2017.0720

届出から認可申請への引き上げ含め、23区内定員増の徹底規制を検討

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●10月に延期した収容定員増の申請もシャットアウトの方向で検討
●学部間の定員移動による23区での増加も1、2年後、不可能になる見通し
●専門職大学は規制対象外だが将来的には規制される可能性も

東京23区内での大学の定員規制について文部科学省は、専門職大学、外国人留学生や社会人の受け入れ等、一部の例外を除き、定員増を一切認めない方向で制度改正の検討を進めている。一旦、10月に延期した2018年度の収容定員増の認可申請についても、23区内については受け付けないよう事前に制度を変更して通知する方向だ。現在、届出でできる他の学部からの定員の移動についても、認可申請事項に引き上げるなど、"抜け道"をふさぐことを検討している。こうした方向性に対して大学から大きな反発が出れば、軌道修正される可能性もゼロではなさそう。当事者である23区内の大学に限らず、大学関係者が今後、どのような反応を示すか注目される。


●「夏を目途」について、文科省と内閣官房との間に認識の差

 「23区内では学生を1人たりとも増やすなというのがあちらサイドの基本的なスタンスだ」。文科省の大学設置室の幹部は、地方大学の振興に関する有識者会議で定員規制の提言をまとめた内閣官房の強硬な姿勢について、半ばあきらめ顔で説明。そのスタンスに沿った施策を講じざるを得ないと話す。「地方創生のためには、都市での規制より先に、地方に魅力ある大学や職場を増やすことを考えるべき。我々も本当はそれをやりたいのだが...」。
 文科省がまず手を打つのが、10月以降の収容定員増や大学、学部・学科新設の申請を封じることだ。「23区内での定員増や新設はできない」という制度改正を、国会審議や審議会への諮問を必要としない形で検討し、パブリックコメントを経て9月末までに施行する方向だ。年度内の唐突なルール変更によって、3月に申請した大学と6月申請を予定していた大学との扱いに大きな差が生じることに問題はないのか。「認可事項というのはあくまで基準を満たせば認めるという制度であり、申請の前であれば基準が変わることはあり得る」というのが文科省の説明。従来、3月申請に比べて6月申請は数が少ないことも念頭にある。
 とはいえ、大学の混乱や反発は必至だ。この幹部は「誠に申し訳ない」としたうえで、「我々の認識が甘かった」と明かす。2016年12月、「東京における大学の新増設の抑制について、2017年夏を目途に方向性を取りまとめる」という閣議決定がなされた。これについて、内閣官房は「文科省はその時点で具体的な手を打つべきだったし、3月申請分も不認可にすべきだ」と強い姿勢で迫り、「夏までは検討の猶予がある」と考えていた文科省との間で認識のギャップがあらわになったという。

●留学生は別枠とし、在籍数を厳密に管理

 文科省は認可申請による定員増に加え、届出による実質的な23区内での定員増もできないようにする考えだ。ある学部の定員の一部を他のキャンパスの別の学部に移す場合、現行制度の下では届出で可能だが、これを認可申請事項に引き上げる見通し。こちらは国会審議による法令改正が必要なため、実効性を持つのは1、2年後になるという。
 それまでの間に、駆け込みの届出によって23区内に定員を移す大学が出てくることも折り込み済みだ。大学設置室の幹部は、入学定員管理の厳格化を受けて大規模大学による収容定員増が相次いだことに触れ、「定員を順守するという本来のルールを守ってもらうための制度改正だったが、それが呼び水となって我々の想定以上に大学が定員増の方向に動いた。その結果、今回、より厳しい規制を求められることになった」と話す。
 新たに検討される一連の規制は、例えば、4年間のうち1年間のみ23区内のキャンパスで学び、残り3年間は郊外のキャンパスで、という場合なども対象になる見通しだ。「実態がどうなっているか個別に確認するが、基本的には『新たに1人たりとも』という厳しい方針が適用されると思って間違いない」。
 政府全体の主要課題である働き方改革、社会人の学び直しの施策として進められる専門職大学の新設については、規制の対象外とする方向だ。ただし、今後作られる専門職大学が実態として社会人の受け皿ではなく、高校からの進学者が大多数ということになれば、将来的に規制の網がかかる可能性もあるという。
 留学生や社会人も規制の対象外にする方針だが、その場合は実際の在籍学生数を厳密に管理することになる。現在は、新設等の申請時に「定員●人のうち、〇人は留学生を受け入れる」といった枠を示すが、設置後は実際の学生数の内訳についてチェックを受けることはない。今後はそこが変わる見通しだが、定員を一般学生と留学生に分けるという煩雑な管理を23区だけやるのかなど、クリアすべき問題は多い。
 「届出から認可申請事項へ」に象徴される規制の再強化に対し、今後、大学から強い反発が上がって軌道修正される可能性もゼロではない。しかし、文科省は、むしろこうした規制が他のエリアに拡大する可能性の方を指摘する。「まずは大学の中でも抵抗しづらいところから手をつけられた形だが、今後、同様の規制が首都圏、さらに他の都市部に広がることもありえるのではないか」。


*関連記事はこちら

23区での定員規制-8月末に一定の方向性提示の見通し
/univ/2017/07/23kukisei01.html

東京23区での定員増は不可―「地方大学振興」有識者会議が中間報告へ
/univ/2017/05/chihososei06.html.html

「地方大学振興」有識者会議で座長が「東京での新増設抑制を」との私案
/univ/2017/04/post-22.html

「地方大学振興」有識者会議で私大団体連合会が新増設規制に懸念を表明
/univ/2017/03/chihososei02-03.html