THEが取り組みの影響力を重視する「アワードアジア」の応募受け付け中

●大学ランキングでは露出しにくい大学にも光を当て、大学の多様性を発信
●カテゴリごとに自薦で応募、提出するエビデンスも自学で決める
●教育・学習戦略、学生支援などに加え組織活性化のカテゴリも

イギリスの高等教育専門誌「THE(Times Higher Education)」は、従来の大学ランキング以外に、卓越した改革の取り組みについて大学自ら応募してもらい、ベストプラクティスを選ぶ「THE アワードアジア」を実施している。イギリス国内で実施していたベスト・プラクティス表彰の対象をアジアにして発展させたもので、現在、2020年度版の応募を受け付けている。自学の取り組みを10カテゴリのいずれかに応募、その意義や成果をどのようなエビデンスで示すかも自学で決めることができる。大学の多様性を世界に発信するこの新しいアワードは、大学の規模にかかわらず、改革熱心で成果を挙げている大学にとって大きなチャンスと言えそうだ。


●初回の2019年度版に日本から13大学が応募、2大学が最終選考に

 従来の大学ランキングは学生数や被引用論文数など、所定のデータに基づく外形的基準によってランクづけしている。これに対し、アワードでは取り組み内容そのものに着目し、それが社会に与えるインパクトの大きさを重視する。「著名な大学も、スポットライトが当たりにくい大学も」という理念の下、カテゴリごとにベスト・プラクティスを選んで大学の多様性を世界に発信する。
 初回の「アワードアジア2019」は5つのカテゴリで実施された。
 「リーダーシップとマネジメント」カテゴリでは、シンガポール国立大学が学籍を20年間有効とし、卒業後の学びを支援するリカレント教育で受賞。「学生支援」カテゴリで受賞したイラクのキルクーク大学は、IS(イスラム国)から逃れてきた他国の大学生約5万人を積極的に受け入れて教育機会を提供する取り組みが世界から注目を集めた。
 2019年度版には日本からも13大学が応募。最終選考に残った東京理科大学(「教育・学習戦略」カテゴリ)と東京都市大学(「国際戦略」カテゴリ)は、アブダビで開かれたTHEアジアサミットのパネルディスカッションに参加、その存在感を世界にアピールした。

●受賞校は来年6月、藤田医科大学で開催されるアジアサミットで発表

 2020年度版は新たに5つのカテゴリが加わり10カテゴリで選考が実施される。応募受け付けは11 月中旬に始まり、2020 年1月24日まで。同年3月5日に発表される最終候補の大学には、ウェブサイトでの広報用にバナーデータが提供される。受賞校は同年6月3 日、藤田医科大学で開催されるアジア大学サミット(6月2 日~4 日)で発表・表彰される。
 「アワードアジア2020」の各カテゴリの概要と選考基準は次の通り。カテゴリの1~5は2019年度版から継続。9、10は公募を行わずTHEが独自のデータに基づいて選考する。

1.リーダーシップとマネジメント
 クリエイティブなマネジメント、学外のステークホルダーへの対応におけるリーダーシップなど、全学的な取り組みが対象。多くの大学に共通する課題をどう改善するかに注目する。前年、シンガポール国立大学はリカレント教育で選ばれており、マネジメントと結びつけることによって幅広い取り組みをカバーするカテゴリと言える。

2. 国際戦略
 全学レベルの国際的なパートナーシップ、海外事業、外国人教員や留学生の募集における突出した成功が対象。これらの取り組みが大学のブランド確立、国際的評価や財政面にもたらした効果に注目する。

3.教育・学習戦略
 大学院生を含む全学生と教員の経験と知識を高め、大学の本質的価値を向上させた取り組みが対象。大学全体の戦略プランの一部として、他の戦略との整合性を示すエビデンスが必要。

4. 学生支援
 学生の学業と生活、両方をカバーする取り組みが対象。自学の学生の特性など、背景を説明し、志願者増、新たな志願者層の獲得、学生・卒業生の成長など、取り組みによってもたらされた成果をエビデンスで示すことが必要。

5. テクノロジーによる革新
 全学、学部、教員など、さまざまなレベルでテクノロジーを活用して生産性向上、コスト削減を実現した取り組みが対象。すでに明らかな効果が出ていれば継続中のプロジェクトも対象になる。デジタル・テクノロジーの活用における学内意識等の文化的障壁、財政的障壁をどう克服したか示す。

6. 組織の活性化
 若手とベテラン、いずれの教職員にとっても魅力的で働きやすく、意欲的になれる職場環境を築く取り組みが対象。組織内で平等性・多様性・包括性が確保され、ベテランの専門性が若手に引き継がれる仕組みに注目する。

7. 学生募集活動
 従来とは異なる革新的な学生募集活動が対象。社会人や留学生など、従来の大学進学者とは異なる層も含めた志願者確保のために、いかに大学のブランドを強化したかに注目する。他大学を含む学外のパートナーと協力し、特定の層をターゲットとして募集活動を行った場合は協力関係の効果を説明する。

8. 芸術の振興
 芸術振興のための先駆的な取り組みが対象。目的が芸術分野における自学の評判を確立することか、またはすでに確立した地位をさらに向上させることかなど、背景の説明が必要。展覧会などの芸術プロジェクト自体の卓越性ではなく、そのプロジェクトのプロモーション活動が評価の対象となる。

9. 地域・社会に対するインパクト(公募は行わずTHE が独自に選考)
  国連のSDGs(持続可能な開発目標)で定義している「持続可能な開発」におけるインパクトが大きい取り組みが対象。「THE大学インパクトランキング」で収集したデータを使い、ランキングでは必ずしも明らかにされていない大学の功績を讃える。

10. データポイントメリットアワード(公募は行わずTHE が独自に選考)
 卓越した取り組みによって「陰の英雄」と見なされる可能性のある大学に注目。「THE 世界大学ランキング」の基礎となるデータを分析し、評判調査に関わる1万人以上の研究者の投票にも挙がってこない卓越した研究に光を当てる。

●エビデンスデータに加え、インパクトを伝えるストーリーも提出

 1~8のカテゴリでは、必要に応じて成果指標となるエビデンスを提出するとともに、そのインパクトが伝わるストーリーの提出も推奨される。原則として過去 12カ月間の取り組みが対象だが、それ以前にスタートしたものでも、主な活動期間が過去12カ月間に含まれる場合は対象となる。他大学やPR コンサルタント等、学外との連携・協力によって実施したプロジェクトでも応募が可能。
 THEがランキングで求めるデータでは自学の強みを示すことが難しい大学にとって、「アワードアジア」は大学共通の課題に立ち向かい、社会をより良い方向に変革する独自の取り組みを世界にアピールできると同時に、世界で認められたことを国内にアピールするチャンスにもなる。カテゴリ数が増えてそのチャンスがさらに広がった今回、多くの大学の積極的な参加が期待される。

*本記事の内容はTHEのウェブサイト11月19日時点の情報に基づく。
*「アワードアジア2020」に関する問い合わせはこちらまで