東京経済大学-「キャリア教育×2年次での学部選択」の新プログラム
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2017.0317
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3行でわかるこの記事のポイント
●キャリア教育の強みが埋没しつつあるとの問題意識から構想
●1年次に各学部について理解を深め、興味の対象を見つける
●模試の志望動向の分析に基づき、2年目の募集広報戦略を設計
東京経済大学は2017年度から、4年一貫のキャリア教育と2年次進級時の所属学部選択を特色とする「キャリアデザインプログラム」をスタートさせる。大学の強みであるキャリア教育をより先鋭化させ、新たな教育の特色を打ち出すことがねらいだ。1期生が企業や高校生と共に働き方を考えるさまざまな活動を企画し、その内容を継続的に発信するという2年目の募集広報のシナリオもできつつある。
大学のウェブサイトでの紹介はこちら
http://www.tku.ac.jp/cdp/
東京経済大学の「キャリアデザインプログラム(CDP)」は経済、経営、コミュニケーション、現代法の全4学部が定員を出し合い、50人の募集人員を設定。①4年間継続するキャリア教育、②学部を決めずに入学して2年次進級時に学部を選ぶ、③学部横断型の幅広い科目履修が可能―の3点が特色だ。
受験生にとって、特に社会科学系の学部は、専門教育によってどのような力がついてどんなキャリアにつながるのか、他の学部とどこが違うのかがわかりにくく、十分に理解しないまま入学してミスマッチによる意欲の低下が起きやすいと言われる。同大学では中退が深刻化するほどではないが、ミスマッチの問題は教員の間で共有されてきた。一方、20年前にはインターンシップを正課に組み込むなど、キャリア教育に先進的に取り組んできたとの自負があるが、今やどの大学でもキャリア教育が当たり前になり、埋没しつつあるとの問題意識があった。
そこで、キャリア教育と専門教育を連携させ学問内容に対する理解を深めたうえで専門分野を決めるCDPによって、キャリア教育の進化形を確立しようと考えた。学生がめざすキャリアを実現するための計画を柔軟な履修システムの下で主体的に作り、目的意識と意欲を高めながら幅広くかつ深く学べるよう支援する。
4年間続く「キャリアデザイン・ワークショップ」はCDP独自のキャリア教育科目で、プログラム担当の教員(4学部と共通教育センターから1人ずつ、プログラム運営委員2人、特命教員として採用したキャリアカウンセラーの計8人)が受け持つ。一般学生対象のキャリア教育科目には大教室での講義もあるのに対し、CDPではほとんど全てが少人数のアクティブラーニング型授業で、キャリア意識の向上とジェネリックスキルの修得を支援する。教員陣は研修を受け、指導スキルを高める。
1年次のワークショップでは4学部それぞれの学問内容について理解を深めつつ自分の興味・関心の対象を見つけ、社会人として必要な力を4年間でどう身に付けるか計画を立てる。学生はこれと並行して各学部の1年次向けの入門科目を履修し、社会科学の基礎を幅広く学ぶ。
2年次進級時の学部選択では本人の希望を最大限に尊重するが、定員管理上、成績によっては第2希望の学部になることもあるという。
2年次以降は所属学部の専門科目を履修しながら、学部横断履修科目で他学部の科目も学べる。同大学では元々、学部間で多くの専門科目を乗り入れているが、CDPではその枠を大幅に拡大。体系的な履修ができるよう「金融」「広告」「グローバルビジネス」など6つのクラスターの下に各学部の科目を設定する。
学部が分かれる2年次以降も、CDP学生は「キャリアデザイン・ワークショップ」の授業で集まる。2年次には問題発見・解決能力を育成、3年次はめざす職業について理解を深めさせ、就職活動を支援する。4年次は内定した就職先を前提にしたキャリアパスを考えさせる。希望者を対象に1年次から3年次にかけて、「ジョブシャドウィング」と呼ぶ1日職業体験→企業インタビュー→インターンシップという段階的な企業体験の機会も提供する。
大学は、このプログラムに興味を持つ高校生として2つのタイプを想定。「キャリア意識が高く、入学時に学部を決めないことや学部横断型の履修を積極的に活用して社会に出る準備をしようと考えるタイプ」と、「学部を決めきれず入学後に選べることにメリットを感じるタイプ」だ。意識面では両極端のようにも思えるが、キャリアデザインプログラム運営委員長の北山聡准教授(コミュニケーション学部)は「どちらも職業選択のために必要なことを考えさせるのが中心になり、指導に違いはない」として、どちらか一方を主体にする考えはないという。
初年度は独自のAO入試で15人、各学部と同じ一般入試とセンター試験利用入試とで計35人を募集。AO入試は、一次選考で志望理由書を含む書類選考、二次選考では基礎学習能力試験とグループ討論を課した。
AO入試では特に、キャリア教育に期待する意欲的な受験者が目立ったという。一方で、CDPのしくみを単なるモラトリアムと捉えて安易な動機で受験し、大学側が期待する「キャリアについて主体的に考える気構え」が伴わない受験者もいたようだ。そこで、CDPを全学的な教育の特色として打ち出すことを念頭に、2年目からの募集広報を見直した。
今後、特に獲得に力を入れたいと考える女子の志望動向を分析したところ、模試での自学志望者の主な併願先がキャリア教育を強みとする大学であることを確認。このような層に将来のキャリア形成がイメージできる教育内容や企業との連携を訴求し、積極的に自学を選んでもらうための広報が必要だと考えた。グローバル企業と連携するセミナーや学生と高校生による共同ワークショップなど、CDPの1期生が働き方を考えるさまざまな活動を企画し、それらを高校生に継続的に発信していく。大学のメッセージがより明確に伝わるよう、「2年次からの学部選択」としていたパンフレット等のキャッチコピーを2年目は「4年間のキャリア教育」に変えることにした。
「社会に出た後も学び続けられるよう、学び方を修得させることこそが大学教育の役割であり、就職支援にとどまらない継続的なキャリア教育が求められている」と北山准教授。これまでのキャリア教育の知見の蓄積、4学部による社会科学のカバー範囲と学部間の壁の低さ、ワンキャンパスに6500人の学生が集うほど良い規模と環境など、「CDPは東京経済大学の強みを総動員したプログラム」と自信を示し、1期生と共に展開するさまざまな活動を楽しみにしている。