甲南大学-データブックで大学の実像を高校教員に伝える

●特長である少人数教育やグローバル教育を実証的に紹介
●データ提示→課題分析→解決への取り組み、という構成で
●ありのままの姿を伝えて信頼を得る

甲南大学はこのほど、高校教員向けのデータブックを制作した。グラフを多用して自学の教育環境や学生の実態をリアルに示し、課題解決の取り組みも説明している。高校訪問などで配付し、高校教員とのコミュニケーションツールとして活用する。
*この記事は『Between』2016年6-7月号24~25ページの甲南大学の事例と連動しています。『Between』も併せてお読みください。ウェブ版はこちら
http://shinken-ad.co.jp/between/backnumber/pdf/2016_6_tokushu10.pdf


●自学の取り組みを、背景も含めて紹介

 「KONAN DATA BOOK」と題する冊子はA4判で全10ページ。
 学部別の学生数や出身地、就職率等の「基本データ」のほか、強みである少人数教育をはじめとする「学びと教育」、同じく力を入れる「グローバル教育」という2つのテーマを設けた。定員別の教室の数、受講者規模別のクラス数、授業以外の学習時間の実態など、大学案内には掲載されていないデータを盛り込んでいる。

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 データブックといっても、数字を羅列しただけの冊子ではない。「学びと教育」「グローバル教育」のパートは、①データによる客観的事実→②学外の調査等もふまえた自学の課題分析→③課題解決への取り組み、という基本構成になっている。一般的に大学案内では、③のみを「大学の取り組み」としてアピールするのに対し、「甲南大学がなぜ、その取り組みに力を入れるのか」という背景と合わせて理解してもらえるものをめざした。
 例えば、「80%近い学生が留学に興味がある」という学内のデータを提示。さらに、「私立大学学生生活白書」の調査結果から、学生にとって留学の障壁の上位が「資金」「語学力についての不安」であることを解説する。そのうえで、グローバルゾーン「Porte」をはじめとする学内国際交流環境の整備、給付型奨学金の充実など、自学の取り組みを紹介している。

●教育のプロ同士がディスカッションする材料に

 データブック制作の構想が生まれたのは、母体である甲南学園の創立100周年に向けたブランディングに取り組み始めた1年半前。「大学の中身がきちんと伝わっていないのではないか」という問題意識がきっかけだった。企画を主導した佐藤泰弘学長補佐(文学部教授)は、「何を教えているかは大学案内で伝えているが、学生が4年間をどう過ごし、どう成長するのかという具体的なものを示せていなかった」と話す。「大学案内にはいいことしか書いていないから読まない」という高校教員の声にどう応えるかという課題も抱えていた。
 「データというごまかしようがない情報を基に、われわれと高校の先生という教育のプロ同士がディスカッションできるメディアを作れたら面白いと思った」と佐藤学長補佐。
 学長室の林正樹課長は、「例えば、授業外の学習時間が不足気味というデータを出すことには、学内で反対意見もあった。それでも、ありのままを示し、それをどう改善しようとしているかまでをしっかり伝えることができれば、高校からの信頼を得られると考えた」と話す。
 クラス規模が小さい授業ほど学生の満足度が高いこと、看板となる国際系学部がなくても中長期の留学に挑戦する学生が徐々に増えていることなど、自学の強みや歩みを再確認する機会にもなったという。
 データブックは、高校教員の反応を見ながらテーマを変え、今後も少なくとも年1回は制作する予定だ。