データから導く「円滑な高大接続のための年内入試」のポイント<後> 

●高校での年内入試指導は、提出物や当日課題の対策が中心
●3年間を通した資質・能力の育成で年内入試を指導する高校も
●大学は「恒常的な指導をする高校」との対話を通して選抜方法の開発を

いかにすれば、学校推薦型・総合型選抜によって円滑な高大接続を実現できるのか-。ベネッセ文教総研の村山和生主任研究員による考察の前編では、アセスメントデータをもとに「学部・学科の教育目標を理解している」など、年内入試による入学者の強みを明らかにした。後編では高校の進路指導の実態を分析し、年内入試の優越性を最大化するための高大連携の方向性を探る。

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●「3年次の期間限定の指導」から「3か年間の日常的な指導」へ

 今回は、ベネッセ教育情報センターが2021年に高校を対象に実施した調査から、学校推薦型・総合型選抜の指導に関するデータを紹介する。延べ928件の指導事例から指導ポイントとなるキーワードを抽出し、その内容を分類したのが図6である。

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 最も多く含まれていた指導ポイントは面接や小論文、プレゼンといった「B.当日課題への対策」で、全体の約5割を占める。次いで多いのが志望理由書、活動報告書、学修計画等の本人記載書類や、課題レポートといった「A.事前提出物対策」で、約2割あった。これら2つで全体の7割となる。つまり、現状の学校推薦型・総合型選抜の指導は提出物や課題への対応が中心で、3年次の期間限定的な指導が主流となっている。
 ここで着目したいのは「C.恒常的教育活動」として、これらの選抜の指導をしている高校の存在だ。全体の1割に届かないものの、これらの高校では3か年間を通して資質・能力の育成や大学研究が行われている。探究学習はその具体的な手法であり、次期学習指導要領で重視される「総合的な探究の時間」の先取りと見ることもできる。
 今後、新課程への移行に伴い、このような指導を行う高校は増えていくと予想される。つまり、学校推薦型・総合型選抜に関する指導は、現状の「3年次の期間限定的な対策」から「3か年間を通した日常的な指導」へのシフトが進む可能性がある。そのような指導においては、高校での日々の授業で学ぶ内容や経験が大学での学びに直結することを生徒自身が理解すると考えられるため、「早期合格者が高校での学びから離脱する」という懸念の解消も期待できる。

●新課程への移行は高校との対話を深めるチャンス

 学校推薦型・総合型選抜での受け入れ拡大を考えている大学に求められるのは、「高校3か年での日常的な指導の成果を適切に評価する選抜方法」の開発ではないか。そのためには、恒常的な教育活動としてこれらの選抜の指導を行う高校との対話を深め、何をどのように評価すれば生徒に学びを促すことができ、合格後にどのような課題を提示すればその学びを大学入学まで継続させる動機付けになるのか、総合的に検討する必要がある。高校側に解を求めるだけではなく、自学の「学校推薦型・総合型選抜で入学した学生の学びのデータ」を高校と共有することも有効だと思われる。
 新課程で設けられる「総合的な探究の時間」をはじめ、大学が高校との対話を深められる場は増えるだろう。しかし、「新課程入試となる2025年度入試から検討しよう」というスタンスでは成果は期待できない。新しい選抜方法がねらい通りに機能するには、複数年にわたる実践と微調整が不可欠だ。
 まずは自学と関係の深い高校との対話を開始し、新課程入試の受験生を的確に評価できる選抜方法を協創していくという姿勢が重要となる。これによって、学校推薦型・総合型選抜に限らず、一般選抜も含めた円滑な高大接続、すなわち、高校での日常的な学びが受験対策によって途絶えることなく、大学での学びに直結するような制度設計が可能になるはずだ。

村山和生(むらやま・かずお)
ベネッセコーポレーションにて、ベネッセ教育総合研究所高等教育研究室シニアコンサルタント、『VIEW21大学版(現在は『Between』に統合)』編集長、一般財団法人大学IR総研副事務局長(兼務)などを歴任。2021年からベネッセ文教総研の主任研究員として、高等教育領域を中心に「学修成果の可視化」「IR」等について調査、研究、および情報発信している。

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