私大の年内入試は志願者数、合格者数とも前年より増加(3/11時点)

●志願者数の対前年度指数は103.5で一般選抜の志願動向に影響
●近畿で志願者の総数・増加数の大きな大学が目立つ
●進学校でも総合型選抜を志向する生徒が増加

2022年度の年内入試(総合型選抜と学校推薦型選抜)の志願者数は対前年度指数103.5(3月11日時点)で、一般選抜の志願動向と対比すると、受験生の「年内入試シフト」の継続が見てとれる。合格者数も増加し、大学側も早めの入学者確保を図る傾向にある。成績上位層でも総合型選抜での受験を希望する生徒が増えるなど、高校側の変化に対応した学生募集の検討が急務だ。


●大学は年内入試の定員を拡大

 2016年度からの入学定員管理厳格化によって一般選抜が難化し、受験生の年内入試シフトが進んだ。大規模大学による合格者絞り込みが終息した後も、その傾向は続いている。2021年度入試ではコロナ禍の影響が加わり、一般選抜が実施されるか不安を感じた受験生の間で、「年内入試で手堅く進学先を決めておきたい」という安全志向が働いた。2021年度の年内入試志願者数の対前年度指数は93.0で、一般選抜の指数85.8を7ポイント以上、上回った。
 こうした受験生の動きに加え、大学側も早めに入学者を確保するために年内入試の定員を拡大。面接やプレゼンテーションなど、選考をオンライン化する大学もあり、遠方から受験しやすくなったことも2022年度入試の志願者増につながっている。
2割近い大学が総合型、学校推薦型でオンライン入試-文科省調査(Between情報サイト)

●176校(全私大の30%)のデータで総合型、学校推薦型ともに志願者増

 進研アドと連携する豊島継男事務所では、2021年度入試の総合型選抜、学校推薦型選抜の志願者数が非公表、または不明の大学を除く私立大学を対象に2022年度入試の志願者データを集めている。志願者数をウェブサイトで公表している大学、および同事務所が独自にデータの提供を受けている大学を合わせ、3月11日現在176校(全私立大学の30.0%に相当)のデータを集計。その後の公表データも追加し、5月末に最終とりまとめをする予定だ。
 3月11日時点の年内入試志願者数は下表の通り。

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※非公表の大学が多い指定校推薦、および帰国生や付属校対象の入試は除外している。
※12月までに実施された特別奨学生選抜(給費生選抜)も除外。
※総合型選抜と学校推薦型選抜の志願者数を合算して公表している大学があるため、表中および本文の「総合型+学校推薦型」の志願者数は各選抜の志願者数の合計と等しくならない。

 「総合型+学校推薦型」の志願者数は30万7611人で、対前年度指数は103.5。総合型選抜の志願者数は5万8122人で指数104.3、学校推薦型選抜の志願者数は24万5599人で指数103.2。18歳人口の指数は98.1なので、両選抜とも志願者増と言える。これら年内入試の志願者増が、一般選抜の志願者数が大幅減の前年並みにとどまった(対前年度指数100.8、対2020年度指数86.8)要因の一つとなっている。
2022年度入試の私大一般選抜の志願者数は大幅減だった前年並み(Between情報サイト)

●近畿の大学は併願可の年内入試が多い

 集計対象176校における両選抜の志願動向について詳しく見ていく。
 総合型選抜の志願者数が1000人を超えたのは12校で、上位5校は京都芸術大学(5350人)、畿央大学(4123人)、同志社女子大学、神戸女子大学、立教大学。志願者数が前年より増えた大学と減った大学は72校ずつで同数だった。200人以上の増加は畿央大学(894人増)、京都芸術大学(471人増)など5校。一方で100人以上減った大学も5校ある。
 学校推薦型選抜の志願者数が1万人以上の大学は5校で、近畿大学、龍谷大学、摂南大学、追手門学院大学、京都産業大学と近畿勢が占めた。この順位は2021年度と同じ。これらに次ぐ志願者数5000人以上の9校もすべて近畿の大学だ。志願者数が前年より増えたのは66校(44.0%)で、減ったのは84校(56.0%)。1000人以上増えたのは近畿大学(7688人増)、大阪経済法科大学(4052人増)、龍谷大学、佛教大学、京都橘大学の5校。一方、1000人以上減った3校も近畿の大学だ。 
 総合型選抜、学校推薦型選抜とも近畿の大学で志願者が多いのは、このエリアには募集人員や実施回数が多い大学、併願可とする大学が多数あるためだ。入試日程や前年度の志願倍率を見て受験生が動くため、年度ごとに志願者数が大きく変動する大学も目立つ。

●志願者数増は66校、合格者数増は95校

 下の表では、集計対象176校のうち合格者数も公表している126校について、志願者数と合格者数をまとめている。

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 126校中、志願者数が増えたのは66校だが、これを上回る95校が合格者数を増やした。受験生が一般選抜まで残らないことを見越し、入学者の早期確保に動いた大学が多いと考えられる。「志願者数÷合格者数」(≒実質倍率)は前年度の2.8倍から2.5倍に下がった。
 年内入試で手堅く入学先を決める、あるいは併願可能な年内入試で合格したうえで、一般選抜では志望度の高い大学のみ受けるといった動きが今後、成績上位の受験生の間にも広がると予想される。これによって、一般選抜を受ける母集団はさらに縮小しそうだ。

●総合型選抜で併願可の枠新設、対面イベントの実施により志願者が増加

 首都圏のある中堅私立大学は、総合型選抜で30%、学校推薦型選抜で40%、志願者が増えた。合格者数は前年並みだ。いずれも募集人員は変えず、総合型選抜で併願可の枠を設けた。前年度と違い、人数制限つきながら対面でオープンキャンパスを実施できたことも増加の要因だと振り返る。
 この大学の入試担当者は「かつては、AO入試といえば汎用的能力は高いが基礎学力は低めの受験生が集まるイメージだったが、近年は進学校でも総合型選抜を志向する生徒が増えている。新入生オリエンテーションで実施したPBL活動でも、一般選抜と総合型選抜、どちらの入学生か見分けがつかなくなった」と話す。次年度以降の入試について「経済的理由等によって、早い時期から受験生が総合型選抜志向と一般選抜志向とに分かれていくのでは」と予想する。

●低学年から進学先の選択肢に上がるようにする仕掛けが必要

 18歳人口が減少し、現役受験率の上昇も頭打ちになっているため、この先、受験人口の減少が続くのは間違いない。学生募集が厳しくなる中で受験生の年内シフトを見越し、年内入試での入学者獲得に力を入れる大学が増えている。今後はそこでの競争が一層厳しくなるはずだ。 
 高校の進路指導に詳しいベネッセコーポレーション高大接続戦略部の仁科佑一氏は、年内入試の活発化によって高校の進路指導、受験生の志望校選びが変わると指摘。「自学のターゲットである受験生のこだわりや志向に合う学びができることが伝わるよう広報を工夫し、入試直前ではなく、低学年から進学先の選択肢に上がるようにする仕掛けを検討すべきだ。年内入試における高校の変化を見据え、広報活動を転換する時期になっている」と、前年踏襲の考えで計画を進める大学に警鐘を鳴らす。


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