学生調査が改革の認知度を可視化-「THE世界大学ランキング日本版」

●アメリカ、欧州と共通の設問で比較可能な設計
●226大学で有効回答数に達し、ランキングに反映された
●分析結果を改革に活用できるよう各大学にフィードバック

このほど発表された「THE世界大学ランキング日本版2019」では、ランキング項目に学生調査が初めて追加された。大学改革が学生にしっかり受け止められているかを問う内容で、3万7000件近い回答が得られた。ランキングに反映される一方、改革のための参考データとして各大学に分析結果が提供される。

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●有効回答数に達した大学のデータをランキングに使用

 THEの大学ランキングにおける学生調査は教育重視のアメリカ版、欧州版でも導入されている。
 日本版の学生調査は2018年8月から10月にかけて実施された。事務局から全大学に対して調査の案内を送付。大学から学生に協力を呼びかけ、ウェブ上で回答してもらった。本人のみが回答できるよう、協力依頼や回答など、一連のプロセスでは大学支給のメールアドレスが使用された。
 3万6881件の回答が得られ、THEは大学ごとの有効回答数を先行するUS College Rankingと同じ50に設定。226大学が有効回答数に達した。これらの大学については在籍者の男女比を考慮して各設問の平均値が補正された。
 全16の質問項目は下表のとおり。

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 各設問はこれまで大学で取り組まれてきた改革が学生に認識されているかを問う内容で、「協働学習」「クリティカル・シンキング」「グローバル人材の育成」といったキーワードが盛り込まれている。いずれも1~10点で得点づけされた。 
 設問1~11はアメリカ、欧州と共通で、そのうち1~7がランキング指標分野「教育充実度」の「教員・学生の交流、協働学習の機会」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」の3つの項目として使用された。設問8~11はアメリカ、欧州との比較検証に使われる。設問12~16はアメリカ、欧州いずれかの調査と共通の内容だ。
 学生調査が追加された「教育充実度」の分野別上位20大学は下表のとおり。5位までの6校中4校が私立大学だった。

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●「大学運営への提言機会はあるが結果は知らされない」

 進研アドが調査結果の傾向を分析したところ、次のようなことがわかった。
 下のグラフは、大学の設置区分別、さらに私立については規模別に分けた計5つの属性ごとにスコアの中央値(真ん中の線)と分布状況(長方形の幅、および横線の幅)を示している。

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 ほとんどの設問において中央値は5. 0を超えている。つまり、「教員との交流機会がある」「学習内容を実社会で応用する機会がある」といった大学改革の取り組みが一定程度、学生にも認識されているといえる。国立大学はスコアの分布が小さく、私立小規模大学は逆に分布が大きく状況が一様ではないことが読み取れる。
 課題も浮かび上がった。下のグラフが示すように、大学運営の改善に関して学生が提案する機会がある一方(設問8)、提案がどう実施されたかはわからない(設問9)と受け止められている。進研アド改革支援室・高坂栄一室長は「大学が学生に提言機会を与えても改善状況を共有しなければ教育として完結せず、学生の主体性や自己効力感は育てられない」と述べ、大学のあらゆる取り組みを教育的観点から捉え直すことを提案する。

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 学生調査を実施したすべての大学には、16設問に関する結果が事務局から送られる。高坂室長は「ランキングは教育成果の可視化において取得が難しいベンチマーク情報を提供できる。それを活用して他大学と比べた自学の相対的な位置を把握するほか、目標達成度、前年からの伸長度を分析するなど、さまざまな角度から改革の成果を検証することが大事だ。総合順位のアップダウンに一喜一憂するのではなく、スコアに着目して大学改革のためのツールとしてランキングを使いこなしてほしい」と話す。