2018.1210

高等教育無償化の最新情報<上> スケジュールと情報公表等の各要件

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3行でわかるこの記事のポイント

●法案成立後、速やかに大学等からの申請受け付けが始まる見通し
●「実務経験のある教員」の担当科目等は2019年度のシラバスへの記載が必須
●定員充足状況や就職状況等、教育情報の開示も要件に

低所得世帯を対象として2020年度にスタートする高等教育無償化の制度の詳細が固まりつつある。次の国会での法案成立後、速やかに大学等からの申請を受け付け、夏頃には対象校公表というタイトなスケジュールになる見通しだ。文部科学省は「今後の変更もあり得る」とのただし書き付きで制度の周知に努めている。申請に向け、大学等が知っておくべきポイントを2回に分けて解説する。初回は今後のスケジュールと、4要件のうち「外部理事」「厳格な成績管理」「情報開示」の3つを取り上げ、「実務経験のある教員」の要件については次回、詳しく紹介する。

*「高等教育無償化の最新情報<下> 「実務経験のある教員」の要件とは」はこちら
*2018年7月の解説記事も合わせてお読みください。
どうなる?高等教育無償化<上> 支援の概要と支援対象者の要件
どうなる?高等教育無償化<下> 支援対象となる大学の要件


●大学等に申請書のフォーマットイメージを通知済み

 高等教育の無償化は給付型奨学金と授業料等減免のセットで、住民税非課税世帯、およびこれに準じる世帯からの高等教育機関への進学を支援する制度。所得要件を満たしたうえで進学意欲が確認されれば、原則として高校での成績は問わず支援対象となる。
 大学、短大、高等専門学校、専門学校への進学者が対象となるが、これら教育機関は①実務経験のある教員による授業科目の配置、②外部人材の理事への任命、③厳格な成績管理の実施・公表、④財務・経営情報の開示の4項目すべてについて、一定の要件を満たす必要がある。
 都道府県が所管し、制度が大きく異なる専門学校については一部、詳細部分の検討が残っているが、それ以外はおおむね要件が固まった。申請書のフォーマットイメージと合わせ、文部科学省から各校に要件のポイントが通知され、メールによる問い合せに対応している。
 タイトなスケジュールの下、申し込み期間は短くなる見通しであるため、大学は早めに疑問を解消して申請書の記入ができるよう準備しておく必要がある。「実務経験のある教員」の科目配置や厳格な成績管理については、学生が分かるよう2019年度のシラバス等での記載が必須となることにも注意が必要だ。

●在学生も無償化の対象となり、大学による学習状況報告が必要

 おおよそのスケジュールは下図の通り。

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 文科省は次期通常国会に無償化関連法案を提出し、法案成立後、速やかに大学等からの申請受け付けを始めることをめざしている。要件を満たしているか確認したうえで、高校生の進路選択が夏休み明けから本格化することを念頭に、夏頃の対象校公表を予定。進路選択の検討材料にしてもらうため、要件への適合状況を記した各大学の申請書類も公表する。
 これを受けて受験生は2019年秋から年末にかけ、JASSOに対し給付型奨学金の予約採用申請手続きをする。本人が世帯収入確認のためのマイナンバーを提出、高校は本人の進学意欲等を確認してJASSOに報告。JASSOはこれらを基に奨学金受給要件に適合するか確認し、採用候補者を決定・通知する。
 採用候補者が対象となる大学等に入学することが決まると授業料等減免についても対象となり、大学等に対して減免の申し込みをする。大学等はJASSOと連携して申し込み者の要件を確認し、減免を行う。
 無償化は2020年度の入学者だけでなく、同年度、2年次~4年次に進級する学生も対象になる。こちらの手続きは受験生の予約採用手続きの後に進める予定だ。受験生の場合と同様にJASSOにマイナンバーを提出して申し込み、大学は支援の要件となる学習状況をJASSOに報告。JASSOが所得要件と学習状況を確認し、支援の可否を決定する。

●申請時には成績の分布状況の資料も添付

 ここからは、無償化の対象となる大学の要件のうち、「要件1 実務経験のある教員による授業科目の配置」以外の3つについて説明する。いずれも機関要件確認の申請時(2019年度)に満たしておく必要がある。

要件2 外部人材の理事への任命
 法人の理事に産業界等の外部人材を複数、任命することが求められる。文科省は「多様な分野における経験や有意義な知見を大学の運営に生かし、自律的な運営を促進する」という要件設定の趣旨をふまえ、大学等が外部人材の理事に期待する役割を明らかにしたうえで、それにふさわしい人材を任命することが必要だとしている。
 申請段階で人事が整っていない場合、2020年4月の制度開始時点における就任見込みで要件確認することについても検討する方向だ。

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要件3 厳格な成績管理の実施・公表
 科目ごとの到達目標、成績評価の方法や基準等を記載したシラバスの作成、GPAなどの成績評価にかかる客観的な指標の設定と運用、成績の分布状況の把握などを通じ、厳格かつ適正な成績管理の実施と公表が求められる。
 無償化の対象学生が所属学部等において「成績が下位4分の1に属する」等の場合、大学が「警告」を発するというルールの下、大学は成績の分布状況を把握する必要があり、申請時にはそれがわかる資料(グラフや表)を添付することになっている。
 文科省は授業の到達目標や成績評価の方法・基準等については「学内のガイドライン等で定めておくことがのぞましく、その場合は申請時にガイドラインの概要を記載すること」を求めている。

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●中教審の議論を先取りし、「中退者数」等、任意記入の項目も

要件4  財務・経営情報の開示
 財務諸表等の開示に加え、学生が安心して質の高い教育を受けられる環境を確保する観点から、経営情報の一環として、3つのポリシーや定員充足状況、進学・就職の状況など、教育活動に関する情報の開示も要件となる。大学のホームページ等で一般に公開する必要がある。

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 申請書の教育情報開示に関する部分には、開示対象の情報そのものを書くようになっている。「FDの状況」「留年者数、中退者数」「GPAの活用状況」等、必須ではなく任意記入の項目もある。文科省の担当者は「(教学マネジメントの重要性がテーマの一つとなった)中教審の議論(2018年11月26日答申)を先取りする形で設けた」と説明する。
 教育情報については記入する項目が多岐にわたり細かくなるため、学校基本調査等との連動など、大学の負担軽減策も今後、検討したいという。
 これらの要件に加え、「経営に課題のある法人」として、「法人の『運用資産-外部負債』が直近の決算でマイナス」「法人の経常収支差額が直近3カ年の決算で連続してマイナス」「直近3カ年で連続して収容定員充足率が8割未満」のすべてに該当する場合は無償化の対象にしない方向で検討されている。