私学助成の配分は「複数年度の収容定員」の管理で-有識者会議が提言へ
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2022.0309
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3行でわかるこの記事のポイント
●設置認可における定員管理とあわせて見直し
●単年度の入学定員管理による問題点に対応
●「来年は抑えよう」など、複数年度にわたる入学者数の調整が可能に
私学助成の配分における定員管理が、「単年度の入学定員」から「複数年度の収容定員」に変わる。歩留まりを読み誤ってわずかに定員をオーバーした結果、私学助成が不交付になったり、学部新設の延期を余儀なくされたりといったリスクが軽減されることになりそうだ。大学経営に大きな影響を及ぼす仕組みの見直しの行方が注目される。
定員管理の仕組みの変更については、中央教育審議会大学分科会質保証システム部会の審議まとめ案で打ち出された(P27~)。
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2月中旬の会合で示された案では、「基盤的経費の配分や設置認可申請等における定員管理に係る取扱いについて(中略)現行で入学定員に基づく単年度の算定としているものは、収容定員に基づく複数年度の算定へと改める」とされた。
現行制度では、私学助成の配分や設置認可において、単年度の入学定員超過率がチェックされる。規模ごとに設定された基準を超えると、私学助成が不交付になったり、学部等の設置が認可されなかったりする。
私学助成の配分においては大学単位と学部単位の両方で入学定員超過率がチェックされ、それぞれの配分に反映される。大学は不交付を回避するために少人数の追加合格発表を繰り返すなど、入学者数の過度な調整を余儀なくされている実態がある。それによって受験生は最終的な入学先がなかなか決まらないなど、不安定な状態に置かれるという問題も指摘されてきた。
一方、設置認可においては学部単位の入学定員超過率をチェックされ、一学部でも基準を超えた場合、新設・改組の計画を見直すことになり、大学全体の改革に大きな影響が及ぶ。
こうした状況の下、特に2018年度に入学定員超過率の基準が現在の数字に厳格化されて以降、大学の間で仕組みの見直しを求める声が高まっていた。2019年に日本私立大学連盟が文部科学省に提出した意見書では、「学部単位の入学定員」ではなく「大学単位の収容定員」、または単年度ではなく複数年度の平均値での管理など、「現実的で柔軟な仕組み」を求めた。
これらの声を受けて質保証システム部会では、「複数年度の収容定員」による管理が打ち出された。一方、設置認可において大学が求めていた「学部単位から大学単位へ」という見直しについては、審議まとめ案で「定員管理の単位は、大学における教育環境の確保の観点から、引き続き学部・学科を単位とする」とされた。
部会の審議まとめは年度内に文科省に提出される予定だ。それを受け、私学助成の配分について、文科省と日本私立学校振興・共済事業団が具体的な仕組みを検討する。文科省の担当者は「大きな変更となるので十分な議論が必要であり、大学に対する予告・周知期間もしっかり確保したい」と説明。新しい仕組みの運用開始時期は「現時点ではわからない」と話す。
私学助成の配分においては、現行制度でも収容定員によるチェックがされている。入学定員超過率で「交付/不交付」を判断し、収容定員超過率のゾーンごとに設定された減額率を適用するという仕組みだ。「交付/不交付の判定」と「減額率の判定」という2層構造の仕組みは維持される見通しで、全体を再設計する中で現行の収容定員に関するルールも変わる可能性がある。
複数年度の収容定員超過率で交付/不交付を判定する場合、現在、入学定員超過率で規定している厳格な不交付基準をどのような考え方に基づくどの程度の数字で移行するかが、焦点となりそうだ。
複数年度の収容定員による管理に変わることによって、「今年度は入学者数が多くなり過ぎたので次年度は抑えよう」「中退者が多かったので多めに合格を出そう」といった調整がある程度、柔軟にできるようになりそうだ。一方で、恒常的に中退者の多い大学が、毎年のように入学定員を大きく上回る人数を入学させるケースをどう扱うかといったことなどは、今回の見直しにおける検討課題といえる。
文科省の担当者は「教育・研究の質という観点も含め、大学の定員管理がどうあるべきかという全体的な考え方の整理がまずあり、その中で私学助成に関する仕組みを検討していく。大学に大きな影響を及ぼし、全国的な学生数のバランスにも関わってくる見直しとなるので、大学にとっての公平感、納得感が高く、社会からも理解が得られる最適解となる仕組みにしたい」と話す。