2018.0730

立正大学が2019年度入試で3つの新方式、一般入試の設問も見直し

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3行でわかるこの記事のポイント

●全学部入試の全教科で記述式など、思考力・表現力を評価する設問に
●アドミッションオフィサーの育成を想定し、AO入試の選考に職員もかかわる
●主体性、協働力を評価するゼミナール型AO入試も

立正大学は入試改革本番に先駆け、2019年度入試で学力の3要素を従来とは異なる手法で評価する3つの新入試「高大接続Advance入試」をスタートさせる。一般入試ではより的確に思考力や表現力を評価できるよう出題を工夫。AO入試ではアドミッションオフィサーの育成を想定したAO入試協議会を設け、職員が関与する選考プロセスを試行する。「少しずつ新しいことに挑戦して検証を続け、『これで行ける』という確信を持って2021年度入試を迎えたい」という入試センター幹部に話を聞いた。
*大学のウェブサイトでの公表内容はこちら


●共通テストも参考に、一般入試の設問を練り上げた

 立正大学が2019年度入試から導入する「高大接続Advance入試」は、全学共通の一般入試と2つのAO入試で構成する。
 「全学部入試 一般入学試験RisE(ライズ)方式」では、高校の授業で身に付けた知識・技能を活用する思考力、表現力を3教科で評価する。同大学では従来のマークシート方式でも思考力を問う工夫をしてきたが、より深く評価できるよう設問形態を一新。既習の知識を活用して初見の資料に考察を加える問題、正解が複数ある問題などのほか、記述式問題も出題。文系科目で記述式を出題するのは初めてだという。出題意図の解説も添えた各科目のサンプル問題をウェブサイトで公開している。
 試行問題の公表前から大学入学共通テストに関する情報を集め、思考力や表現力の評価手法を参考にした。RisE方式の3教科のうち英語(60分間、100点)は必須。国語、数学、地歴・公民の中から選択する2教科(80分間、60点+60点)は1時限でまとめて試験を行い、受験者が時間配分まで考えて解く。入試センターの村上喜良センター長は「問題を見て瞬時に適切な解答戦略を立てる判断力も評価の対象だ」と解説。8学部24学科・コースそれぞれで4~10人を募集する。 

●学部とのマッチングを重視しつつ課外活動でも活躍する人材を発掘

 新AO入試の一つ「AO入学試験(文化・スポーツ型)」は6学部で実施し、学業と課外活動を両立させる活躍によって大学をリードする人材を発掘する。2021年度以降の入試で活躍できるアドミッションオフィサーの育成を念頭に、選考プロセスに職員の関与を組み込んでいる点も注目される。
 吹奏楽部、柔道部、水泳部、バレーボール部など、募集対象となる大学の9つの課外活動のいずれかに高校で取り組み、一定の実績を挙げた受験生が対象だ。一般的なスポーツ推薦等とは異なり、学業の面でも高い意欲を持ち他の学生のロールモデルとしての役割を期待するため、学部・学科とのマッチングを重視。オープンキャンパスの面談で志望学部・学科に対する理解を十分に深めたうえでの出願を前提にする。
 学びの設計書や調査書等の書類の精査は入試担当副学長、学部長など教員4人、学生部長、入試部長など職員4人で構成するAO入試協議会が担当。志望学部・学科に対する理解と適性、基礎学力が求めるレベルに達しているか確認したうえで、志望学部での選考に引き継ぐ。「『モラリスト×エキスパート」という建学の精神を体現し、本学で大きく成長できる資質を見いだすため、全学を俯瞰して受験生を評価できる職員の視点を入れる』と村上センター長。
 同大学では学内業務を通じて学生の企画力を育てる「キャリア育成奨学生制度」の対象者の選考にも職員が関わるなど、職員が学生の資質・能力を評価する知見とスキルを高めることに積極的だ。
 もう一つの新AO入試「AO入学試験(ゼミナール型)」は心理学部と社会福祉学部で実施。これまで面接やプレゼンテーションなど、短い時間内でなされていた主体性や協働力の評価をじっくり行い、選考の精度を上げる。社会福祉学部の場合、事前に「調べ学習課題」に取り組み自分の考えを整理したうえでゼミナールに参加。グループに分かれて課題について発表し合い、質疑応答、意見交換を経て課題に対するグループの意見をまとめる。その後の個別面談も通して主体性や協働力、コミュニケーション能力を評価する。 

●調査書の活用を検討するプロジェクトチームが発足

 入試センターの室井忠彦部長は「一般入試では思考力や表現力まで測る。AO入試では建学の精神との親和性が高く立正大学で大きく伸びる学生を発掘し、アドミッションオフィサーの育成を想定した選考法を試行する。これら、われわれが考えている方向性を確認するプロセスを経て2021年度入試に臨みたい」と話す。
 2021年度入試に向けては、調査書の活用等について検討する学内のプロジェクトがこのほど発足。JAPAN e-Portfolio(JeP)の実証事業にも参加して情報の中身を吟味し、活用の可能性を探る。自学の入試改革がめざす方向性について、村上センター長は「多様な評価基準を設けて多様な学生を集め、学生の間でわれわれが想像もできない面白い化学反応が起きる。そんなキャンパスをつくることが可能な選考手法を積極的に取り入れていきたい」と話す。


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