2016.0622

鎌倉女子大学‐新AO入試で学力の3要素を多面的に測る

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3行でわかるこの記事のポイント

●集団討論、プレゼン、小論文、面接を課し、調査書で加点
●プレゼンテーションは、学科ごとのAPに関連したテーマを設定
●教員に代わり職員が書類審査を担当

鎌倉女子大学は2017年度入試から、学力の3要素を多面的に測る新たなAO入試(高大接続重視型)を導入する。文部科学省が推進する入試改革にいち早く着手して成果を把握したうえで、2020年度からの本格的な改革に備えるという。


●従来のAOの課題は「入学後の自分」を語れないこと

 「AO入試(高大接続重視型)」は、家政学部管理栄養学科を除く全学で導入。各学科の入学定員の1割を募集する。事前相談の後、エントリー票、活動報告書、自己PR書を提出してエントリーさせる。書類審査通過者には、試験初日に集団討論とプレゼンテーション、2日目に小論文と面接を課す。これらを通過した受験生に出願を認め、調査書の評定平均値を加算したうえで合格者を発表する。
 同大学の従来のAO入試との主な違いは、集団討論を加えたことと、プレゼンテーションのテーマを大学から与えることだ。これまでのプレゼンテーションは受験生自身がテーマと手法を選ぶ方式で、高校での部活やボランティアなどの活動実績をアピールしたうえで入学後の抱負を述べるという内容が多かった。入試・広報センターの河村和宏センター長は「高校で頑張ったことについてはみな熱く語るが、入学後、どう活躍するかというイメージは明瞭でない受験生が目立った」と説明する。AO入試で入学した者の中には、入学後に授業についていけない、学外実習に参加するための要件を満たせないという問題も若干、見受けられるという。
 そこで新AO入試では、学科ごとのアドミッションポリシーに沿って、学科の学びについての理解を問うテーマを設け、パワーポイントを使って発表する方式に改めた。
 集団討論40%、プレゼンテーション25%、小論文と面接が各15%、調査書5%という評価の比率を、入試のパンフレットで明示。これら各選考プロセスで、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」という学力の3要素のどれを測定するのか整理した表も示している。9月の試験実施に向け、現在は集団討論やプレゼンテーションのテーマを検討し、評価の観点をルーブリックに落とし込む作業を進めている。

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●「負担が増えても、より丁寧な入試を」

 従来、教員が担当していた書類審査は入試・広報センター員が担い、2次審査(小論文・面接・プレゼンテーション・集団討論)から教員にバトンを渡す。教員との対面型となる集団討論、プレゼンテーション、面接はそれぞれ重複なしの教員2人ずつで担当し、1人の受験生に対し、計6人の教員の目を通して評価する。
 教員の負担は重くなるが、従来のAO入試に対する問題意識は学内で共有されていたため、入試・広報センターが主導した「学力の3要素を多面的・総合的に確認する、より丁寧な入試」という基本方針に、教員からも賛同が得られた。
 高校訪問などでは、生徒や指導する教員の負担増を懸念する声も出たが、「適性をよりしっかり確かめ、ミスマッチを防いでもらえるのはありがたい」と、おおむね歓迎されたという。
 河村センター長は「本学は比較的早い1997年にAO入試を導入し、元々プレゼンテーションに時間をかけて選抜するなど、ノウハウを蓄積してきた」と説明。「その強みを生かして文科省の入試改革の動きに早めに乗り、学力の3要素を視座にした新しいAO入試でどんな学生を獲得できるのかデータを集め、分析しておきたい。そのうえで、2020年以降の本格的な改革において、最善の手を打っていく」と、方向性を語った。