THE世界大学ランキング日本版の指標に海外留学を追加~カンファレンスで発表

●カンファレンスで、世界ランキング、日本ランキングのランクイン大学が取り組みや活用法を報告
●建学の理念や大学の基本方針に基づく取り組みが結果的にランクインにつながる
●日本の大学の情報が世界中に発信される意義を確認

大学ランキングでパートナーシップを組むイギリスのTimes Higher Education(THE)とベネッセコーポレーションによる「第2回大学改革カンファレンス」が10月16日、東京都内で開かれ、全国の大学から学長・理事長14人を含む250人が参加した。最新の「THE世界大学ランキング」(以下、世界ランキング)「THE世界大学ランキング 日本版」(以下、日本ランキング)にランクインした4大学の関係者が、ランキングの意義や自学での取り組みについて講演した。主催者から、次年度の日本ランキングで、海外への留学や外国語での授業実施を「国際性」の指標として導入する計画があると発表された。


●「指標や仕組みに対する大学の率直な意見が欲しい」

 カンファレンスの冒頭で講演したTHEのデータ・解析ディレクターのダンカン・ロス氏は、大学は狭いエリアの中だけで競争するのではなく、世界的な視野で自学の状況を捉え、改革することが重要だと強調。「学生は高等教育に大きな投資をするので、優れた教育・研究をしている大学がどこか知る権利がある」「ランキングは賢く使いこなすべきで、ランキングに使われてはいけない」「順位を上げること自体に意味があるのではなく、自学が何に力を入れているか、課題にどう取り組んでいるか世界に発信する手段としてランキングに参加してほしい。それが大学全体の質を上げることにもつながる」と呼びかけた。従来の研究重視のランキングから教育重視へとシフトしていくと宣言し、「指標や仕組みについて日本の大学から率直な意見をいただき、反映していきたい」としめくくった。
 ベネッセコーポレーション学校カンパニー大学・社会人事業本部の藤井雅徳・本部長は、高校から海外トップ大学への進学を支援するプログラムの2016年度の受講者について、「東京大学と海外の著名大学の両方に合格した18人全員が海外大学に進学した」と、高校生の大学選びの視野が世界に広がり出した現状を紹介した。

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●地方大学にとっては、ランクインが全国的なアピールにつながる

 大学からの基調講演は次の各氏が登壇、大学ランキングに対する自学の考え方や取り組み、結果の活用法、THE大学ランキングに対する要望や期待を話した。
○東北大学(2018年の世界ランキング201-250位、2017年の日本ランキング2位):米澤彰純インスティテューショナル・リサーチ室長)
○会津大学(世界ランキング601-800位、日本ランキング23位):程子学副学長
○桜美林大学(日本ランキング111-120位):畑山浩昭副学長
○立命館アジア太平洋大学(日本ランキング24位):近藤祐一入学部長
 4氏の話でおおむね共通していたのは、「建学の理念や大学としての基本方針に基づき、数値目標を設定するなどして改革に取り組んだ結果がランクインに結び付いた」「ランキングの結果分析を次の改革に生かす」ということだった。特に地方大学にとってはランクインすることが全国に大学名と特色をアピールする効果があり、日本の大学名が世界に発信される意義も大きいとの声が聞かれた。現在のランキングの仕組みに課題はあるが、社会が大学を評価する基準を変え、それによって大学を変えていくうえで大きな意義があるとの認識、社会や大学の声を反映しながらより良いランキングに育てていくべきといった期待が語られた。それぞれの講演要旨は次の通り。 

