探究学習評価型入試② 研究成果の発表経験を重視-工学院大学

●SSH校の発表会の支援など、高大連携の実績を基に新入試を設計
●基礎学力調査とプレゼンテーションの2段階で選抜
●併願を認め、奨学金制度でアピール

高校の探究学習に着目した新たな入試を紹介するシリーズの2回目は、工学院大学の「探究成果活用型選抜」を取り上げる。2021年度入試で総合型選抜として初めて実施されたこの入試は、高校で理工系分野の探究学習・課題探究に取り組み、成果発表の経験があることを出願要件にしている。アドミッション・ポリシーで掲げる「科学技術をチームで共に学び、国際社会の中でそれを生かす意欲と関心とを有する」人材を発掘する。
*大学のウェブサイトでの説明はこちら
探究学習評価型入試① レポートで意欲を測る一般選抜-産業能率大学


●プレゼンテーションで主体性や意欲を評価

 工学院大学(東京都新宿区)は先進工学部、工学部、建築学部、情報学部を置く4学部15学科の大学で、入学定員は1399人。
 2020年度に導入した総合型選抜「探究成果活用型選抜」は、「高校の総合的な学習(探究)の時間における課題探究学習等の経験者で、その経験や成果を生かして大学進学後も専門分野を学びながら技術者、研究者を目指す意欲のある」受験生を募る。理工系分野に興味を持ち、学校の授業等でテーマを設定して探究学習に取り組み、学校内外でその成果を発表した経験のある生徒が対象だ。探究テーマと関係なく、どの学部・学科にも出願できる。
 「多面的基礎学力(数学・英語の基礎的運用能力)を有する」「志望する分野の科学技術をチームで共に学び、国際社会の中でそれを生かす意欲と関心とを有する」という全学のアドミッション・ポリシーに基づく2段階の選抜で、多面的・総合的な評価を実施。11月上旬の第1次選考では数学と英語の基礎学力調査、および「探究活動書類」の審査を実施。通過者には11月下旬の第2次選考で探究学習の成果をプレゼンテーションしてもらい、質疑応答とあわせ主体性や意欲を評価する。

●SSH校と連携、コロナ禍でオンラインシンポジウムを開催

 新入試導入の背景には、工学院大学が取り組んできた高大連携がある。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校をはじめ、理数系教育に力を入れる高校とのネットワークを築いてきた。
 2018年から都内SSH指定校の合同発表会に会場を提供する一方、各高校からの依頼に応えて教員が講演をしたり審査員として関わったりしてきた。これらをきっかけに、都内や埼玉県のSSH校や理数教育強化校と連携協定を締結。探究学習の進め方や研究内容についてアドバイスし、各高校の成果発表会の運営サポートを続けている。
 2020年度はコロナ禍によって対面形式の発表会が中止になった。そこで、同大学は協定校との連携の下、自学のインフラを提供してオンラインシンポジウムを多数、開催。オンラインの利点を生かし、国内各地の高校に加えて韓国やシンガポールなど、海外の高校が参加した発表会もあった。英語によるものを含め、合計で口頭発表約300件、ポスター発表1000件以上の充実したイベントが展開された。
 さらに、自学の研究成果を公開する「工学院大学機関リポジトリ」にSSH校と連携して探究データべースを設け、生徒の発表資料を掲載。探究学習に取り組む高校がテーマ選びなどの参考情報として活用できる仕組みを構築した。

●成績優秀者は授業料を半分に減免

 高大連携の活動を通して探究学習の現場に触れてきたことが、その成果を評価する入試の発想につながった。入試広報部の田中祥貴次長は「理工系分野の探究学習は大学の研究と親和性があり、大学での学びの基礎づくりになっている」と評価する。「2022年度からの新課程実施によって探究学習に取り組む高校が増えればそれに対応する入試のニーズも拡大するだろうと考え、探究成果活用型選抜をスタートさせた」。
 他大学との併願を認める一方、自学を選んでもらうためのアドバンテージとして奨学金制度を設けた。各学科の合格者のうち成績優秀者は年間授業料を半分にし、一定の成績を維持すれば4年間、減免が適用される。「160以上の研究室があり、多彩なテーマと充実した研究環境を提供できることにも魅力を感じてもらえれば」と田中次長。
 2020年度の学生募集活動はコロナ禍の影響を受け、新入試を十分に浸透させられなかったが、それでも「入学後の活躍が十分、期待できる受験生が受けてくれた」(田中次長)。2年目となる2021年度入試に向けて、探究成果活用型選抜に関心を寄せる受験生が増えているとの感触があり、期待しているという。 

●「高校は探究学習に課題を抱え、大学のサポートを求めている」

 同大学は今後も高校の探究学習を積極的に支援し、そのネットワークを生かして入試における評価の観点など、知見を蓄積したい考えだ。「探究学習を行っている高校からさまざまな相談があり、テーマ設定のための講義を依頼されたり、探究内容に対する専門的なアドバイスを求められたりする。どの高校も課題を抱え、大学がサポートできる部分は多い。高校の置かれた環境や方向性によって助言すべき内容は様々あるが、できるだけ対応していきたい」(田中次長)。
 「探究成果活用型選抜」は可能性と同時に課題も抱えつつ、高校での探究学習の広がりを見ながら調整を続け、育てていくことになりそうだ。田中次長は「合格者に対しては入学前教育など、丁寧なフォローで学習習慣の維持を促す。各種データで入学後の学習成果を分析し、継続的に入試を検証していく予定だ。入学後の成長をフィードバックするなど、高校との連携を大切にしていきたい」と話す。


*関連記事
早稲田大学教育学部が共通テスト5教科7、8科目を課す新入試を新設
入試改革の有識者会議が提言-改革総合支援事業等による取り組み促進へ