2018.1004

桃山学院大学が次年度新設のビジネスデザイン学科で入試改革を先取り

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3行でわかるこの記事のポイント

●ほとんどが必修の厳選科目と空き時間なしの時間割で力をつけさせる
●1・2年次は企業が出す課題に企業人と一緒に取り組むPBL
●"総合型選抜"では育成したい3つの力の素養を測りつつ学力の3要素もカバー

桃山学院大学は2019年度、「関西初の"ビジネスデザイン×リーダーシップ教育"」を掲げ、経営学部ビジネスデザイン学科を大阪市内に新設する。教育の特色と連動した入試と入学前教育も導入。企業との連携による多彩なPBL(問題解決型学習)を通して答えのない問いに取り組み、自ら答えを作り出して新しいビジネスの仕組みをデザインできる人材を育成する。牧野丹奈子学長に新学科の教育と入試の特色について聞いた。

*大学のウェブサイトのビジネスデザイン学科紹介はこちら


●専任教員7人中、6人を新たに採用

 桃山学院大学(本部:大阪府和泉市)にできる経営学部ビジネスデザイン学科は入学定員70人。既存の経営学部経営学科と国際教養学部から定員の一部を移す形で、届け出で新設する。初年度の専任教員は7人で、既存の経営学科から移るのは1人だけ。企業との連携経験が豊富なアカデミック教員3人、企業から参加する実務家教員3人を新たに採用する。
 企業との密な連携を可能にするため、新学科は大阪市中心部に開設。初年度は本町(ほんまち)のオフィスビル内の本町BDL(ビジネスデザインラボ)で授業を行い、2020年秋には現在、建設中のあべのキャンパスに移転する。
 新学科設計の先頭に立った牧野丹奈子学長は高校生対象の説明会で、社会の変化と新たな人材ニーズから話を起こす。専門的知識を必要としても客観的な答えが存在する仕事は今後、AIが担うようになり、人間の仕事は答えのない問いに取り組んで自ら答えを作り出し、新しいビジネスの仕組み、新しい価値を生み出し続ける「ビジネスデザイン」へと変わる。「そのための力を養う新たな学びを提供するのがビジネスデザイン学科」だという。
 「ビジネスデザインのプロセスでは調査・分析・企画・実践の4つのフェーズを自在に行き来する。そのためにはゼロからイチを生み出す『クリエイティブ力』、他者との関係の中で共感し合う『高度なコミュニケーション力』、強い意志と責任感でものごとを成し遂げる『やり抜く力』という3つの力が必要で、新学科ではこれらの修得をめざす」と同学長。同時に、仲間を巻き込み支援しながら全員による目標達成を図る新しいリーダーシップの育成にも取り組む。

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●フィードバックの時間を通して教員と学生が共に授業をつくる

 こうしたねらいの下で開講されるカリキュラムの構成要素は厳選され、ほとんどが必修という69科目は経営学科の開講科目の約4分の1だという。

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 クリエイティブ力は「実践演習」のPBL科目と「ドメイン科目」、「教養・文化科目」で修得する。PBL科目は1年次から2年間かけて段階的に進み、企業が提示する課題に学生と企業人が一緒に取り組む。上級生もそこに参加、授業のサポートを通じて自らリーダーシップを身に付ける。
 ドメイン科目は食、福祉・医療・教育、健康・スポーツ、ITなど各領域の協力企業から年間32の課題が出され、チームで実現に取り組む。PBL科目と合わせると1年次だけで年間50以上の課題に取り組むという。
 そこで必要となる柔軟な思考力を育むのが「教養・文化科目」だ。ビジネスを生み出す手法としての「イラスト・絵画」「演劇・朗読」、ビジネスを生み出すヒントとなる「華道・茶道」、論理的思考力や大局観を鍛える「将棋・囲碁」など、社会科学系の教養としては異色の科目を各分野のプロが教える。
 「高度なコミュニケーション力」はチームで課題に取り組むPBL科目に加え、フィールドワークやプレゼンテーションの手法を学ぶ「スキル演習」の各科目で育成。
 「やり抜く力」は、必修が多く、授業の空き時間や放課後もグループワークや課題、教員とのフィードバックのコマで埋まるハードな時間割を通じて育てる。いずれもオープンスペースを使う。グループワークでは直前の授業で出された課題について話し合ったり作業を進めたりする。企業人も参加し、課題について相談に乗る、授業とは直接関係のない興味・関心事を含め学生からの質問に答えるといったサロン的な場にもなる。
 フィードバックの時間にはその日の授業の担当教員に質問をしたり、授業の内容や進め方について意見や要望を言ったりする。「必修が多いのでどの科目も学生にとっては落とせないし、教員も教育力、ファシリテーション力が問われる。双方が真剣に対峙し、4年間やり抜くために一緒に授業を作っていく場になる」と牧野学長。

