2017.1010

共愛学園前橋国際大学が次年度、オナーズプログラムをスタート

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3行でわかるこの記事のポイント

●蓄積した地域人材育成のノウハウを生かし、プログラムを体系化
●世界的視野で地域の課題を解決するグローカルリーダーを育成
●数学必須の4教科型入試で基礎学力を問う

「地方創生」が時代のキーワードとなる中、地元の自治体や産業界と連携して地域活性化に貢献できる人材の育成に取り組み、成果を上げてきた共愛学園前橋国際大学は、多くの大学から注目を集めている。2018年度には、特色ある教育を土台に、グローカル人材のリーダーを育成するオナーズプログラムをスタートさせる。

*オナーズプログラムのパンフレットはこちら
http://www.kyoai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2017/09/170829_kyoai_glocal_honors_leaflet_.pdf
*共愛学園前橋国際大学のグローカル人材育成プログラムに関する記事はこちら
http://www.shinken-ad.co.jp/between/backnumber/pdf/2014_8_tokushu06.pdf


●従来は入学後の関心に応える副専攻や選択科目で育成

 共愛学園前橋国際大学のオナーズプログラム「KYOAI GLOCAL HONORS」は、これまで副専攻や自由選択科目を通じて育成してきた「世界的視野で地域の課題を解決する力」を専門性として高められるよう、カリキュラムを体系化。幅広い基礎学力、論理的思考力や英語力の基礎を備え、地元・群馬の活性化に意欲的な者を受け入れて成長を支援する。
 入学定員は15人で、国際社会学部国際社会学科国際社会専攻の英語、国際、情報・経営、心理・人間文化の4コースいずれかに所属する。全学共通の「共愛コア科目」や各コースの専門科目と並行してオナーズプログラムの科目を履修。卒業要件124単位のうち36単位が同プログラムの必修科目だ。
 後藤さゆり副学長は、開設の背景を次のように説明する。「これまでは、入学してから地域の問題に目覚めた学生が興味ある科目を受講し、グローカル人材へと成長していった。オナーズプログラムでは、高校段階から地域貢献意識の高い生徒に明確な意思を持って本学を選んでもらい、グローカル人材のリーダーに育て上げたい」。

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●「KYOAI GLOCAL HONORS」の概要

 選抜方法やカリキュラム等、プログラムの概要を紹介する。

【教育目標】
 データ分析に基づいて課題を設定できるアナリストと、課題解決策を提案できるイノベーターの育成をめざす。社会への発信を政策提言書やビジネスプランとしてまとめることを4年間のゴールとし、自治体や企業関係者、教育関係者など地域の人たちを招く毎年度の成果報告会で発表する。

【選抜方法】
 入試では、センター試験の国語・数学・英語を必修とし、地歴・公民、理科から1教科選択の計4教科を課す。さらに、面接で資料に基づく口頭試問を行い、思考力・判断・表現力、主体性を見る。同大学の入試は2科目型が中心だが、オナーズプログラムではデータ分析能力、論理的思考力が欠かせないため数学を含む多教科型にした。国公立との併願で4教科の総合的な学力が高い生徒でも、従来の2教科型の入試では私立専願者の得点を下回って不合格になるケースがあることも考慮したという。

