2021.0201

データネット2021 私立大共通テスト利用方式の志望者数は前年並み

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3行でわかるこの記事のポイント

●センター試験出願者数の76%のデータを集計・分析
●私立大志望者は国際関係学で増加、語学で減少
●難関私立大は募集人員拡大の影響もあり志望者数が増加

ベネッセコーポレーションと駿台予備学校が提供する大学入学共通テスト自己採点集計「データネット2021」は集計結果の概況、得点状況、志望動向などを発表している。国公立大学、および私立大学センター利用方式の志望者数はいずれも全体では前年並みで、平均点の上昇を受けて難関大学の志望者数が増えている。
*図表はいずれも「データネット2021」より
*「データネット2021」の全体概況はこちら
*前年比較の対象はいずれも2020年度センター試験で、平均点については入試センターの最終集計との比較。

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共通テスト予想平均点は文系、理系ともほぼ前年並み


●公民と理科で得点調整

 共通テストの志願者数を前年と比べると、現役が0.5%減、既卒は19.3%減で、全体では4.0%(2万2454人)減の53万5245人。前年の入試で"超安全志向"の出願傾向になったため、既卒者は大きく減った。
 データネットの集計数は40万8238人(参加校数4718)で共通テスト出願者数に対する集計率は76.3%。文理別に見ると「5教科8科目文系」が9万4738人、「5教科7科目理系」が14万8817人となっている。
 5教科900点満点の予想平均点は、文系が552点(前年差+4点)、理系は572点(前年差+13点)といずれも上昇した。
 各科目の平均点を前年と比べると数学II・数学Bと生物で10点以上アップ、数学I・数学A、倫理、地学なども上がった。地理B、化学基礎などは下がった。
 倫理と政治・経済、生物と化学の平均点の差が大きかったため、入試センターが政治・経済、現代社会、化学、物理の受験者に対して加点する得点調整を行った。下表は得点調整後の科目別平均点を示している。

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*データネットでの得点調整に関する情報はこちら。  

●国公立大志望者は国際関係学、語学ともに減少

 データネットの集計によると、国公立大学の志望者数は対前年指数99と前年並み。学部系統別の志望者数を前年と比べると、文系は語学、国際関係学の指数がそれぞれ91、92と減少。増加が目立つ系統はない。前年の反動もあり指数115となった薬学のほか、医学(105)も増加。歯学(94)は前年に続き減少した。

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 事前の予想に反し、文系・理系とも平均点が上昇したことを受けて難関国立10大学の志望者数が増加している。

 共通テストを利用する私立大学は前年と同じ533校。志望者数の対前年指数は101とこちらも前年並みとなっている。学部系統別の志望者数を前年と比べると、文系では前年の反動もあって法学(104)、社会学(104)、国際関係学(110)が増加。語学は前年に続いて減少した。理系では医学(107)、薬学(105)、理学(106)などで増加。歯学も指数106と増加し、国公立とは異なる傾向となった。減少したのは生活科学(92)、農・水産学(96)。

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 難関私立大学は共通テスト利用方式の募集人員拡大の影響もあり、志望者数が増加している。

●宇都宮大学が個別試験をとりやめ共通テストの得点等で判定

 新型コロナウィルス感染拡大の収束が見通せない中、入試の変更について発表する大学が相次いでいる。横浜国立大学は2020年7月、一般選抜の個別試験を実施せず、共通テストの得点や提出課題に基づいて合否判定することを決定。宇都宮大学もこのほど、同様の変更を発表した。
 埼玉大学、信州大学、広島大学などは個別試験が実施できない場合の対応方針を予告している。
 東京外国語大学は地方の受験生が個別試験を日帰りで受けられるよう開始時間を午前から午後に繰り下げ、英語の試験時間を150分から90分に短縮する。公立諏訪東京理科大学も前期日程の試験時間を短縮(数学は120分から90分に、理科は90分から70分に)する。
 東京藝術大学の音楽学部は一部の実技科目の試験を中止。
 私立では梅光学院大学が一般選抜で学力試験を行わず、事前に小論文を提出させる方式に変更した。
 文部科学省は入試の変更情報をとりまとめ、ウェブサイトに掲載している。

●今回の入試に至るデータを新たな基準に

 進研アド・データサービス開発部の仁科佑一グループリーダーは「『出願の初速は良かったが途中でストップした』という声を複数の大学から聞いている」と言う。コロナ禍のため受験生が十分な大学研究をできなかったことが背景にあると分析。「『知っている大学』が少なく出願する大学は早々に決まっており、共通テストの結果を見て慌てて追加で出願することもなかったのだろう」。
 仁科リーダーはさらに「昨年に続き、今回も志願者数が大幅に減少すると予想される。今回の入試に至るデータをきちんと分析してそれを新たな基準とし、2022年度入試に備えることが必要だ」と指摘する。