2020.0430

乗り切ろう!コロナ危機③ 遠隔授業の実践例などを集めたお助けサイト

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3行でわかるこの記事のポイント

●さまざまな課題が山積する遠隔授業の全面実施
●文科省はじめ各省庁が支援策を発表
●所属機関を超えた情報の共有と連携が鍵

新型コロナ禍により急遽、オンラインによる遠隔教育に取り組まざるを得ない今、先行事例や関係省庁による支援策まで、幅広く情報を集めたサイバーシンポジウムが3月から複数回開催され、その資料や動画が公開されている。全学導入に向けたさまざまな課題解決のヒントが満載のお助けサイトを紹介する。
乗り切ろう!コロナ危機① 数と質の確保に向け対面型広報の代替策を
乗り切ろう!コロナ危機② ウェブの制約と強みを踏まえた広報戦略とは


●国立情報学研究所主催のサイバーシンポジウム

 多くの大学で、GW明けからオンラインによる遠隔授業に取り組むことが発表されている。しかし、全科目での遠隔授業の実施について、ネットワーク環境整備やビデオ会議ソフトの選定、授業の組み立て・進め方、成績評価、学生サポートまで、クリアすべき課題はあまりに多く、頭を抱える大学がほとんどだろう。そんな大学を支援しようと、国立情報学研究所(NII)のウェブサイトには遠隔授業の実践事例から支援政策、ネットワークの問題まで、高等教育関係者の知恵や情報を幅広く集めた「4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」のコーナーが開設されている。
 このコーナーには、文部科学省からの3月24日付「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」を受け、NIIが、3月26日から4月24日まで5回実施したオンラインによるシンポジウムの資料と動画が掲出され、自由に閲覧・視聴できる。NIIによると、今後のシンポの開催は動向を見て調整予定(4月27日現在)で、同サイトで開催が予告される。

●「遠隔授業は60単位まで」の上限の解釈

 各大学で一番気になるのが「遠隔授業」推進に対する支援政策だろう。文科省は、全面的に遠隔授業に移行することを想定して、大学設置基準上の「遠隔授業は60単位まで」という上限について、「面接授業により得られる教育効果を有すると各大学の判断において認めるものについては、上限の算定に含める必要はない」との解釈を示した。これは新型コロナ禍対応に限ったものではなく、「教育のデジタライゼーションを推進していく」とのことだ。文化庁からは遠隔授業での著作物利用について、無許諾・有償(補償金)化の施行を4月28日からに早めたうえで、2020年度は特例的に補償金額を無償にすることが発表されている。
 授業設計のコツについては、大学院でオンライン授業を実践する鈴木克明熊本大学教授の「平時に戻るまでの遠隔授業のデザイン7か条」が参考になりそうだ。ともすると平常時と同じ形にこだわった授業をめざしがちだが、一番大切なのは、教員が教え続けることではなく「学生が学び続けること」。対面授業と同じやり方をそのままオンラインで実現しようとせず、例えば、講義の代わりに教科書を読んでレポートを提出させるなど、より無理のない手段を選ぶ(「第3条 同じ形ではなく同じ価値を追求する」)や、シラバスの順序にこだわらずにオンラインでやりやすいものから着手できるように配列を変える(「第4条 順序を変える」)など、具体的なアドバイスが満載されている。

●「成績評価は、実は通常の授業とあまり変わらない」

 授業実践例については多くの大学の例が共有されている。中でもハードルが高そうな学生同士のグループワークについては、愛媛大学大学院理工学部から「遠隔環境におけるグループワークの実践」が報告されている。
 九州大学の山田政寛准教授は、オンライン授業における成績評価について解説。これも多くの大学が頭を悩ませる部分だが、山田准教授は「目標があって評価があるという点で、通常の授業もオンライン授業も成績評価は実はあまり変わらない」と説明。教員には⾒えないところでの学生の⾏動の影響をどう考えるかという点が問題であり、オンライン授業ではエビデンスとしてログが残ることが最大の強みだと指摘する。テストでは回答回数や回答時間のデータ、グループワークでは発言内容の記録をそれぞれ評価に反映するなど、さまざまな可能性があると述べたうえで、「無理はしない」「⾮同期でできることを精⼀杯やる」とアドバイスしている。
 ネットワーク環境やセキュリティについてはどの大学も心配だろう。総務省の対応のほか、先行している複数の大学の課題や対策も公開されている。これらの中から自学にとって有用な工夫を取り入れるといいだろう。
 急ピッチで進めざるを得ない遠隔授業の全学展開。学内だけでは情報がない、対応が難しいものも多いだろう。所属機関を超えての情報の共有と連携で乗り切っていくことが大切だ。