【カリキュラム~Honors Base とGH(GLOCAL HONORS)演習】

 オナーズプログラムのカリキュラムの概要は下図の通り。

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 1年次~2年次前期の基礎科目「Honors Base」で、実践的英語力、論理的思考力、数的処理能力の基礎をつくる。英語は、全学共通の必修科目(週2コマ)に加え、ネイティブ講師の授業(週1コマ)を開講。ディスカッションやプレゼンテーションなど、ビジネスで活用できるレベルの英語力を養う。数学もビジネスでの活用を目標に、統計や分析を学ぶ。
 英語のコマ数がさほど多くないのは、「世界を飛び回る」というよりは、地元に根を張り、グローバルな視点で地域の課題を解決できる人材を育てるという従来のコンセプトを変えないからだ。英語に偏らず、地域について学ぶ時間も確保した。地域理解を深める過程で英語を使って何をしたいか考えさせ、必要だと自覚した学生はGlobal Career Training副専攻のオールイングリッシュの科目でさらに高いレベルをめざしてもらう。
 「GH(GLOCAL HONORS)演習」は4年間継続するゼミだ。1年次後期には10日間程度の海外研修を実施。ニューヨークで国連本部や世界銀行本部などを訪問する一方、群馬に関わりがある施設や団体を訪問し、国際社会の中枢とも言うべき地で群馬の特性を相対的に捉え直す。2年次は、経済系を専門にする関東地区の学生が研究成果を発表・議論する「インナー大会」での入賞をめざす。経済学・経営学の理論を深めながら、プレゼンテーションやディスカッションのスキルを磨く。
 2年次後期からは「Honors Base」の推奨選択科目として「ミッショングローバル研修」と「公務員試験対策講座」を開講。「ミッショングローバル研修」は、地元のグローバル企業の海外拠点で、言葉や文化の壁にぶつかりながら企業が課すビジネスミッションに挑むというもの。地元企業との連携によって実績を上げてきた手法をオナーズプログラムにも取り込み、グローカル人材に不可欠な主体性や行動力を養い、自らのアイデンティティを確認させる。「公務員試験対策講座」では、地方公務員上級以上の合格を目標に、専門学校等と提携する。オナーズプログラム独自の企業や行政機関でのインターンシップも組み込む。
 3年次からの「GH演習」は、イノベーターをめざす「村山ゼミ」とアナリストをめざす「西舘ゼミ」に分かれる。経営学が専門の村山賢哉学部長のゼミでは、グループワークとプレゼンテーションを中心とする手法でマーケティング調査や採算分析について学ぶ。一方、国際協力学が専門の西舘崇専任講師のゼミでは、討論型の授業を通して社会や地域の課題を掘り起こし、解決のための新たな仕組みを考える。
 4年間を通じ、全学年のオナーズプログラム生が集まり自分たちで運営する「オナーズミーティング」も正課として開講。専門分野や学年が異なる集団の中で知見や発想を補い合い、議論しながらそれぞれの課題を磨き上げる場となる。

【担当教員と支援体制】

 専門ゼミの村山学部長と西舘専任講師がオナーズプログラム全体を担当し、海外研修や「ミッショングローバル研修」なども分担して受け持つ。いずれも30代後半の若い教員だが、プログラムが掲げる専門性、学生を伸ばすことに対する意欲の両面で適任と判断された。
 西舘専任講師は東京大学に在学中、フィリピンでNGOを立ち上げ、失敗した苦い経験を持つ。「高度な知識やスキルがあっても、自分の足元の文化を理解し、伝えられなければ異文化の壁を超えた議論・協働はできないと痛感した。自分の経験も伝えながら、多文化共生社会づくりに貢献できる学生を育てていきたい」と話す。
 オナーズプログラムを支援する委員会は大森昭生学長が委員長、後藤副学長と西川正也副学長が副委員長を務め、地域連携や就職支援を担当するスタッフも加えて全学体制を敷く。

【学費】
 入試の成績によって最長4年間、授業料を全学免除する特待生制度があるが、オナーズ生全員を対象とする減免制度は設けない。ただし、オナーズプログラム内の海外研修や「ミッショングローバル研修」等の費用は大学が負担する。

●「幸せな一生を支援することが大学の使命」

 このオナーズプログラムは、「共愛=共生」という理念に基づくグローカル人材育成という共愛学園前橋国際大学の一貫した理念を深化させる新たな挑戦と言える。「『オナーズ』の名の下、偏差値の高い生徒を集めたいわけではなく、群馬の未来を真剣に考え、この地で頑張りたいという学生に来てもらって一緒に地域を創っていきたい。学生が幸せな一生を送る、そのための支援をすることが大学の使命であり、本学だからできる教育によってその使命を果たしていきたい」。後藤副学長はそう結んだ。


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