2021.1206

ガバナンス改革の報告書、提出へ-パブコメ実施めぐり有識者会議が紛糾

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3行でわかるこの記事のポイント

●大学関係者の抵抗を念頭に、報告書を最終調整
●「反対意見で提案が骨抜きに」とパブコメ実施に反発
●法改正への反映は依然、不透明な情勢

私立大学のガバナンス改革について検討している文部科学省の有識者会議は3日、法改正に関する報告書をまとめた。月内に文科大臣に提出される。文科省が報告書をパブリックコメント(意見募集)にかけることについて、委員らが「反対意見によって改革案が骨抜きにされる」と猛反発。文科省は意見募集をしないことを受け入れた。大学関係者の反発が強い改革案が私立学校法をはじめとする法改正にどう反映されるのか、不透明感が増している。

学校法人の評議員会を学外者のみにし、決定権を付与-有識者会議が提案
*報告書案はこちら


●評議員の人数は大きく減らすことを想定

 文部科学省の「学校法人ガバナンス改革会議」(座長:日本公認会計士協会・増田宏一相談役)の報告書は、評議員会を「最高監督・議決機関」とし、権限を集中させることが柱になっている。理事による評議員の兼務を禁止し、学内関係者は評議員になれない。理事会・理事による評議員の選任・解任を認めない一方、評議員会は理事を選任・解任する権限を持つ。
 3日の会合では、報告書の最終確認をした。案に対する大学関係者の反発が大きいことを念頭に、「教育・研究に対する不当な介入をなくすための堅牢な仕組みを作る改革だということを、理解してもらう必要がある」(ある委員)という観点から、文言に修正を加えた。「『学外の無責任な評議員が適当にものごとを決めてしまう』という反対者の論点が杞憂であると伝わるようにすべき。評議員が法人に対して善管注意義務(業務を委任された人の専門的能力上、通常、期待されるべき注意義務)や損害賠償責任を負うことを明確にし、重い責任に適した人材が確保されると理解してもらう必要がある」といった意見が出された。
 評議員の定数については、「最低員数(3 名以上)を定める」と法律に明記される方向だ。現状、大学法人の評議員の平均人数は26人だが、新制度の下ではこれを大きく減らすことが想定されている。「学外者のみの評議員会だと意思決定が遅れ、改革のスピードが落ちる」という声に対し、有識者会議は「コンパクトな会議でスムーズな意思決定がなされる」と反論している。
 一方、評議員の「責任の重さ」については大学関係者から、「引き受け手がいなくなるのでは」との声も聞かれる。

●「報告書通りの法案を」と文科省に迫る場面も

 通常の文科省の有識者会議と異なり、今回の報告書は中教審大学分科会等の承認を経ることなく直接、文科大臣に提出されることになっている。
 会合の終盤、文科省が報告書をパブリックコメントにかける考えであることが伝えられると、委員が一斉に反発。「立法過程ならわかるが、この種の報告書をパブコメにかけることは聞いたことがない」「法案を報告書と違う内容に書き変えるための大義名分として意見を聞くのなら絶対反対だ」など、強い調子で抵抗した。「この報告書通りに法案が作られると理解していいか」と文科省にただす場面もあった。
 最終的に、文科省は意見募集の実施を撤回した。