授業料後払いと所得連動型ローンのセット導入検討を提起―将来構想部会

●教育費の家庭負担の重さ、公的負担の限界をふまえた「たたき台」
●卒業後の所得に応じて返済額が決まる「一種の保険」
●教育の中身に対する大学の情報公開が前提条件

大学への財政支援をテーマにした中央教育審議会大学分科会の将来構想部会で、2人の委員から授業料後払い制度の導入についての検討が提起された。住民税非課税世帯を中心にした高等教育無償化の議論でも必要性が指摘された中間所得層への経済支援の切り札となるのか? 諸外国での導入例を交えて委員から示された制度の概要を紹介する。

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●選択制にすると高所得予備軍から敬遠される可能性も

 このほど開かれた将来構想部会の会合で授業料後払い制度と所得連動型ローンについて説明し、これらのセット導入の検討を提案したのは東京大学大学総合教育研究センターの小林雅之教授と関西学院大学の村田治学長。教育費の家庭負担が重く、家計所得による教育機会の格差が広がる中、公費による負担には限界があると指摘、経済支援制度のたたき台の一つとして紹介した。低所得層に対しては給付型奨学金が大幅に拡充される方向であることから、中間所得層や複数の子どもが大学等に在学する世帯の負担軽減を念頭に置いている。

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 両氏が説明した授業料後払い制度と所得連動型ローンの概要やメリットは以下の通り。

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<授業料後払い制度>
・在学中は国が授業料を立て替え、本人は卒業後、国に返す。
・日本で根強い学費の親負担主義から本人負担主義に転換し、学ぶことに対する主体性を喚起できる。
・公的負担と私的負担の両方を軽減できる。
・オーストラリアやイギリスで採用されている。
*ローンを抱えることへの負担感や不安の軽減、およびこれらによる利用回避を防止するうえで、所得連動型返済制度との組み合わせが有効となる。

<所得連動型ローン>
・卒業後の所得に応じて返済するため、低所得者ほど月々の返済額が少なくて済む。
・イギリスはじめ諸外国では、①所得に応じた返済月額、②一定の所得以下だと返済が猶予される、③一定の期間や年齢に達すると返済が免除される、④源泉徴収や類似の方法による返済、⑤無利子か有利子を設定、等の要素を組み合わせて導入されている。

<後払い所得連動型ローンのメリットとデメリット>
◎メリット
・教育投資のリスク、返済の不安に対して一種の保険として機能する(借り手と貸し手の双方にとって)。
・返済の基準が所得のみで明確なため不公平感がない。
◎デメリット
・従来通り在学中の授業料支払いも選択できるようにした場合、高所得者は通常の授業料よりローン返済額が増えるため高所得が期待される層からは選択されず、借り手が低所得層のみになる恐れがある。その結果、返済免除対象者が増えて制度が維持できなくなる可能性も。
・返済猶予の限度内の所得分しか働かないというモラル・ハザードが生じる恐れがある。

●「経営困難な大学含め、全大学を対象にすべき」

 こうした点をふまえ、小林・村田両氏は現行の所得連動型奨学金返還制度をベースに、所得制限なしで全学生を対象に授業料後払い制度を導入することを検討すべきだと提起した。選択制と比べ、親への依存から脱却するうえで有効であり、申請手続きが不要なため事務コストを削減できると説明。ただし、国の支出が一時的に急増する制度を実施するには、教育の中身や授業料の使途に関する大学の情報公開が前提条件になると述べた。
 「制度が適用される大学には条件を設けるべきか」という他の委員の質問に対し、村田学長は「経営困難な大学への対処等は他の政策に委ね、この制度ではすべての大学を対象とすべき」との考えを示した。対象となる学生については他の委員からも「親による学費負担の意識が強い日本では、選択制にしたら選ばない人の方が多く成り立たない。後払い制度に一本化しないと意味がない」との意見が出た。
 この議論に先立ち、文部科学省が大学の財政状況や費用負担の仕組みについて、諸外国と比較しながら説明。日本では私立大学を中心に学生納付金への依存度が高いことを示したうえで、「世界大学ランキング上位校は多様な財源によって運営されている」として東京大学の収入構造を例示したことなどに対し、委員からは「大学は国からの財政支援に頼るなと言いたいかのような意図を感じる」と指摘する場面もあった。


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