2017.0911

積極的に進路を考えた生徒は興味ある学問分野を重視―ベネッセ調査

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3行でわかるこの記事のポイント

●全国の大学生約5000人を対象に調査し、4年前、8年前と比較
●「大学選びで重視した点」で挙げる項目の数の平均値は4→3.5と減少
●大学は、視野を広げて興味・関心を掘り下げる進路指導の支援を

高校生の大学選びの視野が狭くなり、興味ある学問分野があるかどうか重視する者の割合も低下している―。ベネッセが実施した調査から、そんな気になる傾向が浮かび上がった。調査結果を紹介し、一人ひとりに合ったより良い進路選択を促すために大学がなすべきことを考えてみたい。

*詳しい調査結果はこちら
http://berd.benesse.jp/koutou/research/detail1.php?id=5169


●「自分の関心事中心で視野が狭い」との高校教員の指摘と符合

 ベネッセ教育総合研究所がこのほど結果を発表した「大学生の学習・生活実態調査」は2008年から4年おきに実施され、今回が3回目。2016年11月から12月にかけて、全国の大学1~4年生 4948人を対象にインターネットで調査を行った。学びに対する学生の意識や姿勢、行動を捉えることが主な目的だが、ここでは大学の募集広報に関わりの深い高校での進路選択の振り返り部分を中心に紹介する。
 「受験する大学・学部を決める際に重視した点」を複数回答で聞いたところ、ほとんどの項目で前回、前々回より割合が低下した。一人当たり平均選択数を見ても、2008年が4.00、2012年が3.93だったのに対し、2016年は3.55に減っている。近年の高校生の進路選択について、高校教員からは「自分の関心事を中心にした狭い範囲で考えがち」「人生の重要な選択の場面という意識が薄い」と問題視する声が聞かれるが、今回の回答状況にもこうした傾向が反映していると考えられる。

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 いずれの回でも、最も多いのは「興味のある学問分野があること」だが、その割合は年々低下し、今回は8年前より10.3ポイント低い54.5%だった。進路選択において自分の興味・関心とのマッチングを重視する者が減っているのは気になるところだ。

●大学に期待される「わかりやすいAP」の発信 

 さらに詳しく分析するため、この設問と、高校時代に「進路や将来について積極的に考えたかどうか」とをかけ合わせたのが下のグラフだ。
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  ※「あてはまるものはない」と回答した者は集計から除いた。

 大学選択で重視した項目の数の平均は、進路や将来について積極的に考えなかった層が3.1だったのに対し、考えた層は3.7と上回った。さらに、興味のある学問分野があることを重視した者の割合も、「積極的に考えた」層のほうが約20ポイント高い。進路について積極的に考えることによって多面的な視点で大学を比べ、自分の興味に合った分野を選ぼうとすることが読み取れる。「取りたい資格や免許が取得できること」を重視した者の割合も、「積極的に考えた」層のほうが約13ポイント高いことも注目される。
 興味や適性と学問分野とのミスマッチは中退につながるリスクが高く、本人はもちろん受け入れる大学にとっても望ましくない。これを防ぐためには、高校で進路や将来についてしっかり考えさせる機会を多く設けることが有効で、大学も情報提供を通してそこに積極的に関わっていくべきだろう。生徒の視野を広げ、興味・関心を掘り下げて考えさせるような支援が期待される。今後、各大学のアドミッション・ポリシー(AP)を比較・研究したうえで志望動機を自分の言葉で説明できるようにする進路指導の広がりが予想される中、APを高校生にわかりやすく示し、カリキュラム・ポリシーやディプロマ・ポリシーとの関係を明示するような募集広報の重要性が増す。
 グラフ1では、各項目の割合が下がっている中でも、「入試難易度が自分に合っていること」「世間的に大学名が知られていること」の8年間での減少幅は、それぞれ約6ポイント、約9ポイントと他より大きくなっている。そこから、難易度や知名度を軸にした従来の大学選びが今後、変化する兆しを見ることもできる。大学は、高校との連携や適切な情報発信によって高校生一人ひとりの成長を促し、より良い進路選びを支援することが期待されている。
 調査を担当したベネッセ教育総合研究所の松本留奈研究員は、「今回の調査では、自分の所属する学部・学科のアドミッション・ポリシーについて、『知っていて理解している』と答えた学生のほうが、『知っているが理解はしていない』『知らない』と答えた学生より学習成果が大きいことが明らかになっている。アドミッション・ポリシーを十分に理解したうえで入学することは、その後の学生生活にとって重要だろう」と話している。


*注目の既出記事

THE世界大学ランキング-東大は39位→46位、京大は91位→74位
/univ/2017/09/the-wur2018.html

*高校、高校生を対象にした調査に関する記事はこちら

勉強好きになった生徒は調査や発表をする授業を経験―ベネッセ調査
/hs/2017/05/BCcyosa-manabi.html

新設の中高一貫教育校のほとんどが「国際理解」を重視-文科省調査
/hs/2017/04/kokokaikakuchosa.html

進学率が高い高校で進みつつある入試改革への対応-ベネッセ調査
/hu/2017/04/BCkyoken-cyosa.html