入試改革情報の公表状況―2月末現在の公表率は国立88%、私立16%
学生募集・高大接続
2019.0304
学生募集・高大接続
3行でわかるこの記事のポイント
●ベネッセグループが大学のウェブサイトを調査・分析
●全体では3校に1校が何らかの情報を発信
●10以上の私大が一般入試への記述式問題導入を表明
入試改革元年となる2021年度入試のピーク期まで2年を切った。大きな変更点がある場合は2年前広報が原則とされる中、2019年2月末現在、私立大学の情報発信の動きは低調だ。その中でも、主体性等の評価による判定方法について詳しく説明したり、高校1年生に宛てたメッセージを掲載したりと、積極的な発信をする私立大学もある。ベネッセグループが大学のウェブサイトで確認した情報をもとに、入試改革に関する情報公表の状況と発信内容について概観する。
ベネッセグループは各大学のウェブサイトを継続的に確認し、2021年度入試に関する公表状況を調べている。2019年2月25日現在、何らかの情報公表をしていると確認できたのは全体の31%にあたる242大学だった。設置形態別に見ると、国立大学が72校で全体の88%、公立大学は73校で81%、私立大学は97校で16%。国公立に比べて私立の動きの遅さが目立つ。
*全大学数は大学院大学を除外するなど、ベネッセグループが調査対象としている数。
国立大学協会は2017年11月から2018年6月にかけて、入試改革に関する基本方針や英語外部検定等の活用ガイドラインを公表。これらを受けて2018年夏以降、国立大学の情報発信の動きが活発化した。一方の私立大学は2018年12月以降の公表が目立ち、ようやく動きが出てきた状況だ。他大学の動向を注視していた多くの大学による公表が今後、加速するとみられる。
私立大学の公表率をエリア別にみると、北海道が40%と最も高く、次いで首都圏を除く関東が25%、首都圏が21%。それ以外のエリアは近畿の10%はじめ、いずれも10%台にとどまっている。
公表情報の内容について、まず私立大学から見ていく。
文部科学省の方針に沿う形で、多くの大学が共通して発信しているのが学力の3要素の評価や「一般入試」→「一般選抜」等の名称変更に関する情報で、これらのみを公表している大学もある。学力の3要素については「すべての入試方式で3要素を評価」とするケースと、「3要素を評価する」との説明にとどまるケースに分かれる。
これら以外に、「外部検定による英語4技能の評価」「記述式問題による表現力の評価」「共通テストの活用の有無」「主体性等の評価」について発信されている。
関西学院大学は次のような基本方針で入試改革のテーマに網羅的に対応する考えを示している。
1.全ての入試区分で学力の3要素を評価する。
2.全ての入試区分で英語4技能を評価し、出願資格とすることも含む
3.一般入試の全日程の国語で記述式問題を実施する
4.大学入学共通テスト(国語と数学の記述式問題、外部英語検定を含む)を利用した入試を実施する
5.高校での「主体的、対話的かつ深い学び」や「探究」により育まれる資質・能力を評価するための入試制度を検討する
https://www.kwansei.ac.jp/notice/2018/notice_20181015_020776.html
昭和女子大学は主体性等の評価について、具体的な判定方法を明示している。一般選抜の一部日程において、合格予定者数の上位95%までは筆記試験の得点で判定し、95~100%のボーダーライン層は、出願時の提出資料から算出する「主体性得点」に基づいて新たに順位づけし、合格者を決めるといった内容を詳しく説明。合否ボーダーライン上の受験生について主体性等を加味して選考する考えの大学は多いと推測されるが、現時点でその手法を具体的に示すケースは他にほとんど見あたらない。
https://exam.swu.ac.jp/university/recruitment/point#chg2021
確認できただけで10以上の私立大学が、独自の入試で記述式問題を導入する考えを示している。
石巻専修大学は一般入試の説明の中で「論理的な思考力・判断力・表現力などを評価するため、各試験科目において「記述式問題」の作問に努めます」としている。
https://www.senshu-u.ac.jp/ishinomaki/news/20181001-03.html
函館大学は一般入試に加え学校推薦でも記述式の問題を出すという。
http://www.hakodate-u.ac.jp/wp-content/themes/hku/pdf/2021Entrance_Examination_Basic_Policy.pdf
2021年度入試の変更点と合わせ、高校生に対するメッセージを発信する大学もある。立正大学は、入学者の主体性等を確認することを念頭に、2021年度入試の対象となる現1年生に宛てたメッセージを掲載。「受験生自身が学校生活等における自身の活動の履歴や、学びの履歴等について記録をしておいてください。これらは、高大接続改革の一環として、みなさんが大学入学後に受ける大学教育・大学生活における参考資料として活用することが考えられている為です」としている。
http://www.ris.ac.jp/examination_information/examination/reform.html
国立大学の間では、国立大学協会が示した入試改革に関する基本方針、および共通テストの外部検定と記述式問題の活用に関するガイドラインや参考例に沿った変更が目立つ。外部検定を全受験生に課し、「出願資格とする」または「加点方式で活用する」というケースがほとんど。
より踏み込んだ内容としては、外部検定と大学入学共通テストの英語の両方を課す(弘前大学、宮崎大学など)、「大学入試英語成績提供システム」に参加するすべての外部検定を対象にする(岡山大学、琉球大学など)、CEFRの「A2以上」を出願資格にする(千葉大学、東京農工大学など)、共通テストの英語の試験と合わせた総得点に占める最高点の加点比重を「2割(程度)」とする(北海道教育大学、新潟大学など)といったものがある。
加点方式を採用する静岡大学は、CEFRの段階ごとの加点を「C2は50点、C1は40点、 B2は32点、B1は24点、A2は16点、A1は8点」(共通テストの英語の試験と合わせ250 点満点と想定した場合)と具体的に示している。
https://www.shizuoka.ac.jp/nyushi/outline/pdf/exam2021.pdf
一方、兵庫教育大学は「C2とC1は50点、B2は40点、B1は20点、A2とA1は加点なし」としている。
https://www.hyogo-u.ac.jp/admission/015509.php
国語の記述式については国大協の例示通り、段階別の成績を点数化してマークシート式の得点に加点して活用するという大学がほとんど。
国大協の基本方針とは異なる判断をした大学もある。北海道大学と東北大学は2020年度は外部検定の受検を出願要件にしないという。
https://www.hokudai.ac.jp/admission/H310130hokudai.pdf
http://www.tnc.tohoku.ac.jp/images/news/H33housin.pdf
東京大学と名古屋大学はCEFRのA2以上の成績に加え、これと同じレベルの英語力があることを証明する高校の書類も出願要件として認める。
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_admission_method_03.html
http://www.nagoya-u.ac.jp/admission/upload_images/190208.pdf
公表状況を分析した進研アド・マナビジョン企画部データベースマーケティング課の仁科佑一グループリーダーは「ある大学では、CEFRの1番下のA1でも加点することについて、入試担当副学長が『頑張って英語の勉強を続けた努力を評価することも必要だから』と説明していた。入試にはこのようなメッセージを込めることができる。新たな入試に不安を抱える高校生が多い中、早めに情報を出し、その意図も伝えることが自学の新たなファン獲得につながるはずだ」と話す。
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