入学前教育への期待②東京家政学院大学-学生募集や入試改革に生かす

●入学前のデータ取得を目的にプログラムを刷新
●学科長からの推奨メッセージ動画で受講率が96%に
●成長を可視化し、アドミッション・ポリシーの検証へ

年内入試による入学者が増える中、入学前教育は高大接続の重要な要素になっている。「早期合格者の学習習慣の維持」にとどまらないねらいと戦略を持ってプログラムを実施する大学もある中、3大学の事例をシリーズで紹介する。

入学前教育への期待①城西大学-基礎学力と学習習慣の定着で中退を予防
入学前教育への期待③医療創生大学-教育力による評価で生き残りを図る


●次回からは全入学予定者への必修化を検討

 東京家政学院大学は2021年度入学者から、入学前教育を刷新した。従来は年内入試による入学者を対象に、高校までの復習を中心とするDVDでの学習か、課題図書やレポート作成など、学科ごとの課題のいずれかを選んでもらっていた。2021年度からは入学後の学びについて理解しながら内容を先取りする外部のプログラムを採用、総合型選抜(Ⅰ期~Ⅳ期)と学校推薦型選抜による入学予定者全員に受講を課した。次年度からはすべての入試方式を対象に必修化を検討している。
 刷新のねらいは入学前の学生データを取得し、入学後のデータとつなげて分析することだ。同大学は、GPA以外のデータも積極的に活用して学生の成長を可視化しようと、3年前に汎用的能力を測るアセスメントテストを導入。入学時から卒業まで継続的に実施して学生にもデータをフィードバックし、自身の成長の把握、強みや課題の発見を促す取り組みをしている。そこに入学前のデータを加えれば、入学前から卒業に至るまで、大学の学びを通じた成長度をより明瞭にできると考え、「データが取れる入学前教育」に切り替えたのだ。新しいプログラムは学力面のデータはもちろん、アンケートで意識や学習姿勢など、定性データも取れる点に着目して選んだ。

●受講後アンケートでは「授業が楽しみ」などの前向きな声

 より多くのデータを入手できるよう、受講率を上げる工夫も考えた。必修とは言え、事務的に案内するだけでは大学のねらいが理解されず、受講しない学生が多くなる懸念もある。そこで、各学科長が受講を薦めるビデオメッセージを制作し、そのURLを入学予定者に送る「入学前準備教育プログラム」のチラシに掲載。メッセージは、学習習慣を維持することの大切さを説き、入学後の学びへの期待を喚起する内容だ。その結果、受講率は全学科平均で96.1%になった。

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 受講者は大学での学びをイメージできる入学前教育に前向きに取り組んだ。受講後のアンケートでは「不安が解消された」「受験勉強の時のやる気を持続できた」「大学生活への期待がふくらんで授業が楽しみになった」といった声が多かった。入学者のリアルな様子をイメージしながら迎え入れ、指導をスタートできることは教職員にとって大きなメリットだったという。

●高大接続の理想的な形をめざして 

 同大学では入学前教育のデータを学生募集や入試改革にも活用したいと考えている。
学生募集を担当する企画広報室の新村由美子室長は「入学前準備教育プログラムのアンケートでたずねる『入学前、大学に抱いていたイメージや期待』は学生募集のヒントになる貴重なデータだ」と話す。入学前教育のスコア、取り組み姿勢や意識のデータを、その先に取得していく入学後のデータにつないでいくと、入試方式ごとの学生の傾向がわかり、それぞれがどのように伸びて卒業していくのか可視化できる。そこに大きな価値を感じるという。
 「それぞれの入試で求める学生を獲得できているのか、アドミッション・ポリシーの検証も可能になる。その結果、求める人材像自体を修正することもあり得るし、入試制度の見直しにもつなげられる。合格から入学までの成長を手助けしたり、卒業生の成長について高校にフィードバックしたりと、入学前教育は高大接続の理想的な形を実現する可能性を秘めている」(新村室長)

●「エビデンスに基づく成長支援が『面倒見のいい大学』の新たな要件に」

 近年、オープンキャンパスで入学前教育について質問を受けることが増えているという。多くの大学で年内入試による入学者が増える中、受験生にとっても入学前教育がスタンダードなサポートになり、期待を抱くようだ。「単に入学前教育を実施するだけではなく、プログラムを通して大学が入学前から一人ひとりのことをどれだけ理解できるかが意味を持つようになった。期待に応えられるプログラムを提供し、そこを起点にした学生サポートにつなげることができれば学生満足度が上がり、その成果も学生募集に生かせる」と新村室長。
 刷新初年度の入学前教育のデータがまとまり、今後はそれをアセスメントテストのデータとつないで分析していくことになる。新村室長は「これまで、『面倒見がいい大学』とは一人ひとりに目を配って手をかける大学を指したが、これからはエビデンスに基づいて実質的な成長を支援する大学を指すようになるだろう。学生の『成長値』を可視化し、新しい意味での面倒見の良さを伝えていくことが、本学のような小規模単科大学のブランディングの鍵になる」と話す。「入学前教育のデータは学生支援の出発地点。時間はかかるかもしれないが、部署間の連携、教員と職員の連携を大切にしながら入学前教育を起点にした学生支援を推進していきたい」。


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