"大学教育DX"の採択校発表―トレンドは「個別最適化」「個別支援」
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2021.0317
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3行でわかるこの記事のポイント
●タイトな申請スケジュールにもかかわらず252件の申請
●「学修者本位の教育」で44件、「学びの質の向上」で10件を採択
●金沢工業大学、関西大学など9校はダブルで採択
文部科学省はこのほど、「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」の選考結果を発表した。全学的なDX推進計画に基づく教育の高度化を支援する事業に252件の申請があり、54件採択された。2つのテーマにダブル採択された大学も9校に上る。ポストコロナ時代を見据えた新たな教育システム構築に向けた今後の取り組みが注目される。
「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」には、2020年度の第3次補正予算で60億円が計上された。大学、短大、高専でデジタル技術を積極的に取り入れ、「学修者本位の教育」「学びの質の向上」のための環境を整備し、ポストコロナ時代の新たな高等教育手法の開発・普及を促すことがねらい。
当初は2021年度の事業として実施予定だったが、年末になって補正予算に急きょ組み入れられた。年末に最初の説明会を実施、1月中旬から2週間で申請受け付けという慌ただしいスケジュールとなったが、大学の関心は高く252 件の申請があり、54件採択された。
募集は2つの枠でなされ、「DX推進計画」の策定が申請要件となった。
「取り組み例1」のテーマは「学修者本位の教育の実現」で、「学修管理システム(LMS)の導入による学生の習熟度把握」などが例示された。174件の申請があり、44件採択された。採択校の取り組みのタイトルには「個別(最適化、学修、指導)」というキーワードが目立ち、デジタルの活用によって学生の個別支援を強化する動きが読み取れる。
「取り組み例2」のテーマは「学びの質の向上」で、「VR(Virtual Reality)を用いた(対面ではない)実験・実習の導入」などが例示された。78件の申請があり、10件採択された。
金沢工業大学と関西大学など9大学は「取り組み例1、2」ダブルでの採択となった。1件あたりの助成額は「取り組み例1」が1億円程度、より大がかりなシステムの導入が想定されている「取り組み例2」は3億円程度。
「取り組み例1」で採択された共愛学園前橋国際大学は、学生が学修ポートフォリオ「KYOAI Career Gate」に蓄積した授業内外の学修成果のデータをAIで分析し、独自の学修成果指標「共愛12の力」達成のための学びや活動をリコメンドする仕組みの構築をめざす。個別最適化による教育の高度化を図る。リコメンド対象にするのはすでに取り組んでいる国内外の大学とのオンラインによる共同学習や、新たに導入する学外のオンライン学習プラットフォームのコンテンツ。
大森昭生学長は「地方小規模大学には、地域での実践的学修やリアルなアクティブラーニングといった強みがある一方、リソースが乏しく幅広いニーズに対応できないという弱みもある。リアルの強みに加え、デジタルの活用によって弱みを補完することで、地方小規模大学で学ぶ価値が高まる」と説明。「各分野の第一線の講師が担当し、常に内容が更新される学外のデジタルコンテンツは強い味方になる」。
対面形式を含む全授業でのLMS活用をめざし、提出物へのフィードバックなど、1対1での双方向性を担保することも計画に盛り込んでいる。
同じく「取り組み例1」で採択された追手門学院大学は従来、打ち出してきた学修スタイル「行動して学び、学びながら行動する OIDAI WIL(Work-Is-Learning)」と、教育手法「ICT 活用など、教育内容に最適な手法で効果を最大化する OIDAI MATCH(MAximized TeaCHing)」をDX で高度化し、学修者本位の教育を推進するという「OIDAI DX 推進計画」を策定。
学外との超高速通信が可能な情報基盤を整備し、授業ごとに対面とオンラインを柔軟に選択できるようにする。LMSをはじめとする学修支援システムを統合してビックデータ化し、AIによる分析で学修成果を可視化して一人ひとりの最適な学びを支援する「AI ティーチング・アシスタント・システム」を構築。高度化したデジタル環境基盤を活用したオンライン学習システムで、長期インターンシップに参加しながら授業を受けたり、国内にいながら海外留学に準じるプログラムを受講できたりする仕組みも整える。