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●日々の授業に真剣勝負で臨ませるために定期試験はなし

 「ハードなカリキュラムなので、学生自身が『面白い』『もっとやりたい』という気持ちで臨まなければついていけないし、力もつかない」。ビジネスデザイン学科の教員らはそう考えている。そこで定期試験は行わず、成績はレポートや普段の小テスト、授業態度などで評価することにした。試験のために勉強をするという意識や姿勢を持つことなく、日々の授業に真剣勝負で向かわせるためだ。評価基準をオープンにし、学期末には成績優秀者を発表するなど、やる気を引き出す工夫を考えていく。
 通常の授業以外にも、他大学との連携の下で企業人から最新のリーダーシップを学ぶ集中プログラム「リーダーシップ・キャラバン」、起業サポート獲得のチャンスもある学内のビジネスモデルコンテストなど、教育理念を具体化するさまざまな取り組みが予定されている。これらも含め、PBL科目を中心とするビジネスデザイン学科の教育は多くの企業の協力が前提となるが、企業側は学生との協働や学生のサポートを社員研修の一部として位置づけ、幹部候補の若手社員を派遣することになっている。
 「関西初の"ビジネスデザイン×リーダーシップ教育"」を掲げるビジネスデザイン学科の新設は、経営学部長も務めた牧野丹奈子学長の「社会科学系においても新しい社会に向けた新しい学びが必要」という問題意識と、それに対する自らの実践が出発点になっている。2009年度から企業と連携し、学内で先駆的に取り組んだPBL教育は文部科学省の就業力GPに採択された。取り組む前と比べ学生の学びの姿勢、卒業後の大学との関わり方が大きく変化し、手応えを感じたという。リーダーシップ教育を積極的に取り入れている早稲田大学や立教大学の授業を視察して共感。従来の実践を組織的な取り組みに発展させ、先鋭化させる新学科の構想を温め、自ら交渉し、複数の自治体、企業との連携を進めている。

●一般入試でも面接を行い育てたい力の素養を見極める

 入試では、ビジネスデザイン学科のコンセプトに共感し、柱となる3つの力を身に付けたいという意欲を見極めることに主眼を置く。
 2020年度からの入試改革でAO入試に代わる新名称を先取りした「総合型選抜(企業採用型)」では3回に分けて40人を募集。メーンとなる9月の前期専願制では、数的処理能力や言語能力を測る「基礎能力検査」、与えられた課題に取り組む「グループワーク」、与えられた課題について企画書を書く「アイデアレポート」、アイデアレポートを基にした「プレゼンテーション(グループ面接)」によって選考する。
 アイデアレポートでは自分のアイデアを図やイラストなど自由な手法で表現してもらい、学科で育成する3つの力「クリエイティブ力」「高度なコミュニケーション力」「やり抜く力」に加え、論理的思考力や社会性を評価。主体性や協働する力を見るグループワーク、知識・技能を測る「基礎能力検査」と合わせ、学力の3要素をカバーする点でも新入試の先取りとなる。
 将来的にはビジネスデザイン学科の全入試を「総合型選抜」に一本化することも視野に、初年度は12月に中期併願制、2月に後期併願制も実施する。
 一方、一般入試では全学共通の学科試験に加え、面接も実施。育成を図る3つの力の素養を見極めたい考えだ。推薦入試、センター試験利用方式等と合わせて30人を募集する。

●期待と意欲を胸に入学してもらうための入学前教育

 総合型選抜(前期専願制)による入学者は必修、それ以外の入学者は希望者のみで開講する入学前教育にも学科の特色が反映される。全4回の動画を通して地元の自治体や企業等のトップ・幹部が課題を提示、教員による各テーマに関連した講義を聴いたうえで課題レポートをまとめてメールで提出するという内容だ。動画の冒頭で前回の出題者が課題のベスト賞を発表したり、最終回には全教員が登場してメッセージを送ったりするなど、4月からの授業に対する期待と意欲を喚起する。「入学したらこんなアットホームな雰囲気の中でワクワクする授業が待っている」と伝える入学前教育の検討が進んでいる。
 牧野学長は新学科に託す思いをこう語る。「学生に力をつけさせるには教員や仲間との関係づくりとやる気の喚起が絶対に欠かせない。これが私自身の現場経験から導き出された結論だ。一人ひとりが社会で自立して生きていくための力をつけるカリキュラムや教員陣、教育手法など、今の時点ではやりたかったことを100%盛り込むことができた。しかし、次の瞬間には必ず新たな課題が見つかる。これからも走りながら考え続け、ブラッシュアップしていきたい」。