2020.0629

ベネッセ入試結果調査① 国公立、私立とも志願者減、私立は14年ぶり

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3行でわかるこの記事のポイント

●「現行入試最後」「センター平均点ダウン」「私大難化による敬遠」で超安全志向に
●国立は難関大、ブロック大以外での減少が目立つ
●私立はセンター利用方式で対前年指数91と大きく減少

ベネッセコーポレーションは全国の高校の協力の下、2020年度入試の結果をまとめた。近年、減少傾向にあった国公立大学の志願者がさらに減り、私立大学も14年ぶりとなる減少。ベネッセ教育情報センターの分析に基づいて2020年度の入試結果を2回に分けて解説する。

*各データは、特にことわりがない限りベネッセの調査によるもので、大学の公表数値を基にしたデータは5月中旬までに収集・確認できた情報を反映している。
*各データはベネッセの分類・集計によるもので、各大学が公表している数値とは異なる場合がある。


●センター試験の志願者数は10年間で最大の減少率

 最初に学生募集の市場を見ておこう。2019年度の18歳人口は約7千人減少、対前年指数は99で現役の受験生が減った。2019年度入試で難関私立大学の合格者数が下げ止まったのを受けて既卒生も減少。センター試験の志願者数はこの10年間で最大の減少率となった。
 2021年度からの新入試では既卒生に対する経過措置がないため、受験生には「何としても2020年度入試で合格しておきたい」という心理が強く働いた。入学定員管理厳格化によって難化する私立大学を敬遠する動きに加え、センター試験の平均点が文系・理系ともに下がったこともあり、「超安全志向」の出願動向となった。
 ベネッセコーポレーションは2020年度入試について、全国3658の高校から50万664人分の出願・合否結果の情報提供を受け、進研模試データを加えて分析。ベネッセグループが集めた各大学の志願者データや次年度入試の変更点等の情報も加え、志望校選びの参考にしてもらうために高校に還元している。これらの情報に基づき、今回は国公立大学と私立大学、それぞれの全体的な志願動向を取り上げる。

●国公立大学の志願動向―後期日程で大幅な志願者減

 国公立大学の一般入試志願者数は43万9565人で、対前年指数94に減少した。中期日程は指数99と微減にとどまり、後期日程(指数92)の落ち込みが大きい。国立大学については難関大、ブロック大以外の大学は指数92で特に減少が目立つ。難関大やブロック大を志望する成績上位層が第一志望を貫こうとする一方、それ以外の地方国立大学等を志望する層はセンター試験の平均点ダウンで弱気になり、後期日程までチャレンジせず地元私立大学などで手堅く合格を決めようとの心理が働いたと推測される。

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 推薦・AO入試等による入学者の割合を全体の3割程度にするという国立大学協会の方針もあり、国公立大学ではこれらの入試方式による募集人員を増やす傾向にある。今年度の募集人員は横這いから微増というところだが、AO入試に関しては志願者が対前年指数104と増え、合格者も増加。国公立大学についてもAO入試を活用しようとの意識が受験生に浸透してきたと言えそうだ。

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●私立大学の志願動向―安全志向の高まりで年内入試に集まった

 私立大学の一般方式の志願者数は246万8186人で対前年指数101と微増。一方のセンター利用方式は志願者数114万4486人で対前年指数91と大きく減少、センター後期は指数84まで落ち込んだ。一般・センターを合わせた私立大学の志願者指数は97で、14年ぶりの減少となった。

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 推薦・AO入試はいずれも志願者数が増え、特にAO入試の増加幅が大きかった。

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 超安全志向が働いて年内入試で手堅く合格を決めたいと考える受験生が多く、平均点が下がったセンター試験を利用して最後まで粘ろうという意識にはなりにくかったようだ。
 入学定員管理厳格化、入試制度変更による安全志向、現役志向の高まりは、前年度入試までは受験生が併願校を増やす動きにつながり、総志願者数が増加した。現行制度最後の入試で安全志向がピークになったはずの2020年度入試で志願者減に転じた背景として、難易度の幅を下方に広げて出願校数を増やす一方で、難化する中堅私大の学内併願を減らす動きが起き、結果として一人あたりの出願件数が減ったのではないかと推測される。

●学問系統別の志願動向―私立は文系が減少に転じ、理高文低に

 国公立大学と私立大学を合わせ、学問系統別の志願動向を見ていく。
 まず、文理別の大きな傾向を見ると、国公立大学では文系・理系とも志願者が減少。
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 一方、私立大学はここ数年増加が続いていた文系の志願者数が減少に転じ、理高文低となった。

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 さらに詳しく系統別で見ると、国公立大学は全体として志願者数が減少する中でも人文科学、国際関係学、理学は微増から前年並みを維持。一方、語学、医学などは対前年指数90を割っている。
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 私立大学は工学、農・水産学の志願者数が増加し、文系では法学、国際関係学、理系では歯学、薬学の落ち込みが目立つ。
 前年度入試では国公立・私立ともに語学、国際関係学が大幅増だったが、今回は国公立の国際関係学で微増となった以外は不調に終わった。

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 「ベネッセ入試結果調査」シリーズ次回は、私立大学の志願動向と入試結果について詳しく解説、新制度に変わる次年度入試の大学入学者選抜実施要項の概略にも触れる。