トップ層の厚さと裾野の広がりが日本の大学の強み‐大学改革カンファレンスでTHE幹部が評価

●2017年版を基に大学、有識者と意見交換して指標に反映
●少ないリソースで国立並みの「教育充実度」を達成している私大も
●留学生確保のチャンスが広がる中、ランキングの積極的活用を

イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE:ティー・エイチ・イー)」は3月28日、ベネッセコーポレーションとの共催で「大学改革カンファレンス」を開いた。「THE世界大学ランキング日本版2018」を発表するとともに、THEのランキングの理念を説明し、今回のランキングデータからわかった「アウトバウンドとインバウンドそれぞれに強いエリア」という新しい情報も提供した。
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 「大学改革カンファレンス2018」は大学関係者を対象に、東京都内で開かれた。これまで数回にわたって来日し、日本の大学とコミュニケーションを重ねてきた、THEデータ解析ディレクターのダンカン・ロス氏によるプレゼンテーションの概要は以下の通り。

●難関校だけが上位に来るランキングにはしない

 「THE世界大学ランキング日本版」は日本の大学の卓越性を世界に発信するために始めた。研究力を重視する従来の世界ランキングとは違って学部の教育力を重視。日本の高等教育の特性に合った指標を設定し、データを集めている。入試における選抜性の高い大学ばかりが上位に来るようなランキングにはしたくないと考えている。不合格者の数が多い大学ほど質が高いとするランキングは、大学に生産的な取り組みを促すことにはつながらない。
 2017年、初めて発表した「THE世界大学ランキング日本版」には大きな反響があり、大学の上層部や有識者とも意見交換をしてきた。日本の大学の国際性をどういう指標で見るべきかということが主な話題となり、有識者の意見、さらに多くの大学から寄せられた要望も受けて今回、「日本人学生の留学比率」「外国語で行われている講座の比率」の2項目を追加した。留学比率については、1カ月以上の留学とそれ以下のものとを分けて各大学に人数を入力してもらい、期間によって重みづけを変えた。
 一方、「教育成果」分野の「企業人事の評判調査」は前回以上に対象企業が増え、教育の有効性が高い大学はどこかという調査がなされた。卒業生が企業に提供する価値や能力として自律的に業務を遂行する力、変化への前向きさなども新たに加えて大学名を挙げてもらった。こうした「企業人事の評判調査」を「研究者の評判調査」と同じ重みづけにし、より教育力を重視した点も特筆すべき変更だ。
 「学生の留学比率」を国別ランキングのすべてで指標化してはどうかとの提案を受けたこともあるが、それは適切ではない。日本やイギリスのような島しょ国と大陸にある国とでは、「国外の大学で学ぶ」ということの価値、重みが全く違う。国別ランキングの指標はあくまでもその国の高等教育の文脈において意味があるものを採用すべきだというのがわれわれの考えだ。

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●留学比率は九州各県で高い

 2018年版の日本ランキングは、京都大学と東京大学が同率1位という結果になった。1位が2つある大学ランキングはわれわれもあまり見たことがないが、3位の東北大学も含め、ランキング上位には高得点の大学が僅差で並んでいる。その一方で、1つの分野で突出したスコアを持つ大学もある。それこそが日本の大学の卓越性と言える。
 日本では国立大学がランキングで優位にあるのは確かだが、データを詳細に分析してみると違う面も浮かび上がる。例えば、教育リソースでは国立大学のスコアが明らかに高いが、「教育充実度」で国立にひけを取らないパフォーマンスを挙げている私立大学も相当数ある。また、「国際性」は他の分野とはかなり状況が違い、国立大学が優位に立っていない。「外国人教員比率」のスコアは国立が大学全体より低いし、「日本人学生の留学比率」は国立と大学全体のスコアが拮抗している。  
 「国際性」については、エリアの特色という興味深い状況も判明した。大学の所在する都道府県別に見ると、「外国人学生比率」は関東各県が平均スコアを上回っているが、「日本人学生の留学比率」では状況が一変、九州各県が平均スコアを上回り、東日本との差がはっきりしている。これらは一体なぜなのか、今後データによって明らかにしていきたい。
 アメリカで反移民ムードが高まりイギリスがEU離脱へと動く今の国際情勢は、日本にとって留学生確保におけるアドバンテージと言える。日本は風光明媚なうえに学費が安く治安もよく、勉強するうえで実に魅力的な国。この基礎的な要件のうえにそれぞれの大学の強みを築き、アピールしていくことが重要だ。その材料として「THE世界大学ランキング日本版」に積極的に参加し、活用していただきたい。

●国内募集中心の大学にとっても連携先探しでランキングが有効

 カンファレンスの冒頭では文科省の鈴木寛大臣補佐官が基調講演を行い、「『自学の学生募集市場は主に国内なので世界大学ランキングは関係ない』というのは正しくない」と指摘。「今後は資産ベースの強化やハード・ソフト・ヒューマンリソースの活用などさまざまな面で大学間の連携が不可欠で、国内外の相手先を探し交渉する時に日本版ランキングも世界ランキングも有用だ」と説いた。
 THEディレクターのニック・ピログ氏は「『THE世界大学ランキング』にランクインした日本の大学は2017年の69校から2018年は89校に増えた。日本の大学は世界で発言権を持っているので、自学の取り組みをきちんと発信して評判を形成していくべき」とエールを送った。
 ベネッセコーポレーション大学・社会人事業本部の藤井雅徳本部長は「THE世界大学ランキング日本版 2018」の概要を説明し、進研アドの田邉心技取締役が大学におけるランキングの活用法について話した。田邉取締役は、ランキングで自学の結果を確認するだけではなく、ベンチマークする大学はじめ他大学の各項目のスコアを確認し、分析することが重要だと指摘。分析結果を改革につなげつつ、自学の強みとする部分や改革の成果を積極的に社会に発信すべきだと述べた。 

<撮影:御堂義乘>