神田外語大学の新学部はギャップタームと3年次、2回の留学が必修

●1年次前期の留学はインド、エルサレムなどの中から選択
●あえて課題を抱える地域に送って価値観を揺さぶり、学ぶ目的を明確化
●3年次にはアメリカのリベラルアーツ大学で英語による思考・議論の力を鍛える

神田外語大学は2021年度、「従来の外国語大学とは異なるオンリーワンの学部」を掲げてグローバル・リベラルアーツ学部を新設する。入学後半年間のギャップタームで学ぶ目的を明確にしたうえでの本格的な学びのスタート、2回の留学の必修化、ICTやデータ・サイエンスの科目の必修化など、独自の教育で従来とは異なる層を取り込み、大学のフラッグシップとなる学部をめざす。
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●建学の理念と教育の強みをかけ合わせ「平和に貢献できる人材」を育成

 神田外語大学は1957年に設置された英会話学校を母体として1987年、千葉県千葉市(幕張地区)に開学した。英語はもちろん、アジアやイベロアメリカ(スペイン語やポルトガル語を話すアメリカ州の地域)の言語と文化にも通じ、国内外で活躍する卒業生が多く輩出。さらに、独自のノウハウを「教育ソリューション」として他大学に提供するなど、わが国の語学教育のレベルアップにも貢献してきた。
 その教育力に対する高校教員の評価は高く、「THE世界大学ランキング日本版2020」では「グローバル人材育成に力を入れている」「生徒の力を伸ばしている」という観点の高校教員評判調査の結果が反映される「教育充実度」が7位だった。
 これらの実績を土台に、2021年度にグローバル・リベラルアーツ学部を新設する。建学の理念「言葉は世界をつなぐ平和の礎」と、強みとする英語力・幅広い教養とをかけ合わせた教育を通して、世界の平和と繁栄に貢献できる「真のグローバル人材の育成」をめざす。「Global Liberal Arts for Peace」という英語表記はこの理念を表現するものだ。
 卒業後は国際公務員、外務省等の国家公務員、国際協力機構(JICA)やNGOなどの職員、グローバル企業への就職等を想定している。

●ギャップタームは主体的な学びに向かうための準備期間

 グローバル・リベラルアーツ学部では、1年次の6月と3年次後期、2回の留学を必修で課す。いずれも語学留学とは異なる明確な目的の下、派遣先が設定されている。
 入学直後の4月から8月の半年間はいわゆるギャップタームにあたる「グローバル・チャレンジ・ターム」と位置付けられ、この期間は最初の留学となる7月の海外スタディ・ツアー(3~4週間)、およびその事前準備と事後フォローが中心になる。海外スタディ・ツアーの派遣先はリトアニア、エルサレム、マレーシア・ボルネオ、インドの4つの国や地域の大学。多民族国家や紛争、環境問題、貧困など、さまざまな課題を抱えるこれらの地域に送るのは、厳しい環境の中で学生の価値観を揺さぶり「課題を解決するために本気で勉強しなければ」と気づかせ、大学での学びの出発点に立たせるためだ。
 大学改革室長として新学部の構想を主導した金口恭久副学長は、「外国語大学では2年間かけて初修言語を徹底的に鍛えてから留学に出すのが一般的だが、そこに至るまでに疲弊してしまい、その言語を生かそうと思えず別の道に進んでしまう学生も少なくない。それを避けるためにも、入学直後は主体的に学びに向かうための動機づけの期間にする」と説明する。
 帰国後の1年次後期から本格的にリベラルアーツ教育を始め、その成果を試すべく3年次後期、今度はニューヨーク州立大学(SUNY)での半年間の留学に送り出す。リベラルアーツで実績と定評があるこの大学群のうち、環境、平和、移民、歴史など、それぞれに強みを持つ7つの大学から、学生は関心のある学問領域によって行き先を選ぶ。専門分野を現地の学生や他国からの留学生と共に英語で学び、単位修得をめざす。 
 ハイレベルな内容について英語で思考を深め、議論する苦しさ、楽しさを経験しながら語学力と知識を高め、国際公務員など高い目標を持つまでに成長して帰国するよう期待されている。