<東北大学の米澤室長>
 各種ランキングなど、学外データを含むさまざまな指標を参照しながら経営・教育・研究・社会貢献の活動を点検・評価している。ランキングへの参加を通してよりよいランキング、指標や評価方法の研究・開発に関わることにも意義がある。
 ランキング結果を全学で把握・分析し、改善につなげる。THE世界ランキングは指標の数が多く勉強になるが、一方でわかりにくい面もある。本学の国際共著論文の割合は国内では高い水準にあるが、欧米の大学に比べると半分程度といった課題を把握し、論文数とその引用数を増やす意義を教員個々に説明するなど、取り組みに反映している。
 大学ランキングは私の研究対象でもあるが、海外のランキング関係者と日本のランキング関係者は教育に対する考え方が違い、従来、両者が直接、議論することはなかった。ベネッセとTHEとのパートナーシップによって、「入試難易度よりも教育・研究の環境を重視する」という大学に対する国際的な観点が日本に持ち込まれた意義は大きい。大学の多様なあり方、見方を促すようなランキングを模索してほしい。
 
<会津大学の程副学長>
 1993年の開学以来、「ICT」「グローバル化」「ベンチャー起業」の3本柱で教育・研究を進めてきた。ランクインの主要因となった国際性の高さの背景には、テニュア・昇進・幹部登用などにおいて外国人教員にも平等な機会を与えていることがある。歴史が浅い地方の小規模大学にとってランクインは知名度アップの好機となった。
 指標の見直しによって順位は変わるのが当然で、そこに一喜一憂してはいけない。大学の理念と特徴をふまえ、今後の方向性と目標を決める。ランキングでは評価されない大学発ベンチャーの数も、本学の強みとして引き続き力を入れる。ランキングの結果は、自学と似た属性でロールモデルとすべき大学を特定するのに活用できる。積極的に交流して情報を収集し、その実績を支える経験に学び自学の改革に生かしたい。
 
<桜美林大学の畑山副学長>
 「キリスト教主義に基づく国際的な人物の育成」という建学の理念に基づく取り組みが、日本ランキングの「教育充実度」62位、「国際性」30位という評価につながっていると受け止めている。教育充実度を高める施策として、入学後に専攻を決めるレイトスペシャライゼーション制度や幅広い学びを可能にする学群制がある。また、外国人学生比率向上につながる施策として、各学群の科目を組み合わせてプログラム化し、日・英・中の3言語で教える仕組みなどがある。一方、留学生送り出しの推進のため、アメリカや中国に現地事務所を設け、受け入れ校と交渉しながら教育プログラムのカスタマイズを担ってもらうという取り組みもしている。
 日本ランキングは大学の本質や機能を問い直し、新しい指標や基準によって大学を変えるものだと期待している。
 
<立命館アジア太平洋大学の近藤部長>
 2016年にビジネス教育の国際認証「AACSB」を取得してから提携協定先の大学が一変し、今やグローバルな土俵に上がっておかないと大学の発展性がないと思い知らされた。「学生の50%は外国人学生」という開学時の数値目標があり、かつては中国・韓国出身者が大部分を占める形で達成していたが、多様性の確保という本質に立ち返ってアセアン諸国出身者の受け入れにシフトし、バランスを改善した。出身地が違う学生が同じ教室にいるだけでは意味がなく、多様性のメリットを学生が感じられるような教育の開発が大事であり、英語による授業も、真に必要なのはグローバルスタンダードで教えることだ。
 今のTHE大学ランキングは、規模や機能が違う立命館大学と本学を同じ指標で見ている点など、やや整理が必要だと考えている。一般の人には、それぞれの指標が何を意味するのかわかりにくく、構造化して説明する工夫が求められる。大学を共通の指標で測りつつ、個々の大学のユニークさも表現できるようなランキングを期待しているし、大学側もそのような在り方を促す分析・発信力が必要だ。

●日本ランキング2018の大学情報データ登録開始

 カンファレンスの終盤、2回目となる2018年の日本ランキングについて、以下の改善予定がベネッセから説明された。
① 「教育充実度」の指標として大学生調査を導入。多くの大学からの要望を反映するものだ。学生が大学発行のメールアドレスを使い、ベネッセが開設した専用アンケートサイトで回答する方式。
② 「国際性」の要素として「日本から海外への留学」「外国語での授業実施」等を追加。
 2018年の日本ランキングはデータコレクション・ポータルへの各大学の入力が始まっていて、12月8日に入力が締め切られる。結果の発表は2018年3月末を予定している。
 
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