2018.0827

東京都市大学がグループディスカッションを課すセンター利用入試を導入

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3行でわかるこの記事のポイント

●一般入試系での多面的・総合的評価を試行
●公募推薦の試験日後ろ倒しや一般入試での教科数増など、改革の理念を先取り
●公募推薦枠の拡大、「原子力人材入試」の新設も

東京都市大学(旧 武蔵工業大学)は2019年度入試で、グループディスカッションを課す新たなセンター利用入試を導入し、一般入試系における主体性や協働性の評価を試行する。入試の日程や試験科目数についても2021年度からの入試改革を念頭に置いた見直しを図る。公募推薦の拡大やAO型の「原子力人材入試」新設など、自学の課題に対応する改革と合わせ、同大学の入試改革について紹介する。

*大学のウェブサイトでの公表内容はこちら


●2021年度入試をにらみ、小規模な後期日程で試行

 東京都市大学はこれまで前期のみだったセンター利用入試を後期にも全学で導入。各学部・学科が指定する3教科に加え、グループディスカッションも課す。工学部の公募推薦入試で実施してきたグループディスカッションのノウハウ、ルーブリックを援用する。志望学部・学科混成の5人程度のグループに分かれて約40分間の討論を行い、レポートに自分の意見をまとめるという内容が予定されている。
 学力の3要素のうち知識・技能をセンター試験で、思考力・判断力・表現力をまとめのレポートで、主体性・協働性をグループディスカッションでそれぞれ評価する。グループディスカッションは議論への貢献度、協調性、主導性、判断力、総合力という5つの観点から試験官2人がそれぞれ70点満点、計140点満点で評価。センター3教科の600点満点と合わせた総合得点の2割程度の配点とする予定だ。
 2021年度からの入試改革に向けた「一般入試系における多面的・総合的評価」の試行として、まずは志願者がさほど多く見込まれないセンター後期で実施することにし、募集人員は工学部6人、知識工学部2人、それ以外の学部は各1人とした。3月14日に試験を実施し、1週間後に合格発表というスケジュールを組んでいる。

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●一般入試の中期日程新設で入学定員管理厳格化に対応

 同大学は評価手法だけでなく入試の日程や科目数についても、2021年度からの入試改革の理念や新ルールを念頭に置いて見直しを進めている。
 2019年度入試では公募推薦の試験日を例年より1~2週間遅い11月18日に設定した。文部科学省が学校推薦型選抜の合格発表時期を従来の11月以降から12月以降に変更する方針を示したのを受け、2021年度入試では12月に公募推薦の合格発表を行う方向で日程を徐々に後ろ倒しにしていく。入学前ガイダンスの日程やプログラムへの影響を考慮し、段階的な対応を図る考えだ。
 環境学部、メディア情報学部、都市生活学部などの文理融合型学部で一部学科を除き、一般入試前期を従来の2教科型から3教科型に変える。これも、文科省が改革方針の中で一般入試の課題として「出題科目が1~2科目に限定されている場合がある」と指摘しているのを受けた対応だ。2教科型入試では学力評価が十分でないと捉え、さらに競合大学の多くが一般入試前期で3教科を課していることもふまえて教科数増を決めた。
 これまで前期と後期のみだった一般入試で中期を新設したのは、入学定員管理厳格化への対応も念頭にある。入学手続きのスケジュールを従来より細かく分け、私学助成不交付や新増設の認可申請不可の基準を超えないよう調整を図る。

●「しっかり選抜し、入学後の成績も良い」公募推薦を高校にアピール

 基礎学力と学習習慣をしっかり確認したうえで受け入れる公募推薦の拡大も進めている。同大学では工学部の推薦・AO系の入試による入学者は全体の20%ほどだった。競合大学の多くが40~50%で、国公立大学でもこれらの入試の拡大が課題になっていることをふまえ、40%への拡大を目標として設定。2018年度入試で25%まで増やし、2019年度入試についても対応を検討中だ。
 入試部の菅沼直治部長は「本学はAO型入試で筆記試験や口頭試問を課し、公募推薦では小論文を課すなど、『硬派の入試』を自認している。そのため、公募推薦でもしっかり勉強している生徒が出願し、入学後の成績も一般入試やセンター利用入試で入った学生と比べてそん色ない」と説明する。
 同大学で入学後の成績と相関が高いのは学習習慣が反映される評定平均値であると確認したうえで、調査書を重視する公募推薦入試の枠拡大を決めたという。志願者は多くない、きちんとした選抜を行う、入学後の成績が良いという「大学と受験生双方にとって堅い入試」であることを高校に積極的にアピールし、志願者を増やしていきたい考えだ。その一環として2019年度入試から公募推薦入試の入り口を複線化し、一般推薦型のほか、英語外部試験を活用する「グローバル志向型」、卒業生の子弟を受け入れる「レラティブ型」も新設する。

新入試で国内有数の特色ある原子力教育をアピール

 工学部原子力安全工学科のAO入試「原子力人材入試」も、2019年度入試の変更点の目玉に位置づけられている。入学定員45人のうち6人を募集し、調査書と志望理由書のほか課題レポートと面接で選考する。志願者増もさることながら、「原子力研究施設を所有し、50年以上に及ぶ原子力研究の実績がある国内有数の大学」(菅沼部長)という強みをアピールすることもねらいの一つ。印象に残りやすい入試名称を通して東京都市大学の存在を知り、他学部も含め学びの内容に興味を持つ受験生を増やしたい考えだ。
 菅沼部長は「原子力安全工学科は外部資金獲得で突出し、学生の研究活動も活発。大手企業や公的機関への就職など強みが多いにもかかわらず、原子力利用への逆風もあってなかなか注目されない。この入試制度の広報を通じて、推進・反対の立場を超えた高度な知識と使命感を持った原子力技術者の育成が求められていることを広く知らせたい」と話す。


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