「語彙力」が高い高校生は「思考力」等も高いとの示唆―ベネッセ調査
学生募集・高大接続
2017.1026
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3行でわかるこの記事のポイント
●高校生約1000人を対象に含む「現代人の語彙に関する調査」を実施
●「語彙力」が高いグループと低いグループで思考力等関連の項目に差
●471の大学・短大が推薦・AO入試の評価対象として「語彙・読解力検定」を採用
「語彙力」が高い高校生は、入試改革で重視されている「思考力・判断力・表現力」も高いと推測される―。ベネッセコーポレーションが実施した調査から、入試改革の参考になりそうな「語彙力」と学力要素の関係についての示唆が得られた。
*この調査では、対象の言葉のうち回答者が「知っている」と答えた割合を、その人の「語彙力」としている。
*詳しい調査報告はこちら
「語彙・読解力検定」を主催するベネッセコーポレーションは、2017年7月、全国の高校生・大学生・社会人計3130人を対象に、インターネット上で「第2回 現代人の語彙に関する調査」を実施した。高校生は性別と学年のバランスに配慮した1040人が対象。「語彙・読解力検定」の「辞書語彙」「新聞語彙」の2領域から選んだ計540 語を用いて調べた「語彙力」を基に、「語彙力」が高いグループと低いグループに分け、さまざまな質問を通して「語彙力」の育成につながる要素を探った。
図1では、「思考力・判断力・表現力」と関係があると考えられる行動・能力について、あてはまるか否か高校生に尋ねた結果を分析した。どの項目でも、「あてはまる」と答えた割合は、「語彙力」の高いグループのほうが低いグループより高かった。特に「筆者の意見と事実とを区別して読むことができる」「文章を読むとき、細部より先に大枠をつかむことができる」「筆者の主張を裏づける理由や根拠に気をつけて読むことができる」は、両者の差が40ポイント以上あった。
この調査では、「語彙力」の育成と高校の授業形態の関連についてもヒントが得られた(図2)。アクティブ・ラーニングのさまざまな活動について、「どのくらい行っているか」を高校生に尋ねたところ、「(よく+ときどき)する」と答えた生徒のほうが、「(あまり+ほとんど)しない」と答えた生徒より「語彙力」が高いことがわかった。
「どのように調べればよいかを考える」「調べたことを文章にまとめる」「自分の考えを図表や写真などを使って表現する」では、特に両者の差が大きかった。
これらの結果から、「語彙力」は思考力・判断力・表現力といった学力や、アクティブ・ラーニングのような主体的・協働的な学習経験と関連しているという示唆が得られた。
このように、「語彙力」は学力や学び方の経験との関連が深いが、その「語彙力」を学力の要素として評価する手法は、大学の間で広がりつつある。推薦入試やAO入試の評価対象の一つとして「語彙・読解力検定」を採用している大学・短大は471校ある(2017年1月現在。ベネッセ調べ)。
大学側のこうした動きもあり、語彙力・読解力の育成という目的だけでなく、「小論文を書くための土台作り」「社会への視野を育てる」など、推薦・AO入試で求められる力を身につけることを目的としてこの検定を採用している高校も少なくないようだ。
調査・分析を担当した「語彙・読解力検定」編集部は「社会人を含め、『語彙力』が高い人の方が政治への関心や選挙の投票意欲など、社会への参画意識が高いことも明らかになった」と指摘。「語彙力」が学力以外の資質とも関連している可能性が浮かび上がっている。
*「語彙・読解力検定」の詳しい情報はこちら(「ごいどっかい」で検索)
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