2017.0718

入試への活用は検討を先送り-高校生の基礎学力診断

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3行でわかるこの記事のポイント

●「高等学校基礎学力テスト」から名称を変え、民間の試験を認定
●授業改善のPDCA構築、高校教育の質向上が目的
●2019年度から試行実施

高大接続改革の枠組みの下、高校教育の質の確保・向上を目的に、生徒の学習成果を測定する「高校生のための学びの基礎診断」の実施方針が、「大学入学共通テスト」の実施方針と合わせて公表された。当面、入試での活用は想定されていない。文部科学省が民間の試験を認定し、2019年度からは高校での試行実施がスタートする予定だ。

*「高校生のための学びの基礎診断」を含む高大接続改革の実施方針はこちら
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/07/1388131.htm


●高校は認定された試験の中から選択、認定外の試験の活用も可能

 高校教育の質の確保・向上のためのテストは当初、共通テストを開発する方向性の下、「高等学校基礎学力テスト」という仮称で、文科省の有識者会議が検討した。推薦・AO入試で基礎学力の確認に活用することも視野に入れていた。
 そこでの論点整理をふまえ、高校生に自分の学びの指針にしてもらうという趣旨を明確にするため、名称を「高校生のための学びの基礎診断」に変更。当面、入試での活用は想定せず、本来の目的の下での安定的な運用をめざすことになった。共通テストの開発ではなく、文科省が一定の基準を示し、それをクリアした民間の試験を認定する仕組みへと軌道修正。学習指導要領に準拠していること、測定しようとする力と問題との対応関係を明らかにしていること、学習改善に資する結果提供がなされることなどが認定要件となる。
 このほど開かれた「高校生のための学びの基礎診断」検討ワーキング・グループの初会合では、各高校が生徒の診断結果を分析して授業や指導の工夫・充実を図り、PDCAサイクルを構築するという基本的な考え方を確認した。高校は、認定された試験の中から自校の教育目標や生徒の実態に合ったものを選択。多面的な評価を推進するため、認定された試験以外のものの活用も妨げないという。診断の回数や時期、対象学年は各高校が決める。
 実施方針にはこうした内容と合わせ、「基礎診断」の大学入試を含む「副次的な利用」の可能性について、「高校生の学習意欲や進路実現への影響等に関するメリット及びデメリットを十分に吟味しながら、高等学校や大学等、企業をはじめとする関係者の意見も踏まえ、更に検討を行う」と書かれた。当面は、本来の目的に絞って検討していく。文科省の担当者は「実際に運用してみたうえで入試にも使える、使いたいということになればそれを拒む理由はない」と話す。

●英語検定試験の参入の可能性も

 認定対象となる試験については、「国語・数学・英語3教科のセット」「1教科のみ提供」「国語の漢字など、一部の領域のみ提供」など、さまざまなパターンの可能性を検討する。英語は4技能を評価することになり、各種検定試験の参入も予想される。
 同ワーキング・グループで認定基準の方向性を検討し、年度内に基準を策定。2018年度に事業者からの申請を受け付けて審査・認定し、2019年度から各高校で実施する。

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 初会合では、「単なるスコアの提示ではなく、生徒一人ひとりの長所を見いだし励ますようなフィードバックをすべき」「すでに高校単位で実施されている事業者のテストとは異なる趣旨をきちんと高校に浸透させ、活用してもらう方策を考えたい」「英語外部検定試験のCEFRのように、開発主体が異なる試験同士のスコアを比較できる仕組みが必要」といった意見が挙がった。

*高大接続改革、高校教育に関する記事はこちら

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