2018.0202

次年度予算案-改革総合支援事業のプラットフォーム参加自治体に交付税

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3行でわかるこの記事のポイント

●産学官連携への地方自治体参加にインセンティブ
●研究ブランディング事業は1億円増の56億円
●事業ひも付きが多かった施設・設備費を一般公募型に

2018年度の文部科学省の私学関係予算では、私立大学等経常費補助の配分ルールが大きく変わる一方、政府の重点課題である地方創生を推進すべく、産学官連携体制の構築支援を対象枠拡大や省庁間連携によって強化する。私立大学等改革総合支援事業を中心に、予算案の注目ポイントを紹介する。
*文科省の発表資料はこちら


●改革総合支援事業の「グローバル化」はシラバスの英語化も対象に

 私立大学等改革総合支援事業は「タイプ1 教育の質的転換」の評価項目の相当数を一般補助の指標に移行することもあり、対象校数の目安が前年度より150少ない200、予算も25%減の131億円となる。タイプ1では高大接続改革に加え、アクティブラーニングの実施、FD・SDの実施、教育改革に対する学内予算措置等、文科省が先進的と位置付ける取り組みを評価して支援する方向だ。
 従来、「産業界・他大学等との連携」とひとくくりだったものから移行する「タイプ2 産業界との連携」は、概算要求時に対象として例示された「教育面を含む産学連携」「インターンシップ」等のほか、「外部資金受け入れ」も加わった。対象校数の目安は50。
 主に他地域の大学と連携する取り組みは新設の「タイプ3 他大学等との広域・分野連携」で支援し、対象校数の目安は50。
 「タイプ4 グローバル化」は、従来の「実践的な語学教育」「外国人教員・学生の比率」等に加え「シラバスの英語化」も対象として例示されている。対象校数の目安は前年度並みの80。

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●プラットフォームに参加する自治体は交付税で8割を補助

 改革総合支援事業の「タイプ5 プラットフォーム形成」では、各大学の特色化・資源集中を促し、複数大学間の連携、および自治体や産業界との連携を進めるためのプラットフォーム形成を支援する。地域における雇用創出や若者の定着促進に向け、対象を前年度の5~10グループから20~40グループに増やす。
 注目すべきは、この事業で大学と連携し、財政負担が生じる地方自治体に対して総務省からの特別交付税措置が予定されていることだ。補助率は8割になる見通し。これにより、自治体が積極的にプラットフォームに参加することが期待され、事業の実質化につながりやすいと文科省は説明する。
 例えば、地域の大学群が学生のインターンシップを支援する場合、自治体には地元企業の情報把握と提供、説明会の開催といった役割が期待される。しかし、厳しい財政状況の下、予算をねん出できない自治体も多い。特別交付税によってそのハードルを下げるべく、文科省が総務省に連携を働きかけていた。大学群が社会人の学び直しを支援する場合には、自治体が講座プログラムの開発に協力したり、受講者への経済支援をしたりすることを想定している。
 タイプ5には体制の整備状況を評価するスタートアップ型と中長期計画の実施状況を評価する発展型がある。近く選定結果が発表される2017年度の同事業では発展型の申請が多く、一部の先進的取り組みがある一方で産学官の連携基盤構築が手つかずの地域も多いと言えそうだ。文科省は2018年度から始まる自治体への財政支援によって基盤構築が進むことを期待している。

●経営強化集中支援事業は充足率によるタイプ分けの廃止を検討

 学長のリーダーシップの下、特色ある研究で全学的なブランド力向上を図る取り組みを支援する私立大学研究ブランディング事業の予算額は、前年度から1億円増の56億円で、前年度同様50校程度の選定を予定している。従来、施設費・設備費と一体的に支援していたが、次年度は経常費のみの支援となり最大5年間、1校当たり年額2000万~3000万円程度となる予定だ。
 3大都市圏以外にある収容定員2000人以下の大学等が対象となる私立大学等経営強化集中支援事業の予算は、前年度の40億円から半分以下の18億円に縮小、対象校数の目安も150から40~50に減る。これに伴い、「タイプA・経営強化型(収容定員充足率80~107%)」と「タイプB・経営改善型(同50~80%)」という従来の区分は廃止する方向で検討されている。
 従来、経営状況の把握・分析や組織運営体制の強化等に関する評価項目で点数化し、総合点で対象校を選んでいたが、2018年度からは経営改革計画の内容を審査する方式に変更。入学者数の増加、収支状況の改善、組織体制の強化等のKPIを盛り込んだ計画と経営改善状況を基に計画の妥当性、実効性を審査する。点数化のための評価項目は大幅に簡素化する方向だ。 
 研究ブランディング事業等とひも付きでの施設費・設備費の支援をやめる一方、一般公募型の私立大学等教育研究装置・設備費の予算を13億円増やして17億円とした。これは、施設費等の予算が各種事業とひも付く形にシフトした結果、老朽化した施設の更新ができないという大学からの指摘に対応したものだ。
 授業料減免等、学生の経済的負担軽減については28億円増の130億円を計上。対象人数を5.8万人から7.1万人に増やす。