2018.0323

COC+の中間評価-全学での取り組み、産官からの財政支援等がカギ

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3行でわかるこの記事のポイント

●地元就職率やインターンシップ参加者数等の目標達成度を確認
●国立5大学が「計画以上の進捗」と最高ランクの評価
●信州大学には長野県から財政支援も

地域の大学群が自治体や企業と協働して若者の定着による地方創生に取り組むことを支援する「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の中間評価が、日本学術振興会から先ごろ発表された。選定されている42件中、福井大学、信州大学など5校が最高ランクのS評価を受けた。多くの学生が参加する全学的活動であること、連携先の自治体や企業から財政面はじめさまざまな支援を受ける仕組みが構築されていることなどが、優れた取り組みの類型だという。

*学術振興会による公表内容はこちら


●大半の大学が「計画通りの進捗」でA評価

 「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」は、若者にとって魅力ある雇用の創出、地域で求められる人材を育成するカリキュラム開発などによって卒業生の地域での定着を図り、地方創生の中心となる「ひと」を地方に集積することが目的。文部科学省が2015年度から2019年度まで最大5年間支援する。選定されている42件のうち、取りまとめ役となる申請大学は国立36校、公立4校、私立2校。それぞれの取り組みに参加する大学・短大・高専は申請大学を含め計256校となっている。
 地元企業への就職率やインターンシップ参加者数を成果指標として設定している。
 今回、5つの区分で中間評価がなされた。「S:計画を超えた取り組みで目的の十分な達成が期待できる」は5件、「A:計画通りの取り組みで目的の達成が期待できる」は22件、「B:計画を下回る取り組みがあり、目的達成には一層の努力が必要」は15件だった。「C:財政支援の縮小を含む計画の抜本的な見直しが必要」「D:財政支援の中止が必要」に該当する大学はなかった。

●福井大学は「地域創生士」認定を前倒しでスタート

 S評価だったのは富山大学、福井大学、信州大学、岐阜大学、徳島大学の5校。
 福井大学は福井県立、福井工業、仁愛、敦賀市立看護の各大学、および福井県、県商工会議所連合会や医師会、地元NPOなどと連携。2019年度の達成目標として地元就職率10%増、新規雇用創出85人などを掲げている。各大学の地域志向科目の所定単位数を修得し、地域でのインターンシップに参加した学生などを「ふくい地域創生士」として認定する制度を始めた。 
 中間評価では優れている点として、事業の迅速な進捗によって地域創生士認定を計画より早く始めたこと、インターンシップ参加者数や就職率が着実に上昇していることなどが挙げられた。また、共通教育だけでなく各学部の専門領域でも地域人材育成のカリキュラムが構築され、ほぼ全学生がこの事業のプログラムを履修し、全教員が取り組みにかかわっていることも評価された。
 信州大学は長野、松本の両大学、および長野県、県経営者協会や中小企業家同友会などと連携。5段階でステップアップしていく地域活用型キャリア教育を構築し、学びの履歴書として蓄積するeポートフォリオの運用に取り組んでいる。
 中間評価ではキャリア教育のカリキュラムマップやeポートフォリオが「先進的かつ総合的な取り組み」とされ、ポートフォリオの共同運用など大学間連携が実質化していることと合わせ評価された。海外インターンシップ経費の県による支援など、地域とのコストシェアの仕組みの整備も優れている点とされた。
 中間評価を行った委員会は、順調に進捗している取り組みの類型として、①地域志向の科目や副専攻など、地域について体系的に学べるカリキュラムが構築されている、②インターンシップやフィールドワーク、PBLなど、主体的な学びを取り入れたプログラムを企業と共同開発して多くの学生が参加している、③自治体や企業からヒト・モノ・カネの支援を受けるコストシェアの仕組みができている、などを挙げた。一方、一部の事業では大学間の協力関係が希薄で具体的な取り組みが十分でないといった課題も指摘した。

●共愛学園前橋国際大学は東京からのUターン就職も支援

 COC+の申請大学のほとんどを国立大学が占める中、私立では東北学院大学、共愛学園前橋国際大学の2校が申請大学として選定されている。
 共愛学園前橋国際大学は地元の高崎商科大学、上武大学のほか、群馬県出身学生のUターン就職支援で東京の明治学院大学とも連携している。明治学院大学と単位互換協定を結び、自学の学生が東京での学生生活を一定期間経験したうえで地元の魅力を再認識して戻り、活躍することを期待。明治学院大学に在学する群馬県出身の学生には自学の地域人材育成プログラムを受講しながらUターン就職の活動もしてもらうという構想だ。
 中間評価では「多数の教育機関や企業と連携していることは高く評価できる」とA評価を受けた。同大学COC事務局統括の堀田誠氏は「明治学院大学との単位互換の仕組みが整い、実績を上げていく段階に入る。東京で一定期間学ばせるには住居費や生活費の支援が必要なのでそのねん出方法など、課題をクリアして地元就職率等の目標値達成に努めたい」と話す。


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