育成型AO入試を導入しアドミッションオフィサーも養成~九州産業大学

●ミスマッチによる中退を防止するため、コーチングスキルを持つ職員が面談
●20時間超の研修と試験を経てアドミッションオフィサーを認定
●出願前に面談結果を高校にフィードバックし、コミュニケーションを深める

九州産業大学は、2018年度入試で新たなAO入試「育成型入試」をスタートさせた。選考前に実際の授業の受講や面談などの育成プロセスを設定し、面談は学内で認定されたアドミッションオフィサーが担当。その結果を高校にフィードバックするなど、独自の手法を取り入れた。意欲と基礎学力を重視しながら学部・学科のマッチングを丁寧に行い、中退予防につなげるねらいがある。

*大学のウェブサイトでの「育成型入試」の説明はこちら


●2科目の基礎学力テストも実施

 九州産業大学の新AO入試「育成型入試」は、2018年度新設の人間科学部と地域共創学部を含む全学部・学科で実施している。初年度は全入学定員2530人のうち若干名をこの入試で募集。出願前に大学で行われる実際の授業を受講してレポートを提出させ、学ぶ意欲や学びたいことを面談で確認する「育成プログラム」を設けている。入学前から意欲と大学に対する理解を育てる専願の入試制度だ。
 育成型入試の流れは図の通り。

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 受験生は第2志望までの学部・学科を選んでプログラムに登録したうえで、学生に混じって志望学科の実際の授業を受講するか、実際の授業を収録・編集したWeb模擬授業を受講する。
 授業内容についてレポートを提出させ、興味・関心や大学に対する理解を面談で確認する。面談は大学独自のコーチング研修を経て認定された職員「KSUアドミッションオフィサー」が担当。学ぶ意欲や興味・関心、将来の計画などを確認し、各学部・学科の特徴や違いを説明しながら出願先についてアドバイスする。
 面談後、出願前にアドミッションオフィサーは各生徒が所属する高校を訪問し、進路指導担当者や担任に面談結果を説明して進路指導に役立ててもらう。選考プロセスに入る前の自由な議論ができる段階で高校とのコミュニケーションを深め、高校教員に自学の学部・学科に対する理解を深めてもらう機会としても位置付けている。
 その後、出願を受け付け、書類選考、英語と国語(文系・芸術系学部)、または英語と数学(理工系学部)の基礎テスト、および学部の教員による面接を実施。学部によってはさらにプレゼンテーション等を課し、アドミッションオフィサーによる面談結果も参考にして合否を決める。
 初年度、9月に合格発表を終えた育成型入試のⅠ期では、122人に対して面談を実施。40の高校への面談結果フィードバックでは、高校側から「面談内容からミスマッチを防ぐポイントが分かり、生徒への指導がしやすくなる」「大学にここまで真剣に生徒たちのことを見てもらう以上、高校側も今まで以上に生徒の進路のことを考えないといけないし、高校教員も大学のことを勉強する必要がある」といった反応があったという。出願者109人の中には、面談でのアドバイスをふまえて志望学部を変えた生徒もいた。合格者は35人だった。

●人事部や総合企画部からもアドミッションオフィサーが誕生

 「育成型入試」は追手門学院大学の「アサーティブ入試」を参考に、育成プロセスや職員による面談を導入する一方、九州産業大学オリジナルの要素も取り込んだ。面談結果の高校へのフィードバックに加え、アドミッションオフィサーの研修・認定制度も独自のものだ。全学の教職員から希望者を募り、2カ月半、計20時間以上に及ぶ研修を受講させる。外部の専門機関と共同開発した研修は、講義と実践を通してコーチングスキルを修得し、相手の気持ちや考えを可視化できるようにし、学部・学科の理解を深める内容。コーチング実技と筆記試験による修了試験に合格すると「KSU認定コーチ」の資格を得る。さらに、自学の3つのポリシーと教育の特色をテーマに学長が主催する研修を受講し、「KSUアドミッションオフィサー」に認定される。
 初年度は学長からの指名を含む18人が研修を受講、そのうち11人が「KSUアドミッションオフィサー」に認定され、育成型入試の面談を担当している。今回は全て職員で、教務部を中心に学生部や法人本部の人事部、総合企画部からもアドミッションオフィサーが生まれ、多様な視点で受験生を確認し、アドバイスする体制ができた。

●課題は育成プロセスでの基礎学力向上の支援

 同大学では、学部・学科の再編など、抜本的な改革を推し進める一ノ瀬秋久理事長・山本盤男学長のリーダーシップの下、文部科学省による高大接続改革への積極的な対応を図っている。2016年11月、学長、副学長、常務理事などをメンバーとして設置された「高大接続推進に関するワーキンググループ」では、「入試方式別の退学率はAO入試が最も高い」というデータに着目。「自学のことを十分に理解し、志望度の高い受験生を受け入れる本来のAO入試」(KSUアドミッションオフィサーの責任者を務める教務部の一ノ瀬大一係長)への転換をどのように図るか、議論を重ねた。
 自学の課題と、アドミッション・ポリシーの浸透、学力の3要素の多面的・総合的評価という高大接続改革の課題とを重ね合わせながら、新たなAO入試を設計した。そのアウトプットである育成型入試の初年度Ⅰ期の競争倍率は3倍強だった。1.3倍程度だった従来のAO入試に比べ選抜性が上がり、合格者のアドミッション・ポリシーに対する理解度は明らかに高いと、大学は手応えを感じている。11月上旬にはⅡ期の出願受け付けが始まる。
 次年度以降の課題は、育成プロセスの充実だ。初年度、基礎学力向上の支援は、基礎テスト直前に大学のウェブサイト上でサンプル問題を示す程度にとどまった。今後は育成プログラムの段階で、登録直後からeラーニングで継続的に問題を提供し、答案を提出させて採点・解説を返すような仕組みを検討したいという。「育成プログラムを通して意欲を高められることは確認できたが、やはり基礎学力も大事。入学前からの基礎学力向上が中退予防につながる」と一ノ瀬係長。
 育成型入試のブラッシュアップを図る一方で、入学者の出席率や単位修得状況、GPA、さらには学習の意欲や実態に関する学生調査の結果も分析し、この入試が九州産業大学の教育によって成長できる学生の受け入れにつながっているか、検証を続けていく予定だ。


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