2017.0105

文科省次年度予算案-改革総合支援、研究ブランディングの事業を強化

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3行でわかるこの記事のポイント

●私立大学等経常費補助は2016年度と同額を維持
●改革総合支援事業に「プラットフォーム形成」を新設
●研究ブランディング事業は採択校数を拡大

2017年度の文部科学省の予算案がまとまり、私立大学等経常費補助による2つの事業で支援の強化が盛り込まれた。いずれも学長のリーダーシップの下での組織的な改革を支援する事業で、各私立大学には、全学的な議論とビジョンの共有にもとづく積極的なチャレンジが期待されている。


●地域の大学群と自治体、産業界の連携を促進

 2017年度予算案における私立大学等経常費補助は3153億円で、2年続けて前年度と同額が維持された。経常的経費を支援する一般補助は13億円減の2689億円で、特別補助は13億円増の464億円が計上された。
 支援を強化するのは、私立大学等改革総合支援事業と私立大学研究ブランディング事業。
 教育の特色づくりのための改革に組織的に取り組む大学を支援する私立大学等改革総合支援事業は、従来の「タイプ1 教育の質的転換」「タイプ2 地域発展」「タイプ3 産業界・他大学等との連携」「タイプ4 グローバル化」に加え、「タイプ5 プラットフォーム形成」を新設する。
  「タイプ5」は地域の複数の大学グループによる申請を受け付け、自治体や産業界等と連携するプラットフォームの形成を支援する。エリア版高等教育グランドデザインとも言うべき中長期計画の策定、地域の発展につながる産学官の連携体制の構築を促すことがねらい。大学間でのリソースの共有によって運営を効率化して自学のリソースを特色強化のために集中投下したり、自治体や産業界からの奨学金によって学費負担を軽減したりすること等が期待されている。
 学生募集が厳しい地域を中心に5~10の大学グループの採択を予定、一般補助と特別補助合わせて9億円がタイプ5にあてられる。
 文科省の有識者会議「私立大学等の振興に関する検討会議」では、委員の間から「学生募集の悪化等で大学が地域からの撤退を決めてから地元の自治体が慌てるケースが目につく。地域にとっての大学の価値をきちんと評価し、地域をあげて継続的に大学を支援する仕組みをつくるべきだ」「地方では大学間の連携によって経営基盤の強化と共生が可能で、文科省が積極的に連携を促してほしい」といった意見が出ていた。私立大学等改革総合支援事業のタイプ新設に、こうした提言が反映された。
 「信州高等教育支援センター」の設置や「長野県高等教育振興基本方針」の策定等、積極的な高等教育支援を打ち出す長野県等を念頭に、初等中等教育機関と比べ地元自治体との関係が希薄な私立大学に、意識の転換を迫る施策とも言える。

●「大学の看板となる研究」の旺盛な申請意欲に応える

 一方、学長のリーダーシップの下、大学の看板となる研究を組織的に推進し、成果を発信する取り組みを支援する私立大学研究ブランディング事業は、採択校を10~20校増やして計50~60校にする予定で、予算を5億円上積みした。初回となる2016年度、40校前後の採択枠に対し計198大学が申請。採択率20%の狭き門となったこと、採択からもれた中にも大学のブランド構築につながりそうな取り組みがあったことなどから、枠を広げることにした。

【2017年度私立大学等関係予算案の概要】 
 *( )内は2016年度予算額
●私立大学等経常費補助 3153億円(3153億円)
  一般補助 2689億円(2701億円)
  特別補助 464億円(451億円)
 ・私立大学等改革総合支援事業 176億円(167億円)
 ・私立大学研究ブランディング事業 55億円(50億円)
 ・経済的に修学困難な学生に対する授業料減免等の充実 102億円(86億円)
  (減免対象人数は2016年度の約4.8万人から約5.8万人に増加)