2019.1209

文科省が学部新設申請時の定員超過率要件を改訂、次年度認可分から適用

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3行でわかるこの記事のポイント

●大学の実態に即し、平均超過率算出の期間や適用範囲を見直し
●大学の海外進出を促すため、学部等を外国に設置した場合の要件も変更
●定員管理のあり方も含めた大学設置基準の抜本的な議論が今後、スタート

文部科学省はこのほど、大学・短大が学部・学科の新設等について認可申請する際の入学定員超過率に関する要件を見直し、大学に通知した。2020年度に認可する申請分から対象になるが、一部に経過措置もある。今回の見直しは大学の実態に即したものだが、定員管理のあり方そのものに対する大学の疑問の声は根強く、今後、予定されている大学設置基準の改正等をめぐる議論の行方が注目される。


●「申請後に基準値オーバーで取り下げ」を回避

 今回の制度改正は(1)修業年限4年の場合、平均入学定員超過率を算出する期間を「学部等を開設する年度の前年度から過去4年間」から「認可申請する年度から過去4年間」に変更、(2)平均入学定員超過率の要件の適用範囲を「法人全体」から「当該大学のみ」に変更、(3)外国に設置している学部等の入学定員超過率の要件を変更―の3点。
 現行制度では、大学が学部等の新設や収容定員増をする場合、同じ学校法人が設置する他の大学等も含め、既設の学部・学科のいずれかにおいて、過去4年間(修業年限)の入学定員充足率の平均が、大学の規模と学部の規模によって定められた基準を超えていると認可されない。
 上記(1)の平均入学定員超過率の算出期間について、入学定員が「100人以上300人未満」の学部をもつ大学が、2021年4月に新たな学部を設置(2020年3月に申請)する場合を例にすると、次のように変わる。従来は「2020年度入試から過去4年間の平均が1.10倍未満」が要件だったが、今後は「2019年度入試から過去4年間の平均が1.10倍未満」と1年前にさかのぼった期間で見ることなる。4nenkan.png

 これは、申請する3月時点ではまだ入学者数が確定しておらず、申請後に基準値を超えることが確定して申請を取り下げるケースがある実態をふまえたもの。
 ただし、この変更を2020年3月申請分から完全適用すると、2020年度の学部新設をめざしながら、従来の「2019年度入試から過去4年間」で基準値を超えたために2019年3月の申請を断念した大学が、2021年度新設で申請しようとしても、制度改正によって再び「2019年度入試から過去4年間」となり、申請できないことになる。そこで、(1)については経過措置として「2020年度に認可する申請分に限り、2019年度、2020年度いずれかからの4年間で算出してよい」とされた。
 なお、認可事項となる収容定員増は申請の機会が年に2回(3月、6月)あり、これについても同じ扱いであるが、3月申請、6月申請のいずれの場合も「申請する年度から過去4年間」であるため、それぞれが対象とする「4年間」の範囲は1年ずれることになり、注意が必要だ。

●定員管理が大学単位でなされる実態を考慮

 (2)の超過率要件の適用範囲については従来、同一法人内の大学等が設置する学部等のうち、1つでも平均入学定員超過率の要件を満たさない場合は認可されなかったのに対し、今後は、当該大学が設置する学部等のみの超過率を見ることになるという変更だ。定員管理が大学単位でなされている実態をふまえた措置だという。
 事実上、自学が関与できない他大学による定員管理の「失敗」によって申請を見送らざるを得ず、改革が遅れることへの疑問の声はこれまでも挙がっており、そこに一定の配慮がなされた格好だ。大規模大学の場合、実態として学部単位で定員管理がなされているケースも多いが、今回の見直しにあたっては、学長の責任の下で全学的なコントロールをすべきという考え方が維持されたと言える。
 (3)の外国に設置する学部等の扱いについては従来、これらの学部等も平均入学定員超過率の算出対象になっているところ、「完成年度に達するまでは対象からはずし、完成年度以降は大学・学部の定員規模によらず1.30倍未満を要件とする」というもの。

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 この変更には、2018年のいわゆる「グランドデザイン答申」をまとめた中央教育審議会大学分科会での議論が反映された。「外国では国内に比べてマーケットの把握と定員管理が難しく、定員充足率が補助金や改組に影響を及ぼすことを考えると積極的な海外進出はできない」という大学の声に応えた。

●質保証部会では定員管理をめぐる問題もふまえ議論

 今回の制度の見直しについて、文科省の担当者は「定員管理にかかわる大学の実態に即した対応だ」と説明する。
 一方で、大学からは従来、「最大限の努力を払っても、入学者数を完全にコントロールすることはできず、1人や2人の超過でも補助金が不交付になる今の制度は厳しすぎる」という声が聞かれる。
 文科省にも「大学設置基準ができてから60年以上たち社会環境が大きく変わる中、今後も定員管理によって教育の質を保証するという考え方のままでいいのか」という問題意識がある。今後始まる大学分科会の質保証部会ではこうした声や考え方もふまえ、大学設置基準の見直しをテーマの一つとして議論することになる。