高校の進路指導で「THE大学ランキング 日本版」はどう使えるか

●高校教員は「偏差値だけにとらわれない大学選び」の指標を歓迎
●各大学の立ち位置に対応する項目のスコアに注目
●2年生進級時の大学調べで多様な大学の情報を提供

「THE世界大学ランキング 日本版」は、「教育力重視のランキングによる高校生の大学選びの支援」を掲げて作成された。公立、私立それぞれの高校現場で進路指導の前線に立った2人の教員に、ランキングをどう受け止めているか、進路指導にどう活用できるか聞いた。


●新たな観点で大学を評価する
 ー東京都立西高校 主幹教諭 寺島 求氏

 近年、「偏差値だけにとらわれない大学選び」が言われるようになったが、実際に他の指標として我々が使えるものはあまりなかった。そうした中、教育力のランキング情報は大変ありがたい。本校のような進学校でも、志望校を選ぶ時に世界ランキングはあまり参考にならない。論文引用数など研究重視の指標だと、生徒が志望するようなハイレベルの大学でも文系分野はランク外となり、限られた大学の情報しか得られないからだ。その点、「THE世界大学ランキング 日本版」は多くの大学をいくつかの観点で比較できる。
 特に活用したいのは、公式サイトで提供されている学問系統ごとのランキング機能だ。意外な私立大学が入っていたりして大学ごとの強みがわかるし、併願候補の大学を比べることができる。
 私は進路指導で、各大学の科研費と、研究室ごとにどんな専門の先生がいるか、どこで博士号を取ったか調べて生徒に提供していた。進路指導の経験の長い教員ならこれらの情報発信ができるが、初めて進路指導を担当する教員だとそうはいかない。彼らが大学を見る観点を理解し、生徒に伝えるうえでも今回のランキングは役に立つ。まずはランキングで大学の強みをつかみ、気になったところは各大学のウェブサイトで調べるという流れで活用できるだろう。
 全ての大学が同じ方向をめざす必要はなく、先端的な研究で勝負するのか、地域と連携した教育に力を入れるのかなど、自学の立ち位置を明確にすべき。それと関連するランキング項目で高スコアを上げれば、高校現場はしっかり評価する。
 多くの大学は、各分野の専門性の修得というより、専門分野を通して主体的に学ぶ姿勢や情報収集力といった普遍的な力を育成する教育が中心になるはずだ。変化することが当たり前の時代にはこうした力こそが求められ、各大学がどんな教育によってそれを修得させるのか知りたい。今後、日本ランキングからその情報も得られるよう期待している(談)。

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<東京都立西高校の進路情報>
・1学年約320人
・2017年度入試の合格者数(現役のみ):
 国公立大学 90人(うち医学部医学科6人)
 難関私立大学 441人

●横並びの大学を自分の観点で比べて併願先を決定
 ー日本大学高校 教頭 大木治久氏

 私立を含め多彩な大学の情報を提供している点が「THE世界大学ランキング 日本版」の良さだ。本校の地元・横浜市は全国的に見ても珍しく国公立志向が強くないエリアで、進路指導担当者はさまざまな私立大学の情報を押さえておく必要がある。しかし、生徒を多く送り出している大学以外のことはよくわからず、自信を持って勧められない。それによって生徒の選択肢が狭まるのはとても残念なことだ。
 今回のランキングを見ると、コンピューター教育に特色がある会津大学、高校教員の評判が高い神田外語大学など、派手さはないがいい教育で定評のある大学がどれも上位に来ており、評価の確かさを感じる。手前味噌になるが、日本大学も教育満足度のスコアが高く総合67位にランクインした。「入ると良さがわかる」と言われる教育力がきちんと反映されている。
 高校生は第一志望校以外にはなかなか目が行かないが、第二志望以下についてもきちんと考えさせることが大事。特に中堅校の進路指導で、横並びの大学の中から自分が重視する観点で併願校を探す時、このランキングが使えるだろう。本校では2年生に進級する時にさまざまな大学について調べたうえで進路を考えさせるので、その時にちょうどいい資料になりそうだ。
 今後、ランキングに改善を加えていくとのことなので、要望も挙げておきたい。まず、スコアだけでなくそれを基にゾーニングした情報も示してほしい。わずかなスコアの差にあまり意味はないはずで、指標項目ごとに同格の大学をゾーンで捉え、いくつかの項目を見て比べるという使い方をしたい。
 「国際性」の指標に留学支援の充実度を加える、看板学部だけでもいいので学部単位のデータを示す、なども要望する。
 2020年度に向けて大学の入試改革が本格化し、偏差値だけに頼らない大学選びがいよいよ大切になる。教育力の情報発信は、この大きな変化を支えるという点で意義がある(談)。

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<日本大学高校の進路情報>
・1学年約530人
・2017年度入試の合格者数(現役のみ):
 国公立大学 17人
 日本大学  331人
 その他の私立大学 372人


*「THE世界大学ランキング 日本版」の結果はこちら
http://between.shinken-ad.co.jp/univ/2017/03/THE-japan.html

*評価指標の解説はこちら
http://between.shinken-ad.co.jp/univ/2017/04/THE-japan03.html

*「国際性」のランキングはこちら
http://between.shinken-ad.co.jp/univ/2017/04/THE-japan04-kokusaisei.html

*「THE世界大学ランキング 日本版」日本語公式サイトはこちら
https://japanuniversityrankings.jp/