2015.1118

2015年度 私学事業団 「私立大学・短期大学等 入学志願動向調査」

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全体的な改善傾向の中、3エリアで充足率が下降

 日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)がまとめた調査結果によると、2015年度の私立大学全体の入学定員充足率は105.0%で、前年度から1.3ポイント上昇するなど、多くの指標で状況が改善した。18歳人口が約1万9000人増えたことに加え、私立大学の入学者数(48万7061人)の伸び(2.0%)が入学定員(46万3697人)の伸び(0.7%)を上回ったことが要因。

 

●調査結果はこちら

http://www.shigaku.go.jp/files/shigandoukou271.pdf

 この調査では、私学事業団が私立大学579校の入学定員、志願者、受験者、合格者、入学者の数を集計し、分析。定員充足率はここ数年、18歳人口とほぼ同期する形で上下している。

 定員割れした大学は250校(全体の43.2%)で、前年度より15校減った。全体の歩留まり率は39.2%だった。

 21のエリア別に見ると、宮城、北陸、四国のみ入学定員充足率が下がった。学校基本調査と合わせて分析すると、宮城県の18歳人口は微増だが、入学定員の増加(198人)が入学者の増加(65人)を上回ったことなどが充足率低下の要因。北陸も18歳人口は各県で増加したが、入学定員の増加40人に対し、入学者の増加は20人にとどまった。四国の18歳人口は4県で約220人増加したが、入学定員の増減はゼロで入学者が75人減った。入学者が減ったのは全エリアの中でも四国と近畿(滋賀、奈良、和歌山)のみ。

 2014年度に定員割れに転じ、本年度も充足率99.7%だった兵庫をはじめ、近接する大都市に進学者が流出しやすいエリアの厳しい状況がうかがえる。私学事業団の担当者は、「地元の大学で学び、地元で働けるような仕組みを大学が地域ぐるみで考える必要がある。地域のニーズが高い学部の新設など、高校や企業と連携して改革を進めてほしい」と話す。

 一方、入学定員超過の状況を見ると、入学定員規模による11の区分中、最大規模である3000人以上の大学の充足率は109.4%で、0.4ポイント上昇。中には、大規模大学(収容定員8000人以上)に対する私立大学等経常費補助金が不交付となる120%を目安として学生を受け入れる大学もあると見られるが、この数字は次年度以降、段階的に引き下げられ、2018年度には110%となる。学部新設等のための要件も厳格化され、2019年度新設のためには、前年度まで4年間の充足率の平均を105%未満にしなければいけない大学・学部もある。こうしたことから、特に大規模大学では次年度以降、学生受け入れ政策の抜本的な見直しが必要となる。

 私立大学全体の歩留まり率は2011年度から連続して下がっており、56.9%だった1989年度以降、ほぼ一貫して下降傾向にある。「ウェブ出願による併願等で歩留まり率がますます読みにくくなっている」(私学事業団の担当者)という環境下で、学生受け入れのための適正なコントロールは、規模にかかわらず多くの大学にとっての課題と言えそうだ。