2018.0205

主体性等評価の実証事業で8月からeポートフォリオを入試等で活用

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3行でわかるこの記事のポイント

●JAPAN e-Portfolioで高校生の活動をメニュー化し、デジタルデータで大学に提供
●スコア化や出願基準到達者抽出の仕組みと連携して選考の効率化が可能に
●高校での活動と大学入学後の成長との関係性分析における活用も

高校生が学びや活動の成果をデジタルデータとして記録し、大学がそれを入試の主体性等の評価に活用するJAPAN e-Portfolio の開発が進んでいる。2017年10月から高校での利用が始まり、2018年8月からは大学も参加して、2019年度入試から入試での評価や主体性等評価の研究で情報の活用が始まる予定だ。入試における主体性等評価という新たな課題の下、大学の関心が高まっているこのシステムの概要と活用イメージについて紹介する。
*JAPAN e-Portfolioのウェブサイトはこちら


全国約5000の高校のうち約1200校が運用中

 「高大接続ポータルサイト JAPAN e-Portfolio(以下、「JeP」)」は、高校生が主体的活動等に関する情報を蓄積する機能と、大学にその情報を提供して出願する機能からなる。2016年度から3年間の文部科学省の委託事業として、代表校の関西学院大学と大阪、大阪教育、神戸、早稲田、同志社、立命館、関西の計8大学によるコンソーシアムがJePを企画・開発している。これまでに教育委員会や高校との連携の下で情報蓄積機能が完成。現在は出願機能の開発が進んでいる。
 2017年10月に始まったJePの情報蓄積機能を利用している高校は2018年2月1日現在約1200校。2018年8月からのJePの入試活用を含む実証事業への参加大学はこちら。
 高校側は、基本的に学校単位でJePを利用する。生徒は日常的な活動や学びの成果、振り返りを記録し、一部の内容については教員が承認。生徒がJePから、出願先の大学が求める主体性等に関するデータを選択して送付する。大学は自学のWEB出願システムとJePを連携させてこれらの情報を取得。自学の基準に基づいて主体性等を評価し、合否判定などに活用する。

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活動のマスタ化により評価やビッグデータ分析が容易に

 JePの運用の流れは次のようになる。
<高校生・高校側の運用>

1.「学びのデータ」の記録
・生徒が学校や自宅でパソコンやタブレット、スマートフォンを使い、授業や学校行事、部活動、課外活動、資格・検定等の実績や成果、学びの振り返り(これらの情報を「学びのデータ」と呼ぶ)をJePに記録する。
・「探究活動」「生徒会・委員会」「留学・海外経験」「資格・検定」「表彰・顕彰」「部活動」「学校行事」「学校以外の活動」の8つの活動カテゴリがあり、該当するものを選択する。項目は以下のようになっている。

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・活動内容や実績はプルダウンメニューの階層から選べる。例えば8カテゴリの中から部活動を選んだ場合、スポーツ活動>大会・試合の結果>順位・成績と選んでいき、具体的な順位や成績を入力する。これまで、同じ大会等でも高校によって表記がばらばらだったものをマスタ化して統一することにより、評価やビッグデータ分析が効率的に行えるようになる。
・探究活動や生徒会・委員会など、学校が関与する活動については生徒の依頼を受けて教員が記録内容を承認する。
*学校単位での活用だけでなく、既卒生や高卒認定試験を受験して大学進学をめざす者等も個人単位で活用できるよう開発中。
*8つのカテゴリは2021年度入試から書式が変わる調査書の「指導上参考となる諸事項」の各項目をふまえた内容になっている。JePを活用する入試では調査書の一部項目をJePの情報と連携させることで、高校教員による調査書作成の負担を軽減できないか検討している。

2.出願先大学への「学びのデータ」の提出
・募集要項で出願に必要な「学びのデータ」と志望理由などの提出情報を確認する。
・JePで出願先の大学を選択し、該当する「学びのデータ」と志望理由などの提出情報を指定する。
 これらの情報を「出願利用情報」と呼ぶ。
・「JeP出願コード」が発番され、このコードが大学に連携される。

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<大学側の運用>

・自学のWEB出願システムで取得したJeP出願コードをキーに、JePから「学びのデータ」をダウンロード、もしくは画面閲覧する(ダウンロードファイルはCSV形式とPDF形式)。
*自学で必要に応じて合否判定システムなどにJePデータを取り込み、アドミッション・ポリシーに基づいて設定した基準に沿って「学びのデータ」の各項目をスコア化したり、出願基準を満たしているか判定したり、筆記試験や面接のスコアとの総計を出して合否判定したりといったことも可能である。
 例えば、総合型選抜での活用イメージは下図のようになる。ここでは、JePの「学びのデータ」で出願資格を判定し、大学入学共通テストや面接のスコアと合わせて総合的に評価して合否を判定する例を示している。

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 JePは大学のニーズや実情に応じた運用が可能だ。例えば、WEB出願システムを利用せず、紙による出願で大学出願データのコードの通知を受け、「学びのデータ」をダウンロードすることができる。
 実証事業参加大学の中には、コンソーシアム代表校の関西学院大学のように2019年度一般入試の主体性等の評価に活用するケースもある。さらに、出願者にJePの情報を任意で提出してもらい、分析するという活用法も予定。どのような活動をしている出願者が多いかを把握したり、どのような活動をしてきた入学者がどう成長するかを調査したりして、その後の主体性等評価の仕組み構築の参考にする。また、現行の推薦・AO入試で提出させている出願書類や活動のエビデンス資料をデジタル化するために実証事業に参加する大学もある。

委託事業後の運営については2019年度概算要求までに検討

 文科省は新学習指導要領の実施後、調査書をデジタル化する方向で、JePの事業をデジタル調査書のモデルづくりとしても位置づけている。将来的には、生徒が記録するJePのデータを使って教員が指導要録や調査書を作成するといったデータ連携も視野に入れている。
 文科省の委託事業が終わる2018年度までは各大学が無料でJePを活用できる。2019年度以降について文科省は「事業期間を延長してさらに改良を加えるか、文科省事業としては終了し大学等による任意団体や財団に運営を引き継ぐかを今後検討し、2019年度の概算要求までに結論を出す」としている。 

*JePの活用に関心がある大学・高校からの連絡は、下記アドレスで受け付けている。
 jep@kwansei.ac.jp(委託事業の事務局) 


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