2019.0426

これからの入学前教育③ 全学的な共通教育の起点とし、質保証につなげる

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3行でわかるこの記事のポイント

●入学前教育を全学共通実施にシフトすることの3つのメリット
●全学一括化により均質な教育の提供と、業務の効率化を図る
●教育の質保証のために必要な全学的なデータの集約とその活用

入学前教育を学部・学科ごとから全学として集約して行う大学が徐々に出始めている。容易にできることではないが、それを押してでも共通教育化することのメリットは何か。多くの大学の入学前教育の企画に携わってきた進研アドの担当者が考察する。

*この記事のPDFはこちら

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(株)進研アド 石田あすみこ
いしだあすみこ●(株)進研アド入社以来、一貫して入学前教育の企画立案とその普及など、高等教育機関の高大接続支援に携わる。
〈執筆・講演活動〉
▶Between2018年3-4月号「『主体性等』を育む入学前教育とは」
▶大学時報2019年1月号「入学前教育の力点はシフトしている」
▶日本私立短期大学協会平成30年度私立短期大学教務担当者研修会講演 など


入学前教育を全学共通実施にシフトすることの3つのメリット

 昨今、入学前教育を「新入生に対する自学全体の教育」と捉え、全学的に推進する大学が増えています。学部・学科単位の実施から、全学共通の実施に転換するメリットは3つあると考えられます。
 1つ目は新入生に大学全体で保証すべき力を共通教育で提供できること、2つ目は運用組織の一括化により均質な教育ができ業務の効率化も図れること、3つ目として、全学的なデータの収集・活用により、「教育の質保証」が図りやすくなることがあります。
 まず1つ目に挙げた「入学前教育の共通教育化」について。大学教育で育む力は、各学部・学科で保証すべき力と、大学全体で保証すべき力の2つに分けることができます【図表】。
 前者は各専門教育を通じて学位プログラム単位で行います。後者は、例えば思考力といった汎用的スキルや専門的な知識の土台となる基礎学力が該当します。入学前教育は後者に該当します。「◯◯大生としての土台作りにあたる教育」は、入学後、初年次教育で行う大学が多いですが、本稿第2回で述べたように、大学で学ぶこと自体の「意欲喚起」が課題であれば、入学前から取り組んだ方が、入学後の初年次教育もスムーズに進むはずです。

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全学一括化により均質な教育の提供と業務の効率化を図る

 2つ目のメリットは学部・学科を問わず、均質な教育を提供できることです。学部・学科ごとに入学前教育の企画、教材開発、採点、添削を行っていると、その取り組み内容や成果に差が出がちでした。しかし全学で一括して取り組むことにより、それぞれの知見が集約され、内容や成果のレベルをそろえることが可能になります。それに加えて、各学部で実施していた業務を一括して運用することにより、効率化やコストの削減も期待できます。

教育の質保証のために必要な全学的なデータの集約とその活用

 3つ目に挙げた「質保証」の観点からも、学生にとっては「最初の大学教育」にあたる入学前教育を全学マターとして捉え、取り組むことをお勧めします。各学部・学科、もしくは部局に点在していた入学前教育のデータを集約することで、自学の課題を抽出するための分析が容易になるからです。これはまさにIR活動の一環であり、教学IRのスタートとなり得ます。
 とはいえ今まで学部・学科ごと、部局ごとに取り組んでいたものを全学に集約することは、容易にできることではありません。このような取り組みにいち早く成功している大学は、学部横断で意思決定をできる人が旗振り役を担い、横断型のワーキング・グループを作って推進しているようです。
 さて、貴学は入学前教育を始めて何年でしょうか。10年以上経つ大学も多くあるはずです。入学前教育を入学までの空白期間を埋める「とりあえず」の措置ではなく、大学に強く求められている「質保証」の第一歩として見直してみる。今こそ、そのチャンスです。