2018.0926

THE世界大学ランキング 東大、京大が順位を上げ、ランクイン校数は英国を抜き2位に

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3行でわかるこの記事のポイント

●トップは3年連続でオックスフォード大学、東大は46位→42位、京大は74位→65位
●日本からは初登場の16校を含む103校がランクイン
●THEは日本の「改善」を賛えつつ「投資と国際化の努力が必要」とコメント

イギリスの高等教育専門誌「THE(Times Higher Education)」は9月26日、15回目となる2019年の「THE世界大学ランキング」を発表、86カ国1250校以上(前回は1102校)の順位を示した。トップは前回と同じオックスフォード大学で、2位のケンブリッジ大学も変わらず。3位は前回、同順位だった2校のうちスタンフォード大学が単独で同じ順位を維持した。日本からは東京大学と京都大学が引き続きトップ100入りし、東京大学は順位を4つ上げて42位、京都大学は9つ上げて65位だった。日本からは前回より14校多い103校がランクイン、その数で初めてイギリスを抜き、アメリカに次いで2位に。THEは「日本は数年にわたる衰退と停滞を乗り越え、確かな進歩を遂げた」と称賛した。
*THEによる公表はこちら


●トップ10は米英2国が独占

 「THE世界大学ランキング2019」のトップ10はアメリカ7校、イギリス3校と米英が独占。3年連続トップのオックスフォード大学は、世界ランキングで重視される「研究(量、収入、評判)」におけるトップの強さを見せつけた。上位校の中で注目されるのは前回の12位から8位に躍進したイェール大学で、トップ20校中、順位の上げ幅が最も大きかった。前回は同率10位だったスイス連邦工科大学チューリヒ校(11位)とペンシルバニア大学(同率12位)はいずれもトップ10から脱落した。 

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●東大、京大は「教育」「産業界からの収入」等の改善でランクアップ

 日本からのランクインは前回の89校から103校に。設置者別に見ると、国立55・公立10・私立38となっている。
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 前回、日本でトップだった東京大学は46位から42位にランクアップ。日本で2位の京都大学も74位から65位に順位を上げた。
 東京大学のランクアップは「教育(教育環境)」「研究」「産業界からの収入(知の移転)」の各分野の改善によるもので、「教育」は16位、「研究」は19位だった。京都大学は前回の17ランクアップに続く躍進で、「教育」「被引用論文(研究影響力)」「産業界からの収入」が改善され、「産業界からの収入」は37位だった。
 私立大学の最上位は401-500位で、前回の501-600位からランクアップした藤田保健衛生大学と初ランクインとなる帝京大学が同順位。いずれも「被引用論文」が強みで、総合順位は北海道大学、九州大学などと同じだった。
 初めてランクインしたのは帝京大学のほか立教大学、青山学院大学、東京農業大学など16校。日本医科大学、愛知医科大学、兵庫医科大学など医学系も目立つ。

●THEは「日本は堅実に改善」するも「大学の大半は衰退、静止」と指摘

 日本のランクイン校の増加数「14」は今回、アメリカに次ぐ2位で、東京大学と京都大学がそろって順位を上げたことと合わせてTHEから賞賛された。THE編集長のフィル・ベイティ氏は「日本は長期的な下落の後、主要大学と有望な新規参入大学、両方の堅実な改善によって強固な結果を残した」とコメント。
 一方で「競争が激化する中で、日本の大学の大半は依然として衰退、あるいは静止状態を維持している。人口減、高齢化、留学生獲得の地域的・国際的競争激化などの課題が今後、日本の大学の存続を脅かす可能性がある」と懸念を示し、「日本の大学が真の意味で競争力を強化するには、はるかに大きな投資と国際化の努力が必要」と述べている。

●中国の清華大学がシンガポール国立大学を抜いてアジアトップに

 日本以外の各国の状況を概観すると、今回も中国の躍進ぶりが目を引く。順位を8つ上げて22位になった清華大学は北京大学(27位→31位)を抜いて中国トップに。シンガポール国立大学(22位→23位)をも上回り、現在のランキング方法になった2011年以降で初めて、中国の大学がアジアトップの位置を獲得した。清華大学の「研究」6位はプリンストン大学、イェール大学、マサチューセッツ工科大学などを上回っている。
 香港は3年連続で5校がトップ200入り。そのうち4校が前回から順位を上げ、世界ランキングでの存在感を強固なものにしている。
 アメリカはランクイン校数を157から172に伸ばしたが、そのうち130校は成績に変化がないか下降している。トップ200のランクイン校数は62から60に減り、その半数以上が順位を下げた。ヨーロッパ、オーストラリアと同様、国際競争の激化、資金削減、移民政策の緊縮による停滞の兆しが見られる。
 イギリスはランクイン校数を93から98に伸ばしたが、日本の103校には及ばずランクイン校数2位の地位を譲った。トップ200のランクイン校数29は今回も2位を維持したが、そのうち21校は成績に変化がない、または下降している。
 このようにアメリカ、およびイギリスをはじめとするヨーロッパの大学に停滞の兆しが見られる一方で中国、香港の大学が引き続き勢いを増している。世界における高等教育の勢力図が描き替えられつつある中、日本の大学がいかに存在感を高めていけるか注目される。

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●博士号取得状況や研究関連収入等、研究力重視の指標

 「THE世界大学ランキング2019」は基本的に前回と同じ指標を用い、教育、研究、国際性など5つの分野について、13の指標で各大学のスコアを算出している。「学士課程学生に対する博士課程学生比率」や「教員に対する博士号取得者比率」、「研究関連収入」などを指標として取り入れ、「被引用論文」の比重を高くするなど、研究を重視している点が「THE世界大学ランキング日本版」との違いだ。

各分野・指標の比重は以下の通り。

◇教育(教育環境) 30%
・評判調査<教育> 15%
・学生に対する教員比率 4.5%
・学士課程学生に対する博士課程学生比率 2.25%
・教員に対する博士号取得者比率 6%
・大学の総収入 2.25%

◇研究(量、収入、評判) 30%
・評判調査<研究> 18%
・研究関連収入 6%
・学術生産性 6%

◇被引用論文(研究影響力) 30%

◇国際性(教員、学生、研究) 7.5%
・自国籍学生に対する外国人留学生比率 2.5%
・自国籍教員に対する外国籍教員比率 2.5%
・国際共同研究 2.5%

◇産業界からの収入(知の移転)2.5%


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