戦意欲ややりがいをより高めていると考えられる。
具体的には、2018年度から、共通科目に平和・人権・環境・開発等の分野からなる「世界市民教育科目群」を設置し、全学生が履修できるようにしている(原則、4単位の選択必修)。
また、自校教育の一環として開講している「大学科目群」では、創価大学の歴史と理念を知り、議論することを通して、自身が大学で学ぶことの意味を確認する機会を提供している。さらに、企業経営者を招く「トップが語る現代経営」、世界を舞台に活躍する卒業生がゲスト講師を務める「ワールド・ビジネスフォーラム」など、意欲の向上やキャリア形成につながる授業を配置している。
設問7 大学の推奨度
文部科学省が2019年度に実施した「全国学生調査(試行実施)」では、「大学での教育が知識や能力を身に付けるために役に立っている」との回答が、同規模の私立大学と比べて高い割合となった。これと、今回の「THE世界大学ランキング日本版2021」の学生調査における「教員との交流」「協同学習」「クリティカル・シンキング」等、教育に対する満足度や成長実感も合わさって、「創価大学を友人や家族にも勧めたい」という気持ちにつながっていると推測される。
全学部生を対象に毎年実施している学内の「学生生活アンケート」でも、「自分の子供に創価大学への進学を勧める」との回答が8割前後で続いており、推奨度の高さを裏付けている。
設問1 教授陣や先生方との交流の機会
各学部の授業はもちろん、クラブ活動や地域貢献活動を通して学生が教員と交流する機会も多く設けている。
工学系クラブ「宇宙システム研究会」は、理工学部の教員が「学生が自らの手で衛星を作って打ち上げることによって、科学の力を認識してほしい」との思いで立ち上げた。教員と学生がさまざまな困難を乗り越えながら、小型人工衛星の開発と打ち上げ成功という同じ目標に向かって活動を続けている。
経済学部観光経営学科ではゼミ活動の一環として、教員と学生が学外でのイベント事業の企画・運営を行っている。2020年度は、子どもを対象とした地域めぐりイベント「渋沢すごろくで遊ぼう!」を企画。ゼミの担当教員は地域の観光振興プラン策定の委員長を務めており、学生にとっては観光振興にかかわる実践的な指導を受ける機会になった。
設問3 クリティカル・シンキングのスキルの成長が支援される機会
医療系の学部では、多彩な演習や実習を通してさまざまな視点から物事を客観的に観察し、それに基づいて判断を下して行動に移す力を身に付けるための教育を行っている。
その総括として、医・薬・医療技術の3学部は4年次の合同授業「医療コミュニケーション」でチーム医療を学ぶ。「臨床事例シナリオ」に基づくグループディスカッションや実践演習を通して、クリティカル・シンキングや多職種間のコミュニケーションスキルなど、チームによる「患者中心の医療」を実践するための知識や態度を身に付ける。
設問4 学んだことをじっくり検討したり相互に結び付けたりする支援
医療技術学部スポーツ医療学科の救急救命士コースでは、授業で学んだことを臨床実習で繰り返し訓練し、チーム活動を通してより実践的な力を積み上げるとともに、協働スキルの向上を促すために学習者中心の学びを深める機会を多く提供している。
文学部社会学科の「ソーシャルビジネス実習」は地元・多摩地域で活動する社会的企業やNPOと共同で企画され、学生がこれらの企業・団体での実習に参加。プロジェクトの企画・運営・実施、さらに学びの集大成となるプレゼンテーションを通して地域社会で活躍するための「就業力」の修得をめざす。
設問6 授業の挑戦/やりがい
どの学部も演習や実習など、実践的な授業が多いことが学生のやりがいを生んでいると考えられる。
経済学部では、特に意欲の高い学生向けのプログラムも設けている。ホーチミン市外国語情報技術大学(ベトナム)、パンヤピワット経営学院(タイ)など、アジア各国の大学から学生を受け入れる「帝京大学アジア交流プログラム(TAEP)」の英語による授業は、経済学部の一部学科の学生にも開放している。
「経済学部キャリア・チャレンジ・プログラム(ECCP)」は成績優秀な2・3年次を対象に開講。身の回りの事象や自らが直面する出来事を論理的に捉えて的確な判断を下し、口頭や文章で表現して討議する力を養う「論理的思考力」や、実務で活用できるコミュニケーション力を養成する「実務英語」などを学ぶ。このプログラムの成績優秀者をイギリスに派遣する研修旅行も実施している。