世界大学ランキングをめぐりTHE幹部と大学が意見交換

●THEとベネッセが大阪と東京でランクイン大学との会議を開催
●THEが「大学のグループごとでのランキングも検討したい」とコメント
●大学生調査は満足度ではなく学生の成長支援に焦点をあてる

Times Higher Education(THE)とベネッセコーポレーションはこのほど大阪と東京で、「THE世界大学ランキング」(以下、世界ランキング)、「THE世界大学ランキング 日本版」(以下、日本ランキング)のいずれかにランクインした大学との情報交換会を開いた。ランキングに対する大学側の理解を深め、意見や要望を反映してより良いランキングにすることがねらい。11月の東京会場の分科会では、2018年の日本ランキングで導入される学生調査は「学生の成長を支援する教育がなされているか」という視点をもつと説明された。


●スコア向上には学外ネットワークの構築も必要

 情報交換会は10月の東京(参加数43大学)に続き、11月22日に大阪(同12大学)、24日に東京(同17大学)でそれぞれ開かれ、THEの幹部が参加した。11月24日の東京会場での内容を紹介する。
 会議ではまず、THEとベネッセからランキングに関する情報提供がなされた。
 ベネッセは大学による「ランキングマネジメント」という考え方を提唱。「ランキングをどう高めるか」「ランキングで何ができるか」という二つの側面でのマネジメントが重要だと説明した。世界ランキングと日本ランキングそれぞれにおけるスコアの伸ばし方を考えるために、各項目を「資金」「教育」「研究」「評判」「国際」といった「対応策」で分類し、何らかの学外ネットワークが影響を及ぼすという仮説を提示した。
 THEはこれまでの世界ランキングのデータを基に、日本とアジア、および中国とのスコアを比較し、研究関連収入が日本の大学の弱点であることを示した。そのうえで、大学ランキングの意義をあらためて説明。「世界のステージの中で自学の強みと課題を把握し、改革につなげることが重要だ。ランキングに利用されるのではなく、ランキングをうまく利用してほしい」と述べた。

●「自学の強みとする項目のアピールを」との助言

 THEとベネッセからの情報提供の後、分科会で意見交換を行った。
 日本ランキングにランクインした大学の分科会では、まず、各大学がランキングの結果をどう受け止めているか紹介。「これまで入試難易度によるランキングしかなかったところへ教育力のランキングができ、そこで評価されたことがうれしい」「国立大学や医歯薬系の大学と並ぶ形でランクインし、学内が沸いた」「予想より上位に入ることができ、今後これをいかにキープするかが課題」といった声が聞かれた。ある大学は「日本ランキングを始めると聞いた時は来るべき時が来たかと思った。ランキングは実施主体とのコミュニケーションが大事であり、積極的に意見を出していきたい」と述べた。
 続いて日本ランキングに関する質疑応答、意見交換を行った。大学からの主な意見・要望、およびそれに対するTHEとベネッセのコメントは次の通り。

<属性が大きく異なる大学間でのランキングの妥当性>
「全ての大学を一律の指標で見るようなランキングでは、本学のような小規模大学は評価されにくい」
「中小規模の私立大学と国立大学や大規模私立大学とを同列で比べるのは適切ではない」
「国立大学と私立大学とを分けてランキングを出す考えはないか」

●THEのコメント
今後、大学の属性で分けたグループ単位でランキングを出すことも検討したい。どのようなグループ分けが適切なのか、ぜひ意見をうかがいたい。

●ベネッセのコメント
日本ランキングにランクインした大学の中には『〇〇エリアで国際性トップ!』という具合に、自学の強みである項目に焦点を絞って広報に活用している例もある。ぜひ、強みを前面に出してうまくアピールしていただきたい。

<ランキング項目の公平性>
「国立大学と私立大学とでは国からの財政支援に大きな差があり、『学生一人あたりの資金』という項目は公平性を損ねる」

●THEのコメント
資金力は教育力を担保する基礎的な情報であり、受験生や学生が知りたいことなので、ランキング項目として入れている。

<ランキング項目の妥当性>
「評判調査の内容に偏りがあったり国際性の項目が粗かったりと、ランキング項目には課題がある」

●THEのコメント
ランキング項目は、日本の高等教育に対するニーズや高等教育政策に合致させるという方針で決めている。日本政府が海外留学の送り出しを政策課題とし、各大学も力を入れていることをふまえ、2018年は留学経験のある学生比率を項目に加える予定だ。
ランキング項目は常に見直し、進化させていくので、大学からの意見・提案を歓迎する。

<大学生調査の内容>
「2018年の日本ランキングでは大学生調査を入れるとのことだが、成長させるために負荷をかける教育をすると、学生満足度は下がりがちだ。どのようなスコアになるのか懸念がある」

●THEのコメント
大学生調査は教育満足度に焦点を当てるのではなく、学生のエンゲージメント・関与を聞くものだ。例えば、大学は学生の能力レベルを引き上げるような課題を与えているか、クリティカルシンキングをサポートしているか、今学んでいることが社会で役立ちそうか、教職員とのコミュニケーションの機会があるか、受講中のコースを家族や友人に勧められるかといったことを聞く。
これらは、教育に重きを置く大学にとって有益な質問と言えるだろう。欧米の大学とのスコア比較もできるようになるが、日本は他国よりも高くなると予想している。

 他に、大学からは次のような要望も挙がった。
「外国人学生を集めるための環境整備として重要な『英語による授業の割合』を国際性の項目に加えてほしい」
「国際性の項目や評判調査の中身を充実させるため、日本に留学生を送り出している国での調査なども加えてはどうか」

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2018年の日本ランキングはデータコレクション・ポータルへの各大学の入力が進んでいる。結果の発表は2018年3月末を予定している。


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