●「数的思考法」「データ・サイエンス概論」などから3科目の履修を義務づけ

 4年間のカリキュラムは下表の通りで、14人の専任教員を中心に授業が展開される。
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 1年次はすべて必修科目となる。
 「GLA基礎科目」のうち「グローバル・リベラルアーツ入門」では、学部での学び方を理解したうえで議論の仕方や文献の読み方などのアカデミック・スキルを修得し、学びの姿勢を身に付ける。「グローバル・ディスカバリー」では海外スタディ・ツアーで行く各国・地域の歴史や文化、社会的課題を学ぶ一方、PBLを通して課題解決手法を修得。帰国後は「グローバル・ヒストリー」や「キャリアデザイン(GLA)」を通じて、グローバル化が進む現代において歴史を学び、将来のキャリアを考える機会を持ち、留学の成果を強固なものにする。
 1年次の英語はリーディング、ライティング、ディスカッション・プレゼンテーションの3領域を扱う「アカデミック・イングリッシュ」をはじめ週8コマ。後期はこれにTOEFL演習が加わる。
 研究に必要な日本語能力を高め、論理的思考力を身につけるための「アカデミック日本語」は通年で履修する。
 2年次からは「基礎教養科目」の全学共通科目や初修言語、および研究演習(ゼミ)などがスタートする。
 文系学部でありながら、データ・サイエンスやICTのリテラシーを学ぶ「GLA独自科目」を選択必修にしていることもこの学部の特徴だ。複雑化する現代社会の課題を解決するためには必須の分野として、「数的思考法」「データ・サイエンス概論」「ビッグデータ解析論」など6科目の中から3科目の履修を義務づける。
 「専門教養科目」では卒論のテーマにつながっていく「人間と文化」「社会と共生」「グローバル・スタディーズ」の3領域について、偏りなく各4単位以上を修得するよう推奨。文献の精読や議論を通じて協働的な探究姿勢や批判的な読み方を修得する「講読演習」も同じ3領域に対応する科目が開講され、「研究演習」と合わせて卒論の準備をする。
 卒論で想定しているテーマを携えて3年次後期のニューヨーク州立大学への留学に臨み、帰国後は集大成として「キャップストーン・プロジェクト(卒論)」に取り組む。
 1年次夏の海外スタディ・ツアーでそれぞれの目的を見つけた後のエンジン全開の学びを前提に、卒業要件は129単位と高いハードルを設定している。

●コロナ禍の長期化を見越したオンライン留学の準備も進行

 一期生の「グローバル・スタディーズ」派遣が約半年後に迫る中、新型コロナウィルスの脅威はいまだ収束の気配がない。グローバル・リベラルアーツ学部では、派遣断念という事態にも即応できるよう代替プログラムの準備を進めている。4か国・地域の各大学の教員による授業をオンラインで実施し、現地の学生との交流機会も設定。日本国内にあるその国の関係機関や団体を訪問するなど、リアルでの接点も盛り込む。
 金口副学長は「実際の留学では1つの国しか行けないところ、4か国すべてを体感してもらうなど、時空を超えられるオンラインの強みを生かした密度の濃いプログラムで、むしろ留学体験のアップグレードをめざしたい」と話す。
 神田外語大学では、既存の外国語学部の募集ターゲットとしてきた文学・外国語系の志望者に加え、新たに社会・国際・教養系の志望者を取り込むねらいでこのグローバル・リベラルアーツ学部を構想した。新学部が従来より上位の学力層にもアピールし、フラッグシップとして全学をけん引することを期待している。
 コロナ禍の中で2回の留学を必修化した学部が受験生に受け入れられるか不安もあったというが、総合型選抜では募集人員10人に対し52人が出願。面接で、「グローバル・スタディーズ」で行きたい国としてインドが多く挙がるなど、「学部の理念がよく理解されていた」(金口副学長)と、手応えを感じている。
 模擬試験でグローバル・リベラルアーツ学部と外国語学部をそれぞれ第1志望として記入した受験生の第2志望以下の学部系統について比較したところ、外国語学部は外国語系の学部が半分近くを占めたのに対し、グローバル・リベラルアーツ学部は国際・教養系が約36.7%で外国語系の23.0%を上回り、ねらい通りの層にアピールできていることを確認した。
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 金口副学長は「我々にとってコロナは逆風かもしれないが、学部の理念に共感してくれる受験生がいることに勇気づけられる。その意欲に応えられるよう、『オンリーワンの学部で世界を支える若者を育てる』という理念の具体化に真摯に取り組みたい」と話した。