2021.0204

私大の総合型選抜志願者数は減少で着地見通し―コロナが複合的に影響

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3行でわかるこの記事のポイント

●1月中旬までに把握できたデータで途中集計
●学校推薦型選抜もやや減少
●「次年度もオープンキャンパスは難しく、総合型対策は小出しの策で」

2021年度入試の総合型選抜と学校推薦型選抜の志願動向が判明しつつある。進研アドと連携している豊島継男事務所が私立大学についてこのほどまとめた途中集計(全私立大学の3割弱に相当)によると、総合型選抜の志願者数は前年度の90%弱に減少。コロナ禍がさまざまな形で影響したと推測される。
*この記事では便宜上、2020年度入試以前についても「総合型選抜」「学校推薦型選抜」という名称で統一している。


●総合型選抜の志願者数は50校で増加、84校で減少

 豊島継男事務所では2020年度入試の総合型選抜、学校推薦型選抜の志願者数が非公表、または不明の大学を除外した私立大学のデータをとりまとめる予定だ。今回の途中集計には全私立大学の28.0%にあたる164校の1月15日現在のデータを反映。志願者数をウェブサイトで公開している大学、および独自にデータの提供を受けている大学を合わせて集計・分析した。今後、新たに志願者数を公表する大学や1月以降に総合型選抜、学校推薦型選抜を実施する大学の結果によって最終的な数字は変動するが、総合型選抜はこのまま減少での着地となる見通しだ。
 途中集計の結果は下表の通り。

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※特別奨学生選抜(給費生選抜)を総合型選抜・学校推薦型選抜に含めない大学もあるが、同方式の志願者数も算入している。
※非公表の大学が多い指定校推薦、および帰国生や付属校対象の入試は除外している。
※総合型選抜と学校推薦型選抜の志願者数を合算して公表している大学があるため、表中および本文の「総合型+学校推薦型」の志願者数は総合型選抜、学校推薦型選抜それぞれの志願者数の和にはならない。
※エリアごとの「今回の集計数/集計対象大学数」は、北海道5/24、東北7/33、関東・甲信越16/121、東京41/114、北陸4/12、東海18/65、近畿55/119、中国・四国9/43、九州9/54。

 「総合型+学校推薦型」の志願者数は29万879人で、対前年指数は94.0。総合型選抜の志願者数は 6万8045人で指数89.2、学校推薦型選抜の志願者数は22万2040人で指数95.6。18歳人口の指数は97.7 なので、学校推薦型選抜はやや減少、総合型選抜は大幅減と言える。総合型選抜の志願者数が増加した大学も50校あったが、減少した大学が84校と上回っている。学校推薦型選抜の志願者数が増加したのは44校、減少したのは86校だった。

●オープンキャンパス中止で大学と接触できず総合型選抜出願を回避

 近年、入学定員管理の厳格化によって一般入試が難化する中、早めに進学先を決めたいという安全志向が働き、総合型選抜や学校推薦型選抜に出願する受験生が増加傾向にあった。今回の入試ではさらに新型コロナウイルス感染拡大の影響が加わり、一般入試の実施が不透明になる中で年内入試の人気がさらに高まると予想されていた。
 しかし、中間集計では総合型選抜の志願者数は大きく減少。コロナ禍によってオープンキャンパスが軒並み中止となり、面談や体験授業、課題提出のための情報収集など、出願するうえで重要な大学との接触が困難になったことが要因だと推測される。部活動の休止や各種大会の中止によってアピールできる成果がないと考える受験生も多かったようだ。また、高校の休校によって進路指導が滞ったことも、他の入試方式に比べて教員による指導の比重が高いこの入試方式を回避する動きにつながった。
 一方、コロナ禍で安全志向に拍車がかかり、学校推薦型選抜の中でも不合格のリスクがある公募型は回避される傾向に。総合型選抜と公募推薦よりも、出願すればほぼ確実に合格できる指定校推薦を選ぶ受験生が多かったと推測される。

●コロナを警戒し、首都圏を避け地元進学を選ぶ受験生も

 集計率が比較的高い東京と近畿を比べると、総合型選抜はどちらも指数90ほどだが、学校推薦型選抜は東京89.6、近畿96.3と差が大きい。近畿は従来、総合型選抜、学校推薦型選抜の募集人員や実施回数が多く、これらを併願可とする大学が多数あるため、受験生が積極的に出願していた。こうした背景の下、コロナによる環境変化は、近畿での学校推薦型の活用にはさほど大きな影響を及ぼさなかったようだ。学校推薦型で1000人以上の大幅増があった4校、1000人以上の大幅減があった7校はいずれも近畿の大学で、入試日程や前年度の志願倍率をふまえた受験生の移動の激しさがうかがえる。
 首都圏のある工学系大学では、年内入試全体の志願者数が対前年指数87と減少。総合型選抜は指数64で、特に地方と専門高校で大きく減った。学校推薦型選抜のうち指定校は指数100、公募制は104で着地したが、これらも専門高校からの出願は大きく減少。コロナの影響に加え、「学校推薦型で小論文や読解力テストを導入したため、専門高校の生徒に敬遠されたのでは」と分析している。
 この大学の入試担当者は「好評だったオープンキャンパスを従来通り実施するのは次年度も難しいと見ており、総合型選抜の対策となる案はなかなか浮かばない。いろいろな策を小出しにやっていくしかないだろう」と説明。一方で「近年、年内入試による入学者の割合が高くなりすぎていたので、今回の結果はちょうどいいという捉え方もできる」と話す。
 中国・四国エリアについては集計率は低いものの比較的、堅調な状況にある。このエリアのある私立大学は「近隣の大学からも、年内入試はおおむね好調という話を多く聞いている。高校教員からは、コロナ禍による感染リスクや経済的事情によって、従来なら首都圏に進学していた層でも地元の大学を選ぶ傾向にあると聞いており、そのことも関係しているのではないか。一方で、一般選抜は厳しいという大学が多いのは、年内入試で進学先を決めてしまった受験生が多いためだろう。マーケットが広域にわたる大学ほど一般の志願者数の減少幅が大きいようだ」と話す。


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